【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】情報漏洩をでっち上げられ、解雇を迫られた派遣社員Rさんのクレーム対応

【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】情報漏洩をでっち上げられ、解雇を迫られた派遣社員Rさんのクレーム対応

私の担当派遣社員として派遣先のH社に勤務する30代女性のRさんですが、ある日の朝突然、Rさんの派遣先担当者から「Rさんが情報漏洩事故を起こしたので、解雇してほしい」というクレームのメールが届きました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

クレーム経緯

●派遣社員RさんはH社で2年近く働いてくれていて、職場ではベテランの派遣社員と認識されている

●H社の派遣先担当者は3ヶ月前に新任の課長に変わったばかり

●前任の課長から派遣社員Rさんへの評価はとても良かった

●課長の配下には社員2名と派遣社員が5名(Rさん含む)

●ある日の朝、突然課長から私の携帯メールに「Rさんが情報漏洩事故を起こしたから解雇してほしい」というメールが届いた

対応のポイント

派遣先への対応のポイント

着任したばかりの課長ということもあり、まずはどういった考えで「Rさんが情報漏洩事故を起こしたから解雇してほしい」といったインパクトあるメールを送ってきたのかを確認する必要があります。

  • 情報漏洩事故とはどんな事象を指すのか?
  • 「H社と当社の派遣契約(商契約)の解除」ではなく、「解雇」という単語を選んだのに意味はあるのか?つまり文面通りであれば「Rさんは、御社がRさんを解雇する必要があるほどの重大な情報漏洩事故を起こした」と解釈できる

また、課長と会って確認をする準備として事前に次のような準備が必要です。

  • 就業規則や誓約書などで、Rさんに限らず当社が登録スタッフに等しく約束してもらっている情報セキュリティに関する事項
  • H社での派遣就業にあたり、事前にRさんに案内している、H社より派遣社員全員に配布するように依頼された情報セキュリティに関する資料に書かれた事項

昨今、「情報セキュリティ」や「個人情報保護」は本来法で求められている範囲を超えて、過剰にあれこれと決まりごとが存在しています。

派遣社員に限らず、本来は企業側がなんらかの仕組みを持って予防すべき事柄が、一方的に従業員の責任とされてしまう例も見かけます。

※例えば一方的に入館証を貸与し、肌身離さず所持していることを求めながら、紛失した際には一方的に派遣社員の責任になってしまう、というようなこと

今回も派遣先の「言ったもん勝ち」を防ぐため、何が許されていて許されていないのか、ある程度の根拠資料の準備が必要です。

派遣社員への対応のポイント

今のところ、H社課長の言い分が何もわからないため、いたずらに派遣社員に事情を話しても不安にさせるだけです。

ただ、派遣社員との人間関係ができている場合には、課長との商談の前に少しでも情報はあった方が対策を立てやすく、別件のついでを装って、「何か気になることはありませんか?」くらいの探りは入れてみても良いかもしれません。

経験上、「聞かれなったので黙っていたけど、聞かれれば答えようと思っていた」ということはよくあって、派遣先との交渉に失敗し、後から情報量不足を嘆くよりは、事前に確認できる限りをしておいた方が後悔もありません。

対応経緯

派遣社員Rさんに連絡

対応のポイントの通り、事前にRさんに心当たりがないか確認すべく、別件を装って様子を探ります。

「新しく着任された課長に私の顔と名前を覚えてもらおうと思って、ご挨拶でお伺いする事になったのだけど、何か最近変わったことはありますか?」

私の質問にRさんは「特に何もないですよ」と答えます。

話ぶりや声色から本当に何もないのだろうと感じられたので、電話を終え、特に与件はないままに、課長との商談を迎える事になりました。

課長との商談

「頂いたメールの件でお会いしたい」と連絡を取り、当日中にお会いする事になりました。

前回初めてお会いした時は、前任のベテラン課長が前面にでて話をしていたので、正直印象が薄く、ロビーで待ち合わせをした時も気がつかないくらいでした。

会議室に案内されるまでの様子として「浮き足立った印象」で、Rさんが起こしたという情報漏洩事故が大ごとになっているのかなと懸念を持ちました。

席に着くなり、課長は次のような事を足早に話し始めます。

  • Rさんは重大な情報漏洩事故を起こし、社内で問題になっている
  • 具体的には顧客情報をまとめたExcelファイルの持ち出し
  • 共有フォルダからExcelファイルをRさんの使用するPCにコピーしたログが残っている
  • なんらかの方法で社外に持ち出したようだ
  • そういった重大な情報漏洩事故を起こした派遣スタッフを雇用主である御社はどう処罰するのか聞かせてほしい

