【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】派遣先から「テストの結果が悪かったので、明日から来なくていい」と言われた派遣社員Qさんからのクレーム対応

【派遣会社営業マン担当のクレーム対応報告】派遣先から「テストの結果が悪かったので、明日から来なくていい」と言われた派遣社員Qさんからのクレーム対応

私の担当派遣社員として派遣先のC社に勤務し始めた40代男性のQさんですが、契約期間はまだ残っているのに、派遣先から「テストの結果が悪いから、明日から来なくていいと言われた。どうなっているのか?」というQさんからのクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

クレーム経緯

●派遣社員Qさんは2週間前にコールセンタースタッフとしてC社で勤務し始めた

●C社のコールセンターは新規立ち上げのセンターであり、派遣社員Qさんを始め10名がオープニングスタッフとして勤務を開始した

●就業開始から2ヶ月は研修期間であり、それに合わせ契約期間も派遣社員Qさんと当社、C社と当社ともに初回の契約期間2ヶ月とした

●派遣社員Qさんからの連絡によると、研修から2週間経ち、これまでの研修内容の振り返りを行うとの周知があり、当日急遽テストが実施された

●テストが終わり、結果を発表され、派遣社員Qさんの他に数名が個別に会議室に呼ばれた

●派遣先担当者より、「Qさんのテストの結果があまりに良くないので、今後仕事をお任せできません。今日をもってお引き取りください。今後のことは派遣会社と相談してください。」と言われ、反論する間もなく、入館証などの貸与物を回収され、退室させられた

●契約期間はまだ1ヶ月半残っているし、そもそも雇用契約は派遣会社と結んでいるのになんで派遣先から突然解雇されるのか?派遣会社は把握している状況なのか?

●あまりに馬鹿にした話なので、もうC社では働きたくない。残りの1ヶ月半分休業補償をしてほしい

対応のポイント

派遣社員への対応ポイント

突然のQさんからの連絡に私も慌てましたが、C社のQさんへの仕打ちはひどい話ですし、ずいぶん人を馬鹿にした話です。

2週間の研修の振り返りのテストが行われたとのことですが、研修内容の習熟を確認するためのテストならばまだしも、Qさんにも派遣会社にも予告なく、テスト結果の優劣で「もう明日からこなくていい」なんてことが許されるはずはありません。

とはいえ、C社は「明日からくるな」と理不尽な主張をしているようですし、Qさんも「そんな派遣先に行きたくない」といっていますから、両者に再度事情を確認した上で、Qさんには次のような対応が必要です。

  • 派遣会社として、派遣先の理不尽な運用を事前に確認しきれていなかったことをお詫びする
  • 残る契約期間について休業補償(平均賃金の6割)とするか、同じような条件の別の派遣先を紹介させてもらうかの判断をあおぐ

そもそも人材派遣では、就業開始前の面接などの選考行為が禁止されていることはもちろん、派遣先と派遣会社間の契約期間中(今回はQさんと当社の雇用契約期間も同じ)に研修の習熟度合いを測るテストの結果によって契約途中で勝手に就業をさせなくするといった実質的な選考行為はもってのほかです。

これは事前に進退を決めるようなテストがあると予告をしていれば良いということではなく、そもそも人材派遣では実質的な選考行為が禁止されているのです。

派遣先への対応ポイント

Qさんの話が全て真実であれば、C社の対応はあまりに乱暴ですし、人材派遣を取り巻く法規への理解がないとともに、派遣会社との派遣契約という商契約を軽視しています。

派遣先には次のような対応が必要です。

  • 2週間の研修の振り返りということでテストが行われ、その結果としてテスト当日にQさんに「Qさんのテストの結果があまりに良くないので、今後仕事をお任せできません。今日をもってお引き取りください。今後のことは派遣会社と相談してください。」というような案内をしたのは事実かを確認する
  • 人材派遣では、進退を決めるテストのような実質的な選考が禁止されているが、その理解があるのかを確認する
  • 当社との派遣契約(商契約)の契約途中で勝手に派遣社員に就業終了を通知するといった対応はどのような考えで行われたのかを確認する
  • 結果的にQさんが就業継続できない状況になっており、Qさんへ支払う休業補償の費用、Qさんが当初の予定通り契約期間満了まで就業した時に当社が得られるはずであった利益(機会損失した利益)について、どのように支払ってもらえるのかの確認

