【続編⑤】【派遣会社営業マンのクレーム対応報告】派遣先担当者から突然「Rさんがセキュリティ事故を起こしたので、解雇してほしい」というメールがあった派遣スタッフRさんのクレーム対応⑤

【続編⑤】【派遣会社営業マンのクレーム対応報告】派遣先担当者から突然「Rさんがセキュリティ事故を起こしたので、解雇してほしい」というメールがあった派遣スタッフRさんのクレーム対応⑤

【派遣会社営業マンのクレーム対応報告】派遣先担当者から突然「Rさんがセキュリティ事故を起こしたので、解雇してほしい」というメールがあった派遣スタッフRさんのクレーム対応①とその続編②続編③続編④でお伝えしたH社で2年近く働くRさんの新任の派遣先担当者が、ある日突然「Rさんがセキュリティ事故を起こしたので、解雇してほしい」というメールを送ってきた件ですが、Rさんへのヒアリングにより濡れ衣である確信が高まったどころか、同じ職場の男性派遣スタッフが裏で糸を引いている可能性すら浮上してきました。課長との直接交渉はらちがあかないため、Rさんと作戦を練り、H社の総務部長に直訴して問題解決を試みます。

前回までの経緯

●課長とRさんの両者にヒアリングを行った結果、課長の言い分は不審な点が多く、Rさんの言うように問題の男性派遣スタッフが裏で糸を引いている可能性を感じさせた

●伸るか反るかの今回の問題解決に、私はRさんの味方をすることを決意し、Rさんと作戦会議をした

●課長と交渉を重ねても実りはないと考え、総務部長に直訴をすることにし、そのシナリオもRさんと共有した

対応経緯

総務部長との商談

H社ほどの大企業の総務部長ともなると、派遣会社の一営業マンが気軽に会えるものでもありません。

私はたまたまH社の担当期間が長く、まだ総務部長が総務課長だった頃から関わりがあり、数々のトラブルを一緒に問題解決してきたこともあって、割と連絡が取りやすいといった背景があります。

なんとか早々にアポイントが取れ、上司とともにH社に訪問します。

挨拶がわりの昔話もそこそこに「実は御社でお取引を頂いているとある部署で、大きな労務トラブルが起こる可能性があり、そのご相談でお伺いしました」と、本題に入ります。

Rさんと話したシナリオ通り、次のようにお伝えしました。

  • 指揮命令者の課長から「Rさんが顧客情報を社外に持ち出した」という疑いをかけられている
  • 疑いの根拠は「メンバーの1人がそう申告してきたから」というもので、その証言に合わせたような、根拠としては説得力の低いデータを私に示し、当社としてRさんへの解雇を含む厳しい処罰を強硬に求めてきている
  • 問題解決にあたり、総務部と状況を共有することを課長に提案したが、納得できる理由なく拒否され、いまもお許しを頂いていない。客観的に検証した結果、Rさんへの疑いは濡れ衣である可能性が高く、私の勝手な判断で総務部長にご相談をしている
  • Rさんへの疑いの背景として、他の派遣会社から就業している男性派遣スタッフの存在がある
  • Rさんはこの男性派遣スタッフよりセクハラと受け止められる言動を受け、それを拒否したことをきっかけに男性派遣スタッフからRさんへのいじめとも取れる言動が始まった
  • この男性派遣スタッフは実質的に課内で課長に次ぐナンバー2の立ち位置にいるようで、また課長も実務的に男性派遣スタッフに頼りきりな状況から、彼に頭が上がらず、やりたい放題になっているよう
  • そのような背景の中で、Rさんは今回の自分への疑いが、課長と男性派遣スタッフが示し合わせて、もしくは男性派遣スタッフが目障りなRさんを追い出すための企みとして行われていると受け止めている
  • つまり、この職場で行われていることは、Rさんが訴え出ることにより、次のような問題として表面化する
  1. Rさんに対する男性派遣スタッフからのセクハラ
  2. Rさんに対する男性派遣スタッフを中心としたパワハラ
  3. セクハラやパワハラを放置し、事実上追認してしまっている派遣先責任者
  4. 顧客情報を社外に持ち出したという濡れ衣を着せ、派遣会社に不法に解雇を強要する派遣先責任者
  • 大きな労務トラブルになった場合、御社の企業イメージを大きく損ねる可能性が高く、ついては問題解決に向けて総務部にご助力頂きたい

総務部長は話の途中途中で頷きながら、丁寧にひとしきり私の話を聞いてくれます。

そして少し考えた上で次のように話されました。

  • 大体の話は理解した。総務部として、すぐに現場部署を統括する事業部長、部長に連絡を取って状況を確認する
  • どちらが正しいのかは別として、このような大きな労務トラブルを含む話が総務部に相談なしに、現場と派遣会社間で勝手に行われていること自体が社内的には大きな問題。外部人材に関するトラブル解決には社内ルールで必ず総務部を通すことになっている
  • また、現場の課長が「お客」としての優位な立場をもってRさんや御社に理不尽な要求をしていたのであれば申し訳ない
  • 調査結果次第だが、御社のいうような事実が判明した場合にはきちんとお詫びをしたいと思っている