矢継ぎ早に話され、話についていくのに精一杯でしたが、私なりにいくつか疑問に思うことがありました。

  • H社は大企業で、派遣スタッフの人数も非常に多いことから、総務部で人材派遣の取りまとめをしている。派遣社員がセキュリティに関するインシデント(人為的な事故)があった場合、必ず総務部に共有される仕組みになっており、インシデント発生時には総務部と現場担当者から私への連絡が同時に来るほど。今回は総務部からの連絡がなく不自然
  • Rさんがメールの誤送信をしたというようなインシデントならわかるが、Rさんが顧客情報をまとめたExcelファイルを入手したところでなんのメリットがあるのか?

2つの疑問を課長にぶつけてみると次のような返答がありました。

  • 総務部にはまだ連絡をしていない。Rさんの件が表沙汰になれば、御社は当社との取引停止など、相当な処分を受けると思う。そうならないための気遣いだと思ってほしい
  • 私と御社の間だけでRさんの対応をする事で、会社間は穏便に事を済ませることができると思っている。そういった前提で御社は重大な情報漏洩事故を起こしたRさんに対する処罰をどう考えているのかを問うている
  • Rさんが顧客情報のExcelファイルを何に使おうとしているかはこちらが聞きたいくらいで、今後御社が本人に確認する事だ

課長がH社と当社の取引を心配してくださるのは大変ありがたいのですが、情報漏洩事故の重大性によりH社との取引が危うくなる懸念はありつつも、この件を現場の課長と内々で処理し、あとからそれが白日の下に晒されたとしたら、人材派遣の取りまとめをしている総務部をないがしろにしたという事であり、インシデントと合わせて、いよいよ取引の継続が危うくなります。

また、課長のいうことは、すべてRさんが顧客情報を社外に持ち出しているという前提で話されており、それが事実かどうかを第三者的に検証してもらう意味でも総務部の存在は必要になります。

私は課長に次の提案をしました。

  • ご配慮はありがたいが、当社が不利になったとしても、本件は御社と当社の取り決め通り、総務部に話を通したい
  • Rさんが顧客情報の社外持ち出しをしたとの疑いがかかっているわけだが、本人の言い分を確認したい
  • 課長をはじめとした現場関係者、総務部、Rさん本人と私どもという四者で問題解決を図りたい

すると課長は憤った様子で、

「そういうことではなくて、今回の件を受けて、御社がRさんに対してどういった処罰をするのかを聞きたいんだ!」

と言います。

課長からの意味のわからない憤りに、私はますます混乱するのでした。

まだ、当社としてRさんに何も確認していないですし、「今回の件を受けて、御社がRさんに対してどういった処罰をするのかを聞きたいんだ!」と言われたところで正直何も答えようがないのです。

私は課長に言いました。

  • 課長からのご指摘は理解したが、当社はまだRさん本人への事実確認も終えていない。まずは本人へのヒアリングをしたい
  • なんの根拠もなく本人に疑いの言葉を伝えるわけにもいかず、顧客情報がいつ、どのようにRさんによって外部に流出したと御社は判断しているのか、またその根拠を可能な限り開示してほしい
  • 合わせて本件は総務部と連携したい。このあとすぐ総務部に連絡をしたいがよろしいか?