対応経緯

テスト後の面談で「明日から来なくていい」とC社から半ば追い出されるようにオフィスをでたQさんからもらった電話で大体の状況は掴めました。

Qさんのいう話が事実なのかの確認と、なぜ今回のような事態になり、本件についてC社がどのように考えているかの確認が必要です。

まずはいつもやりとりをしている窓口担当者に連絡し、当日夕方にアポイントをとりました。

C社との打ち合わせ

打ち合わせにはセンター長と研修担当者、窓口担当者の3名が参加しました。

このセンター長、50代後半で、以前に窓口担当者から聞いていたのですが、なかなかのクセ者だそうです。

とはいえ、Qさんへの仕打ちはひどい話ですし、当社もQさんへの休業補償や、Qさんが就業できなかったことによる機会損失などを考えると負けて入られません。

まずは私から、Qさんから聞いている経緯について事実確認を行います。

  • 本日、2週間の研修の習熟確認としてテストがあったと聞いている
  • テスト後の個別の面談で「Qさんのテストの結果があまりに良くないので、今後仕事をお任せできません。今日をもってお引き取りください。今後のことは派遣会社と相談してください。」というようなコメントをし、入館証などを回収して退去させたと聞いているが事実か?

先方の3名は「間違いない」と答えます。

引き続き私から質問します。

  • 御社に事前確認した限りではテストを行うとは聞いていない
  • 習熟度の確認だけであれば問題ないが、その結果で就業が続けられないといった判断をすることは実質的な選考行為であり、派遣法の主旨からいって問題がある
  • テストの結果をもって、御社がQさんに直接「明日からもう来なくていい」というような案内をしているが、Qさんは「派遣先から解雇通告された」と受け止めている
  • 派遣社員は派遣会社と雇用契約を結んでおり、派遣先から雇用契約に関することを言及されたり、そう解釈されるような言及をされるのは困る。どういったお考えか?
  • また、Qさんが「派遣先から解雇通告された」と解釈している中で、労働基準監督署などに相談にいった場合、労働基準監督署の指導の対象は御社になるが、認識されているか?

私が一通り話し終えると、クセ者と噂のあるセンター長が話しだしました。

  • テストはしたが、もともとは習熟を確認するためのだった
  • しかし、Qさんのテスト結果は異常に悪く、研修内容がほとんどに頭に入っていないレベル
  • 今回の派遣募集では、2ヶ月間の研修で、ある程度独り立ちできる人材を依頼し、人材の選定を御社に任せた
  • Qさんは到底そのレベルに達しておらず、派遣会社として派遣社員の品質はどのように考えているのか?
  • つまり、テストの結果でお引き取り頂いたのではなく、「Qさんでは派遣会社との契約内容を満たしていないから、ウチで働いてもらうことはできない」ので、あとは雇用契約のある派遣会社と相談してと伝えたまで

一通りC社のセンター長の話を聞いて、まぁよくもそんなに都合の良いものの解釈ができるものだなと感心しつつ、C社が確信犯的に今回の状況を作り出していることがわかりました。

続いて私から応戦します。

  1. Qさんのスキルレベルが、御社の要望に達していなかったというご判断は理解した。しかし、当社としてはQさんの職務経験やアセスメント(適性検査)などで御社の求めるレベルに達していると判断して派遣をさせて頂いた。今後の反省材料とという意味でも御社で行われた定量的な評価を頂きたい
  2. 「派遣契約で求めているスキルレベルに達していなかったからお引き取り頂いた」という御社の主張は理解したが、そのことと、当社になんの連絡もなく、Qさんを退去させるということとはイコールでつながるものではないと思っている
  3. 御社や我々の考えは別として、少なくとも本人は「C社で何の予告もなく実質的な選考行為としてのテストが行われ、その結果で本来雇用関係のない派遣先から解雇通告がされた」と理解している
  4. 本人からしかるべきところに訴え出られた場合、当社はそういった状況を未然防止できなかったのかという意味で管理責任を問われ、御社は派遣先として派遣法上許されている指揮命令関係を大幅に超えた振る舞いをしているとともに、実質的な選考行為も行なっており、非常に厳しい立場になることが予想される
  5. 当社はQさんから残る契約期間の休業補償を求められているが、その支払いでQさんが納得してくれ、御社と当社の労務リスクが解消するなら安いものだと考えている
  6. この休業補償は、今回の経緯がなければ、あるいは事前に当社に連絡を頂き、相談の上でなんらか事態を軟着陸させられれば発生しなかったものだと考えており、御社での費用の全額負担を求めたい
  7. 合わせて、Qさんが本来就業することのできた期間は当社として機会損失をしたものと考えている。この分もご負担を頂きたいと考えている

