【続編②】【派遣会社営業マンのクレーム対応報告】「静脈認証なんて聞いてない!」と示談金を求める派遣スタッフOさんのクレーム対応②

【続編②】【派遣会社営業マンのクレーム対応報告】「静脈認証なんて聞いてない!」と示談金を求める派遣スタッフOさんのクレーム対応②

【派遣会社営業マンのクレーム対応報告】「静脈認証なんて聞いてない!」と示談金を求める派遣スタッフOさんのクレーム対応①でお伝えした、当社が就業開始前に派遣先の入退室システム利用のための生体情報が必要であることを伝えなかったことに端を発したOさんとのトラブルですが、最初の面談を終え、Oさんの考えがわかったところで、仕切り直しをした上で再度の面談を迎えることになりました。

前回までの経緯

●OさんはD社での静脈認証の入退室システムに登録する生体情報は個人情報にあたり、事前に当社から案内を受けておらず、その提供を拒否するとともに、落ち度のあった当社に憤慨している

●生体情報を提供し、入退室システムに登録できないとD社での就業ができないが、Oさんはそれでも生体情報の提供は拒否するとともに、当社の落ち度によって就業機会をなくしたとして、契約期間分の給与保証を求めている

●Oさんの要望に即答が難しかったため、一度話を預かり、あらためて話し合いをすることとなった

●D社では入退室が出来ないため、Oさんには契約期間が残る中で自宅待機をお願いした(休業補償の対象)

対応経緯

同期のスタッフさんからの事前情報

OさんはD社の大量募集に対し、当社から同時に20名スタートしてくれたスタッフさんの一人でした。

営業担当である部下が、同期の他のスタッフさんと就業フォローの面談をしたところ、何人かのスタッフさんから気になる話があったというのです。

20名も同時にスタートしますと、いくつかのグループに分かれて仲良しグループができ、一緒にお昼を食べたりするようです。

Oさんも5人ほどの女性スタッフさんのグループに入っていたようなのですが、そのメンバーだったAさん、Bさんの二人が、D社での入退室システムへの生体情報登録の際に、たまたまOさん含めて一緒にいたようなのです。

列になって順番に一人ずつ入退室システムに登録をしていたところ、一緒に並んでいたOさんに順番が回っときた途端に、それまで雑談をしていたOさんが突然大きな声で、

「静脈認証なんて派遣会社から聞いていません!個人情報なので私は登録できません!」

といい出し、AさんもBさんもびっくりしたそうです。

騒ぎに慌てたD社社員に「ちょっと別室で話しましょう」と促されて移動する間際にAさんとBさんに向かってボソッと呟いたそうです。

「こうやってゴネるのよ」

Oさんとの2回目の面談

AさんとBさんの話を信じるのであれば、当社の落ち度はあったものの、元々まともに働く気はなく、何かのきっかけで今回のように補償を求めることを考えていたのかもしれません。

まだ確信は持てませんが、慎重な対応が必要です。

当社の法務部とも相談の上、Oさんとの2回目の面談臨みました。

入退室システムへの登録ができなかったこともあり、Oさんには自宅待機をしてもらっていたため、当社の会議室での面談となりました。

硬い表情のOさんを招き入れ、部下とともに面談を始めます。

まずは私から話し始めました。

  • 入退室システム登録のための生体情報の提供をしないことでD社での就業を自宅待機としてもらっているが、あらためて生体情報を提供してD社で就業を再開するといったお考えのかわりはないか?

Oさんは「御社が事前に案内をしなかったことで、こんな状況になっているのだから、D社では働きたかったが、それはできないと思っている」との返答です。

私からの話を続けます。

  • 前回の面談では当社の事前の案内不足でD社での就業ができなくなったのだから、契約期間中の給与を全額補償して欲しいとの要望であった。本日はその点への当社の見解をお伝えしたい
  • 雇用契約が残っており、当社としてその責任を果たすため、同じような条件の別の派遣先で就業をしてもらおうと考えている
  • ただし、昨日本日含め、自宅待機となっている期間については、労働法規に従い、休業補償として平均賃金の6割を支給しようと考えている
  • ついては次の派遣先について協議をしたい

全く予想していなかった答えなのか、Oさんはいきなり逆上しました。

興奮した様子でしたので、話は行ったり来たりしましたが、要点をまとめるとOさんの主張は次の通りです。

  • D社で働けなくなったのは御社のせい、いわば私は被害者なのに、なぜ他の派遣先で働くという話になるのか?
  • 休業補償が平均賃金の6割だなんて話は聞いたことがない
  • 別途、慰謝料を請求しようと弁護士と相談している
  • 契約期間の給与を満額払わないのであれば、即訴える

かなり強気の姿勢ですが、相手が「訴える」といってきたときの私のスタンスは一貫していて、「個人の権利なので止めも勧めもしない」ということです。

お詫びすべきは、事前にD社での就業にあたり、生体情報の提出が必要であったことを案内できていなかった点ですし、生体情報さえ提供すれば、改めてOさんがD社で就業を継続する機会を提示をしています。

また、自宅待機となった部分については法に則って休業補償をするとお伝えしていますし、当社の案内不足をきっかけにD社での就業の出鼻を挫いた代わりに、別の派遣先を準備することで当たり前に雇用契約を守るとお伝えをしたわけです。