課長は相変わらず憮然とした表情で、「とりあえず、御社から本人に事情を確認してください。証拠となるログはこのあとすぐにメールしておきます。総務部への連絡はそれからにしましょう」といいます。

なぜ、社内の話なのに課長が総務部への連絡を渋るのか不自然に思いつつ席を立ちました。

課長から送られてきたデータ

課長との打ち合わせを終えて小一時間たつと、課長からRさんか顧客情報を外部に持ち出したという主張の根拠になる資料が送られてきました。

その内容は次の通りです。

  • Rさんが最近1週間、顧客情報の置かれている共有フォルダにアクセスした履歴
  • Rさんが最近1週間、顧客情報のExcelファイルを加工した履歴
  • Rさんが顧客情報のExcelファイルを共有フォルダからダウンロード(自分の業務PCにコピー)した履歴

メールにはそれらの履歴を示した資料が添付されているだけで、「いつ、どういった行動をしてRさんが顧客情報のExcelファイルを社外に持ちだしたのか?」については全くふれられていません。

すぐに課長に電話をかけ、次のように話しました。

  • 頂いた情報だと、Rさんが顧客情報のExcelファイルを業務で多用していることはわかったが、社外に持ち出したという根拠にはならない
  • Rさんかこの顧客情報のExcelファイルを操作していること自体が業務内容に含まれず、怪しいということなのか?
  • 例えばRさんがメールで顧客情報を社外に送ったとか、USBで社外に持ち出したといった具体的な話ではないのか?
  • そうでなければ何を理由にRさんが顧客情報を社外に持ち出したと判断したのか教えてほしい

すると課長は次のように反論します。

  • Rさんがこの顧客情報のExcelファイルを業務で操作していることは業務内容に含まれており問題ない
  • 実はRさんの顧客情報の社外持ち出しについては、同じ職場のメンバーから申告があった
  • 本人が雑談の中で顧客情報の社外持ち出しを漏らしたと聞いている
  • その証言と、Excelファイルの操作履歴を確認したときに疑惑が確信となった
  • この話を踏まえ、本人にしかるべき処分をしてほしい

私はRさんと2年近くやりとりしていますが、コツコツと着実に仕事をする人で、前任の課長からの評価も高く、新任の課長が言うような顧客情報の社外持ち出しなどという不正をするとはとても思えません。

特に不審に思ったのは2点です。

  1. そもそも、この顧客情報、社外に持ち出したとして一体どれだけの価値があるのか?課長に聞く限り、一部サービスの販売履歴程度の内容。競合他社なら多少は喜びそうだが、Rさんにこの情報の販売ルートがあるとも思えない
  2. 同じ職場のメンバーとは誰なのか?どれだけ信頼できる証言なのか?Rさんへの疑いはそのメンバーの証言を正しいものとして、その証言に関わる状況証拠を集めただけのように感じる

課長を問いただしますが、満足な答えはなく、「一度Rさん本人とも話して、処分を考えてほしい」の一点張りです。

このまま課長と話していてもらちが明かなそうです。

一旦課長との打ち合わせを打ち切り、Rさんに話をしてみることにしました。

派遣社員Rさんとの面談

課長の話に納得がいかなかったものの、これ以上話しても進展も期待できず、しかたなく今持つ情報でRさんと面談をすることにしました。

私としてはRさんが故意に顧客情報を社外に持ち出したとは思えず、また、そんなことをしたとしてもRさんに利益があるとも思えず、課長の話を容易には信じることはできません。

Rさんとの面談では、課長より突きつけられている疑惑はありつつも、私としては全く信じておらず、Rさんの疑惑を晴らすために、何か少しでも思い当たることがあれば教えてほしいというスタンスで臨むことにします。

派遣社員Rさんとの面談

いつもは事前にアポを取って来社するのに、突然面談を依頼してきた私にRさんは訝しげです。

どう話したものか迷いましたが、「どう話したものが私もわからないが、落ち着いて話を聞いてほしい」と前置きして、課長からかけられている顧客情報の社外持ち出しの疑いと、その疑いの根拠が職場のメンバーの誰かであることを話しました。