C社のセンター長の勝手な物言いにだいぶ腹が立っていたこともあり、「この会社とは今後取引がなくなってもいいかな」という勢いで、言いたいことを言いました。

私は営業担当ですが「お客様は神様」なんて思っていません。青臭いながらビジネスパートナーになり得ないお客様は避けるようにしています。

経験上、無茶な要求を繰り返すお客様は結局収益性が悪いことが多く、手間ばかりかかって、本来注力すべきお客様への力を削いでしまうのです。

少し話が逸れました。

私はこれから、この派遣先と喧嘩をしようとしているわけですが、1ー7の私の発言はのちのちの交渉の骨子になっていく発言です。それぞれの発言をどう言った意味合いで言ったのか、ポイントをご説明していきます。

  • 1については、「Qさんがダメというなら根拠をしめせ」という意味合いです。センター長から言われるままに当社がなんの検証もなくQさんがスキルレベルが要件に達していないことを認めたと受け止められると、のちのちに渡って相手に強力な材料を与えてしまいます。「言ったもの勝ち」を許してはいけないのです
  • 2については、「Qさんが派遣契約の要件を満たしていなかった」=「派遣契約を守っていないので退去させてOK」という乱暴な理屈をそのままにしないということです。冒頭で釘を刺しておかないと、「何度も話して御社も理解してもらっていると思うけど・・・」と暴論が前提となった議論が進むことになります
  • 3・4については、「御社が勝手な振る舞いをしたせいで、御社自身が大きな労務リスクを負ったんだよ」という自覚をさせるということ、合わせて「とばっちりで当社も労務リスクを負ってしまい、いい迷惑だ」と暗に伝えるということです
  • 5・6については、「御社の勝手な振る舞いでこんなことになったんだから、休業補償を支払うくらいでQさんが納得してくれるなら安いものだよ、当然その費用はそっちで持ってね」ということです
  • 最後の7について、当然当社としては機会損失した利益を頂きたいところですが、実際のところはあまり期待していません。このセンター長の発言に透けて見える「とりあえず無理難題を言って、交渉のハードルを上げておけば、派遣会社も着地点を探るだろう。最後に少しハードルを下げて妥協してやった風にすれば、派遣会社も折れるに違いない」といった業者慣れした対応が鼻につきました。せっかく喧嘩をするんですから、こちらも応戦というわけで、先方としては予想もしてなかったであろう「機会損失した利益を補償してくれ」というカードを切りました

さて、センター長はどのように反応するんでしょうか?

C社は結構な大手企業のグループ会社です。

この年配のセンター長は、おそらく親会社を役職定年し、グループ会社に天下りしてきたんでしょう。

その方のポジションにもよりますが、大手企業では若い頃から業者を使う機会が多く、良くも悪くも「業者慣れ」しています。

このセンター長など最たるものですが、先方からすれば私からの「挑戦的な物言い」にかなり頭にきたようでした。

センター長は顔を真っ赤にして言います。

  • 派遣会社の人選ミスでスキルが低い派遣社員を押し付けられ、ウチは被害者なのに、休業補償を払えとか、もらえるはずだった利益を払えというのはどういう了見か!?
  • なにかしらの労務トラブルが起こるのであれば、それは雇用関係のある派遣会社と本人間で解決をすればいいこと、ウチに火の粉を飛ばさないでほしい
  • あなたでは話にならないから上司を呼べ。そもそもお詫びに来るのかと思っていたら、見当違いなことばかり言っている。ウチと取引をなくしたいのか!?

想定した通りのセンター長からの発言で、私はすっかり安心しました。

つまり、「このセンター長はクセありとは言っても、業者は叩けばなんとかなる、なってきたくらいの了見であって、狸と言えるほどの深い思慮はないだろう」という、私のセンター長に対する見立てはあっていたということです。

この商談にあたって、上司には「喧嘩をします」ということで了解を取っていますので、「上司を呼べ」とか「取引を停止する」といった脅し文句に引くつもりもありません。

私から反論します。

  • 先ほどお話しした通り、Qさんのスキルレベルについては、当社は低いと思っておらず、妥当な人物としてご紹介をさせて頂いた
  • 御社としてQさんが派遣契約の要件を満たしておらず、即刻退去を求めるほどのレベルの低さであったというなら、その定量的な根拠を示してほしい
  • その上でお詫びするべきはお詫びさせていただきたい
  • 上司とともに改めてお伺いをさせて頂いても良いが、おそらく同じお話をさせて頂くだけ。本日引き続き議論をさせて頂いた方がお時間をとらせないと思っているがいかがか?