つまりOさんの主張の通りに、契約期間中の給与全額を支払ったり、慰謝料を払ったりする必要はないと考えました。

これはOさんの同期の2人からのお話があったからの対応ではなく、そのような話がなかったとしても同じようなご案内します。

激昂するOさんに私は次のようにお話をしました。

  • 訴えるという件や、慰謝料を請求するという件はOさんの判断なので、ご自身でご判断をして頂ければ良いと考えている
  • それによって当社の考えは変わらない
  • 事前にD社での就業にあたり、生体情報の提出が必要であったことを案内できていなかった点はお詫びし、真摯に反省をしている
  • Oさんは生体情報の提出をされないとのことではあったが、D社と話し、入退室システムの問題さえ解決すれば就業を再開できる段取りは整えていた。しかしOさんのご判断はD社での就業は継続しないということであったので、当社として残る雇用契約の責任を果たす意味で別の派遣先での就業のお話をしている
  • 次の派遣先が決まるまで、当社としての雇用契約の責任を果たす意味で、自宅待機の期間は法にのっとって休業補償を行う

相変わらず、激昂するOさんは「納得がいかない」「誠意がない」を繰り返しますが、私も同じ話を繰り返します。

このような状況で最もいけないのは、相手に根負けして譲歩したり、主張は変えないまでもニュアンスで妥協してしまうことです。

相手に伝える主張はきちんと準備した上で話をし、一度話したら主張を曲げない、妥協しないという強い意志が必要です。

面談を開始してから2時間も経った頃、根負けしたのか、Oさんの話のニュアンスが変わり始めました。

  • 今回のトラブルでお互い信頼関係がなくなっているし、派遣先を変えての就業継続はお互いにとって難しいのではないか?
  • しかし、今回のトラブルの原因は御社で、契約期間も残っているし、何の補償もないのはあり得ないと思う
  • 私もある程度は譲歩するので、それなりの誠意を見せてほしい

つまりOさんは、これ以上自分の主張をしてもこちらが全く折れないので妥協点を探り始めたのです。

Oさんの話しぶりも冷静になり、これまでの激昂したときの支離滅裂とも思える話しぶりから考えると別人のようです。

同期のAさん・Bさんの話しを鵜呑みにするわけではありませんが、もしOさんが派遣の仕事で就業を開始しては何らかのきっかけでトラブルを起こし、そのたびに派遣会社に補償や示談金を求めるような人であった場合、本当に裁判を起こしたり、そこまでしなくともあっせんや労働審判などをしても時間がかかるばかりです。

当社としても、Oさんの主張が正しいかどうかは別として、あっせんや労働審判は調停を前提にしているためかならず何かしらの妥協、要するにお金を支払うことになり、裁判などになると判決がどうなるかは別として非常に手間と時間がかかります。

Oさんが妥協点を探すつもりなのであれば、当社としても落ち度があった話でもありますし、幾ばくかのお金で解決できればそれに越したことはありません。つまり示談金です。

そこで私は次のように話しました。

  • 「お互い信頼関係がなくなっているし、派遣先を変えての就業継続はお互いにとって難しいのではないか?」とのことだが、私はそう考えていない。Oさんが違う派遣先で就業することになったら、部下に変わって私が精一杯ご支援する
  • 誠意とのことだが、Oさんは違う派遣先での就業は希望せず、今回の雇用契約の件を示談で解決しようというお考えか?

すぐにOさんの誘い水にのっては、こちらの足元を見られてしまいます。まずは原則論にのっとって対応するとともに、Oさんの考えを確認します。

するとOさんは「私が違う派遣先で就業するというのは筋違いな話、お互いの考えが全く平行線なので別の解決手段がないかと思っただけ」と言います。

続けて私から質問します。

  • 別の解決手段とのことだが、当社は想定していない。具体的には金銭での解決をお考えだと思うが、Oさんはどれくらいの金額をお考えか?

するとOさんは就業期間分の給与総額の80%の金額を口にしました。

当社からすると全く検討にも値しない金額でしたので、拒否し、別の派遣先に移って頂くという元々の話に戻します。

それからも30分ほど掛け合いのようなことを繰り返し、らちが明かないので一旦持ち越しとしました。

その後も一週間ほどメールでやり取りをしましたが、最終的には就業期間分の給与総額の10%程の金額で示談となりました。

これは示談ですので、法にのっとった休業補償ではなく、Oさんとの話し合いの末、「雇用契約自体を就業初日のみの雇用契約に短縮する」という示談を行う結論となり、その示談金として支払ったものです。

そのため「就業期間分の給与総額の10%の程の金額」というのもあくまで目安であって、あくまでお互いが妥結した金額ということになります。

私のホンネ

部下のミスがあったとはいえ、ずいぶん高い勉強代を支払うことになってしまいました。

Oさんが元々悪意を持って今回のトラブルになったのかは最後までわかりませんでしたが、この手の派遣会社から金銭をせしめようという手合いは割と多くいて、色々な派遣会社を渡り歩くようにトラブルを起こしては示談金をせしめています。

手口も巧妙なので、防ぐのが難しく、派遣先にもご迷惑をおかけするので、派遣会社としてはかかわりたくない人たちです。

今回は違いましたが、過去には反社会勢力とのつながりを匂わせつつ、こちらを脅してくるような手合いもいて、新人の営業マンにはなかなか対応が難しい相手なのです。

前編①はこちら

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