Rさんは私の話に頷きつつも、身に覚えのない疑いにあまりに腹が立ったのか、「そんなわけないじゃないですか!?」などと憤りつつも、ひとしきり話を聞いてくれました。

「ないとは思いますが、そういった疑いに身に覚えはありますか?」という私の問いに、Rさんは「全く身に覚えがないです」と即答。

Rさんは色々と考えを巡らせながら、なぜこのような状況になっているのか、自分なりの考えを話してくれました。

  • 今、私が所属しているプロジェクトは事業部内でも有名な大変な案件を担当している
  • 新任課長は、課長職自体が初めてで、業務にも役職にもかなり戸惑っている様子が感じられた
  • 課長のほかに社員が2名いるが、社歴が浅いため、あまり戦力になっておらず、ますます課長の負荷は大きくなっていると思う
  • そんな中、5人いる派遣社員のうち、3ヶ月前に他の派遣会社からスタートした男性は、事務を行う派遣社員ではなく、業務改善や効率化を図る目的で、コンサルタント的な立ち位置で業務を行う、コンサルティングの経験がある人物
  • 実際に業務改善や効率化により、だいぶ仕事がうまく流れるようになってきた
  • そういった実積もあり、実質的に課長に次ぐ発言権を持つような立ち位置になってきた
  • ただ、私は彼の歓迎会の時にセクハラめいた発言や振る舞いをされ、避けて回っている
  • それが気にくわないのか、最近は私が仕事の締め切りを守れないように、わざとギリギリに仕事を回してきたり、締め切りに間に合わせようと残業すると「生活残業するな」と課長や周りのメンバーに聞こえるように非難されたりして、肩身の狭い思いをしている
  • 彼に発言権が集中してきたので、他の派遣社員も彼に媚びるようになり始め、考えられないことだが、実務を任せきりの課長も彼に媚びるような態度を見せる
  • 今回の疑いは根も葉もないものだが、私を気にくわない彼が、課長に入れ知恵し、行われている企みなのではないか?

Rさんは少し涙ぐみながら話してくれました。

Rさんの話に驚きつつも、その話の通りなら、課長の根拠の薄い主張や総務部に話を上げたがらない理由も納得がいきます。

Rさんの話が事実なら、顧客情報を社外に持ち出したとする疑いは濡れ衣であり、Rさんは男性派遣社員からセクハラまがいの扱いを受け、職場での嫌がらせが横行し、あまつさえ責任者である課長はその嫌がらせを助長している、という構図が浮かび上がるのです。

今後の対応のポイントは、課長とRさんのどちらを信じるか?ということになりそうです。

「労働力の仲介業」たる派遣会社営業担当の私は、仲介業者らしく、いつもでも両者の間を取るような調整を心がけてしまいますが、今回の問題解決は「伸るか反るか」中間地点はなさそうです。

徹底的に派遣社員Rさんの味方をする

課長とのこれまでのやりとりからの不信感、なによりRさんとのこれまで2年間の信頼関係から、徹底的にRさん味方をすることにしました。

Rさんにもその想いを伝えると、Rさんも頼もしく思ってくれたようです。

では実際に想いを行動に移しましょう。Rさんと一緒に作戦を練らねばいけません。

いざという時に身内からハシゴを外されないように、上司にもお客さんと喧嘩することを伝えとおかなければなりません。

派遣先に強い抗議をする場合の注意点

職場の人間関係がそんなに辛い状況で、さらに今回のような濡れ衣を着せられたら、どう感じるでしょうか?

さらには私という営業担当が味方になり、その職場の責任やメンバーを相手取って争うとなったら?

派遣会社の営業担当が派遣先担当者に対して戦闘態勢に入り、Rさんの濡れ衣を晴らすために戦っている最中も、Rさんはその当事者達の中で仕事をしているわけです。

実際に体験したことはないものの、針のむしろのような状況になることは容易に想像できます。

今回のように派遣会社の営業担当が派遣先に強い抗議をしようとする場合、その間も職場で働く派遣社員には細やかな配慮が必要です。

気の弱い方は、私が交渉している最中に職場でのストレスに耐えかね、途中で退職をしてしまうケースもあるのです。

Rさんにも、その懸念を伝え、どれくらいの温度感で派遣先とやりとりをしたらいいか確認しました。

Rさんは「泣き寝入りは嫌なので、私は気にせず、できることはやってほしい。その結果、あまりに働きづらい環境になったら都度相談します」とのこと。

職場のベテランということもあり、ほとんどが自己完結型の仕事で、課長や例の男性派遣社員との関わり合いは最小限にできるようでしたので、私はさほどRさんの日常を気にせずに派遣先と対峙できそうです。