センター長は怒り心頭と言った様子で

「話にならない!御社には改めて連絡する!オタクはウチの親会社とも取引があるんだろう?取引がなくなることを覚悟しておいてくれ」

と捨て台詞を残し、同席していた研修担当者、窓口担当者も残して退室してしまいました。

残された研修担当者・窓口担当者との打ち合わせ

勝手に憤慨して席を立ってしまったC社のセンター長ですが、研修担当者と窓口担当者、私の3人が残された会議室は気まずい空気に包まれていました。

「センター長はC社の親会社にも連絡するって言ってたな・・・事前に親会社の人事部長に話を通しておこう。親会社の人事部長はどう考えてもC社がQさんとの労務トラブルの矢面に立つ危ない状況だということは理解するはず。顧問弁護士にも相談するかもしれないな・・・人事部長はまず私にこの労務トラブルの火消しを依頼してくるはずだから、その火消しをしてあげることで、センター長の妄言を火消ししてもらうギブテクにしよう」

などと私が頭の中で今後のプランを練っていると研修担当者が口を開きました。

「すみません、ウチのセンター長がめちゃくちゃで・・・」

おや?何か風向きが変わったぞ?

「実は、Qさんの件は、テストの成績が悪かったことも事実なんですが、ここだけの話、研修期間中にセンター長とQさんがちょっとした口論になりまして・・・」

「どちらが一方的に悪いというわけでもないようだったのですが、売り言葉に買い言葉だったみたいで・・・」

「テストの結果、Qさんをお引き取り願おううという話になったのはセンター長の指示でして・・・」

この方はこんなに私に本音を話してしまって大丈夫なのでしょうか・・・他人事ながらちょっと心配になってきます。

「実はこの商談前に、内々で法務に状況を話し、対策を確認しまして、やはり今回の当社の対応は問題があり、Qさんから当社に直接訴え出られる可能性もあることから、まずは派遣会社と協力して穏便に事を済ませるようにとの話があったんです」

「ただ、センター長はあんな調子なので、派遣会社に押し付ければいいんだというような事を言ってまして先ほどのような話になってしまいました」

「なんとか御社のお力をお借りして穏便に解決できないでしょうか?」

ちょっと想定外の展開ですが、C社にも当たり前の常識がある人がいたのだと思い、少し安心しました。

そういう事なら協力をするのはやぶさかではありませんが、そのための条件を出しました。

  • 当社でQさん本人への対応を試みるが、憤慨されているセンター長の対応は大丈夫か?
  • センター長より御社はもちろん、親会社も含めて当社との取引停止をほのめかす発言があったが、その点はどうなるのか?
  • センター長から親会社に連絡が入る事を懸念して、私の持つルートで事前に親会社のしかるべき方に状況説明をしておきたい。問題ないか?
  • Qさんとの対応にあたって、金銭的な解決となることが想定されるが、その原資はご請求可能か?また、イレギュラーなご請求になるため、事前にどういったご請求方法となるか道筋を示してほしい
  • Qさんからは残った契約期間の休業補償(平均賃金の6割)と言われてはいるが、それは雇用契約のあるQさんと当社間の話
  • Qさんから直接御社への訴えに対する解決となると、「示談金」というような根拠があるようでない、両者が納得した金額ということになる。これについてはどれほどの予算をお考えか?
  • 最後に当社の機会損失となる利益についてはどのようにお考えか?

協力をしてあげようという気持ちにはなったものの、腹に据えかねたQさんが先々どのような主張をしてくるのかがわかりませんし、仮にQさんがC社に対して訴え出ると言ったときには、当社が示談を代行することになるわけですから、金銭解決を前提とした場合、C社がどれくらいの予算を考えているのかは重要ですし、それくらい大変なことだと自覚をしてもらうことも必要です。