同席した総務課長に経緯の細かい部分を確認され、1時間程度で商談を終えました。

その後すぐにRさんに連絡を取り、総務部への相談を行なったこと、また総務部から所属の事業部への聞き取りが始まることを伝えました。

職場でRさんに何かしらの影響があるかもしれませんから、お互いの行動は逐一共有しようとRさんと示し合わせています。

Rさんの上司である課長まで声がかかるのは多少タイムラグがありそうですが、おそらくは数日のうちに課長にも直接ヒアリングが入るはずです。

2日後にRさんからの連絡

私が総務部長に直談判にいってから2日後、Rさんより連絡がありました。

総務部の課長から面談の要請があり、次のようなことを質問されたとのことです。

  • 職場でパワハラ、セクハラといったハラスメントはないか?
  • 人間関係を含む職場環境について困っていることはないか?

Rさんがいうには、面談は派遣スタッフ含む職場の全員に実施されたとのこと。

おそらく、当事者である課長・男性派遣スタッフ・Rさんだけでなく、職場の全員に同じ質問をする事で広く情報を集めるとともに、全員に会社として職場の問題点に対してメスが入っていることを知らしめたかったのだと思われます。

1週間後にRさんからの連絡

総務部長に直談判にいってから1週間後、再度Rさんから連絡がありました。

まだ不確かな情報のようでしたが、課長が担当プロジェクトを外され、事業部内の別の担当に急遽異動になったようであること、また例の男性派遣スタッフがここ数日出勤していないということでした。

課長がプロジェクトから外れれば、とりあえずRさんとの直接的な関わりはなくなります。

また、男性派遣スタッフももしかしたら職場にいられなくなったのかもしれません。

H社の部長からの連絡

Rさんから連絡があった翌日、H社の部長から電話がありました。

Rさんの所属部署の部長のようで、私はお会いしたことのない方でした。

「お忙しい中申し訳ないが、Rさん含めて少しお時間を頂きたい」とのこと。

総務部に直訴してから、色々と動きがあった中で、何かしらの結論を聞けるのかもしれません。

部長との打ち合わせ

先方が当社に来社してくれ、部長とRさんと私の3人で話し合いが始まりました。

部長が話し始めます。

  • 今回は課長がRさんに全く根拠のない疑いをかけ、退職を働きかけるような行為をし、Rさんにも派遣会社さんにも大変申し訳ないことをした。
  • 課長は私の部下であり、管理者としていたらなかった、申し訳ない
  • Rさんが顧客情報を社外に持ち出したという疑いは、調べたところ、全くの虚偽であった
  • 把握している限りの原因として、とある派遣会社の派遣スタッフから「Rさんが顧客情報を社外に持ち出している。本人がそういっていたから間違いない」という申告があり、課長がそれを真に受けて、Rさんに疑いをかけ、派遣会社経由で退職を働きかけたというもの
  • 言い方が正しいかわからないが、課長は精神的に男性派遣スタッフの支配下にあって、ほぼ言いなりになっていたようだ
  • この派遣スタッフについては、職場メンバーへのヒアリングの結果、多々ハラスメント行為を行っていたことがわかり、所属の派遣会社に相談して出勤停止にしてもらっている。おそらく退職となるだろう
  • 課長については管理責任を問う意味でプロジェクトから外し、別の担当に移した
  • 全面的に当社が悪かったと思っていて、Rさんと派遣会社さんにお詫びがしたく本日お時間を頂いた。本当に申し訳なかった

真摯に、そしてとても申し訳なさそうに話す部長に、Rさんは「事実もわかって、疑いも晴れましたし、部長からお詫びももらって、もう大丈夫ですから、頭をあげてください」と声をかけます。

どうやら部長とRさんは以前に仕事の関わりがあったようで、お互い知った仲のようです。

「いや、Rさんとは前から一緒に仕事をしていたのに、こんなことになっていたなんて全然気付いてあげられなくて本当に申し訳なかった」

部長は重ねてお詫びをします。

Rさんとしては、今回のH社の迅速な対応で、課長との関わりもなくなり、問題の男性派遣社員もいなくなり、謝罪もしてもらい、納得感があったようです。

部長に「今後も長くH社で仕事をさせて頂きたいと思っています」と話し、今回のトラブルは解決となりました。

帰り際、部長が私に声をかけてきました。

「Rさんを信じてくれてありがとう。なかなかできないことですよ。今後もよろしくお願いします」

私は人材派遣業界に入って十数年のベテランになりましたが、このとき部長に頂いたお礼は私の中で大事な想い出として残っています。

何かしら人の役に立ちたいと思ってこの業界に入りましたので、今回Rさんの役に立つことができて、良かったなと単純に嬉しいのです。

前編①前編②前編③前編④はこちら

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