派遣社員Rさんとの作戦会議

どうやってRさんの濡れ衣を晴らすか、就業後に私の勤めるオフィスに来てもらい、Rさんと打ち合わせをしました。

まずはゴールを設定します。Rさんと話し合った結果、次のようなゴールを目指そうという話になりました。

【ゴール】

  • Rさんが顧客情報を社外に持ち出したとする疑いを取り下げさせるとともに、濡れ衣であったことに対し、課長に謝罪をさせる
  • 今後も就業継続することを前提に、課長に職場環境の改善を約束させる
  • 職場環境改善とは、男性派遣社員をはじめとするRさんへの嫌がらせやいじめとも取れる行為がなくなるよう課長が指導をすること

このようなゴールを設定した上で、今後どのようにアクションしていくか、Rさんに私の案を伝えました。

●Rさんの話をもとに課長に直接抗議をしたところで、状況が好転すると思えない

●私と私の上司で、H社の総務部長に話をしに行こうと思う

●総務部長へ話す内容は次の事柄を考えている

  • 指揮命令者の課長から「Rさんが顧客情報を社外に持ち出した」という疑いをかけられている
  • 疑いの根拠は「メンバーの1人がそう申告してきたから」というもので、その証言に合わせたような、根拠としては説得力の低いデータを私に示し、当社としてRさんへの解雇を含む厳しい処罰を強硬に求めてきている
  • 問題解決にあたり、総務部と状況を共有することを課長に提案したが、納得できる理由なく拒否され、いまもお許しを頂いていない。客観的に検証した結果、Rさんへの疑いは濡れ衣である可能性が高く、私の勝手な判断で総務部長にご相談をしている
  • Rさんへの疑いの背景として、他の派遣会社から就業している男性派遣社員の存在がある
  • Rさんはこの男性派遣社員よりセクハラと受け止められる言動を受け、それを拒否したことをきっかけに男性派遣社員からRさんへのいじめとも取れる言動が始まった
  • この男性派遣社員は実質的に課内で課長に次ぐナンバー2の立ち位置にいるようで、また課長も実務的に男性派遣社員に頼りきりな状況から、彼に頭が上がらず、やりたい放題になっているよう
  • そのような背景の中で、Rさんは今回の自分への疑いが、課長と男性派遣社員が示し合わせて、もしくは男性派遣社員が目障りなRさんを追い出すための企みとして行われていると受け止めている
  • つまり、この職場で行われていることは、Rさんが訴え出ることにより、次のような問題として表面化する
  1. Rさんに対する男性派遣社員からのセクハラ
  2. Rさんに対する男性派遣社員を中心としたパワハラ
  3. セクハラやパワハラを放置し、事実上追認してしまっている派遣先責任者
  4. 顧客情報を社外に持ち出したという濡れ衣を着せ、派遣会社に不法に解雇を強要する派遣先責任者
  • 大きな労務トラブルになった場合、御社の企業イメージを大きく損ねる可能性が高く、ついては問題解決に向けて総務部にご助力頂きたい

H社のような大企業は、企業イメージをとても重視します。

H社クラスの大企業ともなると、ちょっとしたトラブルでも「売れる記事」になり、マスコミに取り上げられがちで、総務部は企業イメージを損なうようなトラブルの芽を摘むべく、目を光らせています。

特にセクハラやパワハラといったハラスメント、不当な雇い止めや解雇などの労務トラブルは総務部としては過敏に反応するキーワードであり、「現場で起こっている出来事だ」などと軽く聞き流せる問題ではないのです。