また、先方の予算感を確認もせず、安請け合いした後に、思いのほか示談金が必要になり、当社が持ち出しなどということなったら目も当てられません。

権限のない担当者レベルの方々でしたので、矢継ぎ早にぶつけた私の質問は少し意地悪だったかもしれません。

研修担当者は慌てた様子で、「センター長より上職者の者、法務とも相談して本日中に連絡をさせてもらいます」と言い、一旦打ち合わせは御開きとなりました。

C社との再度の打ち合わせ

翌日に研修担当者から電話があり、C社と再度打ち合わせることになりました。

先方のメンバーにセンター長はおらず、私1人に対し、部長(センター長の上司)・法務部の課長・研修担当者・窓口担当者の4名です。

若い頃は相手の役職が高かったり、人数が多かったりするとずいぶん緊張しましたが、最近は面の皮が厚くなったのか全く動じません。

経験を重ねて、商談のパターンが頭に入っているのもそうですが、自分なりのポリシーというか、考え方の軸ができたのが理由のように思います。

ですので、大抵のやりとりで答えに詰まることはありませんし、最悪答えが出ないときは持ち帰ればいいだけです。

半ば開き直って日々の仕事をしているので、周りの同僚からすると「冷静沈着」、とい言うよりも「飄々としている」と見えるみたいです。

話が逸れましたが、お忙しい中、大人数で参加してくださったC社からはどんな話が出てくるのでしょうか。

まず、先方の部長が口を開きます。

  • 今回は当社のセンター長がQさんに対して不適切な対応をしてしまったようで申し訳ない
  • それに伴って予想されるQさんと当初の労務トラブルについて、これまでのQさんと御社の関係性を活かして、御社で初期対応を代行してくれると聞いている
  • また、それに伴い、いくつか条件ももらっていると聞いている

特に異論はありませんでしたので、私が相槌を打つと、部長は話を続けます。

  • 頂いた条件だが、まず当社のセンター長についてはこの件には関わらせないし、親会社含め、御社との取引を停止するなどと言うことはしないので安心してほしい
  • しかし、Qさんとの労務トラブルについて、当社が何かしらの費用を出すことはできない
  • センター長の落ち度があったとはいえ、Qさんは御社と雇用契約のある人物なのだし、そもそもスキル不足の派遣社員を派遣してきた御社に落ち度がある
  • Qさんから当社に何かしらの訴えがあったとしたら、それは社員管理をできていない御社の責任、なんとしてもQさんが当社を訴え出るようなことは防いで欲しい

あれ?

なんだか、話が元に戻っています。

法務とも相談して、「今回の当社の対応は問題があり、Qさんから当社に直接訴え出られる可能性もあることから、まずは派遣会社と協力して穏便に事を済ませるようにとの話があった」んじゃなかったんでしたっけ?

そんな話をしていた研修担当者は気まずそうに私と目を合わせません。

法務部の課長も、部長の発言に特に違和感があると言うようなそぶりはありません。

つまり、法務部の指示は「今回のQさんに対して、テストの結果が悪かったからという理由で強制退去させた件は当社に非があるので、その非は認めつつも、派遣会社と協力して、派遣会社に穏便に解決させろ」と言う意味合いだったようです。

そうなると、今回のQさんへのC社の対応自体に非を認めないセンター長よりも一歩ほど認識が変化したに過ぎません。

「時間の無駄だったな」と、休戦モードだった私に再び火が入りました。

もともとC社とは取引が終わっても構わないと思っていましたので、思う存分戦おうと思います。

反撃開始

再戦のやる気に火のついた私から、反撃を開始します。

  • 今日はQさんのトラブルに関して御社のお考えは理解した
  • 私が想定したお話と違ったが、今後について私は次のように考えている
  1. Qさんと当社の労務トラブルは解決に努力するが、Qさんと御社がトラブルになった場合は特に何もできない。本来当社がタッチできないことと認識している
  2. それを不本意とされて、もしくは今回のQさんの一連の出来事をもって、当社との取引を停止されるなら、それは仕方ないことと覚悟している
  3. 本件は御社の親会社と直接関わりのないことではあるが、「御社の企業グループ内でこういった出来事があり、お叱りを頂いた」ということで、懇意にして頂いている親会社の人事部長、また近日に当社の役員が親会社の常務にお会いする予定があるが、そこでもお叱りを頂いたお詫びをしようと思う。

話しながら、自分で自分に、「慇懃無礼というのはこういうのをいうのかなぁ」と感心してしまいました。

言い方はへり下りながらも、先方には次のように伝わったはずです。

  • そっちがそのつもりなら、ウチは御社とQさんのトラブルには何も手を貸さないですよ
  • 取引停止で結構、むしろこっちから願い下げです
  • 御社が親会社におかしなことを言わないように、こちらも手を打ちますよ。脅し文句ではなくて親会社の人事部長や、常務にもパイプがあるんですよ