Rさんにも了解をもらい、いざ総務部長にアポイントをとり、直談判に向かいます。

総務部長との商談

H社ほどの大企業の総務部長ともなると、派遣会社の一営業担当が気軽に会えるものでもありません。

私はたまたまH社の担当期間が長く、まだ総務部長が総務課長だった頃から関わりがあり、数々のトラブルを一緒に問題解決してきたこともあって、割と連絡が取りやすいといった背景があります。

なんとか早々にアポイントが取れ、上司とともにH社に訪問します。

挨拶がわりの昔話もそこそこに「実は御社でお取引を頂いているとある部署で、大きな労務トラブルが起こる可能性があり、そのご相談でお伺いしました」と、本題に入ります。

Rさんと話したシナリオ通り、次のようにお伝えしました。

  • 指揮命令者の課長から「Rさんが顧客情報を社外に持ち出した」という疑いをかけられている
  • 疑いの根拠は「メンバーの1人がそう申告してきたから」というもので、その証言に合わせたような、根拠としては説得力の低いデータを私に示し、当社としてRさんへの解雇を含む厳しい処罰を強硬に求めてきている
  • 問題解決にあたり、総務部と状況を共有することを課長に提案したが、納得できる理由なく拒否され、いまもお許しを頂いていない。客観的に検証した結果、Rさんへの疑いは濡れ衣である可能性が高く、私の勝手な判断で総務部長にご相談をしている
  • Rさんへの疑いの背景として、他の派遣会社から就業している男性派遣社員の存在がある
  • Rさんはこの男性派遣社員よりセクハラと受け止められる言動を受け、それを拒否したことをきっかけに男性派遣社員からRさんへのいじめとも取れる言動が始まった
  • この男性派遣社員は実質的に課内で課長に次ぐナンバー2の立ち位置にいるようで、また課長も実務的に男性派遣社員に頼りきりな状況から、彼に頭が上がらず、やりたい放題になっているよう
  • そのような背景の中で、Rさんは今回の自分への疑いが、課長と男性派遣社員が示し合わせて、もしくは男性派遣社員が目障りなRさんを追い出すための企みとして行われていると受け止めている
  • つまり、この職場で行われていることは、Rさんが訴え出ることにより、次のような問題として表面化する
  1. Rさんに対する男性派遣社員からのセクハラ
  2. Rさんに対する男性派遣社員を中心としたパワハラ
  3. セクハラやパワハラを放置し、事実上追認してしまっている派遣先責任者
  4. 顧客情報を社外に持ち出したという濡れ衣を着せ、派遣会社に不法に解雇を強要する派遣先責任者
  • 大きな労務トラブルになった場合、御社の企業イメージを大きく損ねる可能性が高く、ついては問題解決に向けて総務部にご助力頂きたい

総務部長は話の途中途中で頷きながら、丁寧にひとしきり私の話を聞いてくれます。

そして少し考えた上で次のように話されました。

  • 大体の話は理解した。総務部として、すぐに現場部署を統括する事業部長、部長に連絡を取って状況を確認する
  • どちらが正しいのかは別として、このような大きな労務トラブルを含む話が総務部に相談なしに、現場と派遣会社間で勝手に行われていること自体が社内的には大きな問題。外部人材に関するトラブル解決には社内ルールで必ず総務部を通すことになっている
  • また、現場の課長が「お客」としての優位な立場をもってRさんや御社に理不尽な要求をしていたのであれば申し訳ない
  • 調査結果次第だが、御社のいうような事実が判明した場合にはきちんとお詫びをしたいと思っている

同席した総務課長に経緯の細かい部分を確認され、1時間程度で商談を終えました。

その後すぐにRさんに連絡を取り、総務部への相談を行なったこと、また総務部から所属の事業部への聞き取りが始まることを伝えました。

職場でRさんに何かしらの影響があるかもしれませんから、お互いの行動は逐一共有しようとRさんと示し合わせています。

Rさんの上司である課長まで声がかかるのは多少タイムラグがありそうですが、おそらくは数日のうちに課長にも直接ヒアリングが入るはずです。

2日後に派遣社員Rさんからの連絡

私が総務部長に直談判にいってから2日後、Rさんより連絡がありました。

総務部の課長から面談の要請があり、次のようなことを質問されたとのことです。

  • 職場でパワハラ、セクハラといったハラスメントはないか?
  • 人間関係を含む職場環境について困っていることはないか?

Rさんがいうには、面談は派遣社員含む職場の全員に実施されたとのこと。

おそらく、当事者である課長・男性派遣社員・Rさんだけでなく、職場の全員に同じ質問をする事で広く情報を集めるとともに、全員に会社として職場の問題点に対してメスが入っていることを知らしめたかったのだと思われます。

1週間後に派遣社員Rさんからの連絡

総務部長に直談判にいってから1週間後、再度Rさんから連絡がありました。

まだ不確かな情報のようでしたが、課長が担当プロジェクトを外され、事業部内の別の担当に急遽異動になったようであること、また例の男性派遣社員がここ数日出勤していないということでした。

課長がプロジェクトから外れれば、とりあえずRさんとの直接的な関わりはなくなります。

また、男性派遣社員ももしかしたら職場にいられなくなったのかもしれません。

H社の部長からの連絡

Rさんから連絡があった翌日、H社の部長から電話がありました。

Rさんの所属部署の部長のようで、私はお会いしたことのない方でした。

「お忙しい中申し訳ないが、Rさん含めて少しお時間を頂きたい」とのこと。

総務部に直訴してから、色々と動きがあった中で、何かしらの結論を聞けるのかもしれません。

部長との打ち合わせ

先方が当社に来社してくれ、部長とRさんと私の3人で話し合いが始まりました。

部長が話し始めます。

  • 今回は課長がRさんに全く根拠のない疑いをかけ、退職を働きかけるような行為をし、Rさんにも派遣会社さんにも大変申し訳ないことをした。
  • 課長は私の部下であり、管理者としていたらなかった、申し訳ない
  • Rさんが顧客情報を社外に持ち出したという疑いは、調べたところ、全くの虚偽であった
  • 把握している限りの原因として、とある派遣会社の派遣社員から「Rさんが顧客情報を社外に持ち出している。本人がそういっていたから間違いない」という申告があり、課長がそれを真に受けて、Rさんに疑いをかけ、派遣会社経由で退職を働きかけたというもの
  • 言い方が正しいかわからないが、課長は精神的に男性派遣社員の支配下にあって、ほぼ言いなりになっていたようだ
  • この派遣社員については、職場メンバーへのヒアリングの結果、多々ハラスメント行為を行っていたことがわかり、所属の派遣会社に相談して出勤停止にしてもらっている。おそらく退職となるだろう
  • 課長については管理責任を問う意味でプロジェクトから外し、別の担当に移した
  • 全面的に当社が悪かったと思っていて、Rさんと派遣会社さんにお詫びがしたく本日お時間を頂いた。本当に申し訳なかった

真摯に、そしてとても申し訳なさそうに話す部長に、Rさんは「事実もわかって、疑いも晴れましたし、部長からお詫びももらって、もう大丈夫ですから、頭をあげてください」と声をかけます。

どうやら部長とRさんは以前に仕事の関わりがあったようで、お互い知った仲のようです。

「いや、Rさんとは前から一緒に仕事をしていたのに、こんなことになっていたなんて全然気付いてあげられなくて本当に申し訳なかった」

部長は重ねてお詫びをします。

Rさんとしては、今回のH社の迅速な対応で、課長との関わりもなくなり、問題の男性派遣社員もいなくなり、謝罪もしてもらい、納得感があったようです。

部長に「今後も長くH社で仕事をさせて頂きたいと思っています」と話し、今回のトラブルは解決となりました。

帰り際、部長が私に声をかけてきました。

「Rさんを信じてくれてありがとう。なかなかできないことですよ。今後もよろしくお願いします」

私は人材派遣業界に入って十数年のベテランになりましたが、このとき部長に頂いたお礼は私の中で大事な想い出として残っています。

何かしら人の役に立ちたいと思ってこの業界に入りましたので、今回Rさんの役に立つことができて、良かったなと単純に嬉しいのです。

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