私からの話に、C社の部長は明らかに不機嫌そうです。

その後も、C社の部長が数回にわたって「Qさんの件はオタクでなんとかしろ」という意味合いの話をしてきましたが、私も負けずに同じ話を繰り返します。

話が平行線になり、これ以上議論しても無駄かと思い、そろそろお暇しようかと思った頃にC社の部長が言いました。

「あなたの話はわかった。できればあなたの上司と直接話をさせてもらえないか?上司の方と話しても結論が変わらなかったとしても構わないので、連絡先を教えてほしい」

そう言われると断る理由もありません。

このまま議論を平行線のままにしてもお互い良くありませんし、そろそろ上司に下駄を預けた方が良さそうです。

上司との下打ち合わせ

C社の部長達との商談を終え、会社に戻り、上司に今回の商談について報告をしました。

上司の見解は私と同じで、当社として主張は変えないが、ここまでこう着状態になると、C社としても私という「担当者レベル」との商談だけで、今後の当社への対応を決めることは難しいだろうし、上司が改めてC社に訪問し、再度打ち合わせの機会を持とうということになりました。

派遣先、派遣社員に限らず、お互い意地の張り合いのようになってしまっている場面で、担当者が変わったり、代わりに上司が対応することで、先方が妥協しやすくなるというのは良くあることです。

C社との対応は上司に任せることにして、私は上司がC社と対応するにあたり、重要なファクターとなるQさんとのやりとりに集中することにしました。

理不尽な言い分を繰り返すC社に一番不利益を被っているのはQさんです。

少しでもQさん報いるため、当社として出来る限りの事をしたいと思います。

Qさんとの打ち合わせ

QさんがC社から強制退去させられてから2日経ちました。

あらためてQさんと面談し、今の状況や考えについてヒアリングをします。

2日間経ったこともあり、もともと冷静な印象だったQさんは、色々と考えもまとまったようで、落ち着いた様子で話してくれました。

  • 今回のC社の件は本当に酷い扱いを受けて腹が立った。テストの結果で進退が決まるのは論外な話だが、そもそも自分のテスト結果が同期に比べて著しく悪かったとは考えづらい
  • 研修中にちょっとした行き違いでセンター長と言い合いになり、それが理由だったと邪推してしまう
  • C社での就業は御社からの派遣であり、事前にテストがあると聞いていなかったし、ましてやその結果で契約途中で退去させられてしまうとは思いもしなかった。しかし御社からはきちんとした謝罪もあったし、休業補償もしてくれ、なによりC社に対してブレずに抗議をしてくれているのはありがたいと思っている
  • かたやC社は、私への誠意のない対応もそうだし、御社にも誠意のない対応をしているとのこと
  • 揉め事は好きではないが、C社に対しては、しかるべき手段で抗議し、なんらかの謝罪をしてもらおうと思っている
  • 御社(私の会社)に対しては、今となってはなんら抗議する事柄もないので、今後は私とC社との直接の争いになると思っている

当初心配していた通り、Qさんの怒りは直接C社に向かってしまったようです。

私はQさんに「しかるべき手段とはどのようなものか、支障のない範囲で教えてもらえませんか?」と聞くと、「労基署には相談しましたし、いまはとあるユニオンに相談しています」とのこと。

Qさんを止める理由もありませんので何もコメントしませんでしたが、仮にC社のしかるべき立場の人がQさんに謝罪をしたり、事前になんらかの金銭的示談をしていれば、ここまで揉めることはなかったはずです。

その後の顛末

その後、私の上司がC社の部長らと打ち合わせをしましたが、結局お互い主張は平行線になりました。

おそらくC社とは今後も議論の結論なく、当社が機会損失した利益はもちろん、Qさんへの休業補償分の費用の支払いも見込めなそうです。

当社にとっては踏んだり蹴ったりですが、そもそも一番の被害者はQさんなわけで、そうもいっていられません。

C社とは今後実質的に取引が無くなりそうです。

ただ、C社の親会社については当社の得意先でもあり、この件で連鎖的に取引をなくすわけにはいきませんから、上司と私で親会社の人事部長に打ち合わせの時間を頂き、事の次第を説明しました。

人事部長は冷静な方で、「客観的に見て、C社の対応に問題があるので確認しておきます。御社と我が社の取引がなくなったりすることはないので安心してください」と言ってくださるとともに、Qさんがユニオンに相談をされたという事に危機感を持った様子でした。

C社の親会社は誰もが知っているような大企業であり、子会社であれ、悪質な労務トラブルがあった場合はマスコミに取り上げられることも多いのです。

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