【クレーム・トラブル対応テクニック】スタートすぐに派遣社員が辞めたいといってきた場合の対応

【クレーム・トラブル対応テクニック】スタートすぐに派遣社員が辞めたいといってきた場合の対応

派遣業界はクレーム産業、なぜクレームやトラブルが多いのか?対処法は?の記事でもお伝えしたように、派遣業界はクレーム産業です。

派遣先担当者は「お客様は神様だ」と思っていますし、派遣社員も労働者としての権利意識が高く、また「派遣会社は自分たちが働いた分から利益出してご飯食べてる」という意識の人も多いですから、派遣会社営業担当は両方から責め立てられ、間に挟まれて苦労することが多いのです。

そこで人材派遣業界に十数年間勤め、無駄に口先だけ上手くなった私が、日常の仕事の中で起こりがちなクレーム・トラブルに対して、どのように段取りし、どのように両者にお話をする事でクレーム・トラブルを最小限に抑えたり、未然防止をしているのかをご紹介します。

スタートすぐに派遣社員が辞めたいといってきた場合

経緯

  • 派遣社員AさんはB社で3日前に就業スタートした
  • 初回の派遣契約(派遣先との商契約)、雇用契約ともに1ヶ月間(31日間)
  • 3日目の金曜日の夜に派遣社員Aさんから「仕事が向かないので今日で辞めたい。来週からは出勤したくない」という電話があった

派遣会社営業担当をされている方でしたら、就業スタートしたばかりの派遣社員が、なんらかの理由ですぐに辞めたいと言ってくることはよくあることと感じられていると思います。

私は毎月大体5名〜10名の派遣社員に新たに就業をスタートしてもらっていますが、就業スタート早々に「辞めたい」となるケースは1.5ヶ月に1人くらいという感覚でしょうか。

正社員や契約社員でしか働いたことがない人には「派遣社員は、そんなに毎月のようにすぐ辞めちゃうの?」と驚くかもしれません。

もちろん派遣会社としてもそういった事態が起きないように、お互いに対して詳細に説明をし、出来るだけミスマッチを減らすように努力をしています。

しかし、「行ってみたら人間関係が自分に合わないことがわかった」「実際に通勤してみたら思ったより時間がかかり、家庭との両立ができない」など、蓋を開けてみたらという事が往々にしてあるのです。

想定されるクレーム・トラブルは?

今回のケースで想定されるクレーム・トラブルを整理してみましょう。

●派遣先

  • 就業スタートにあたり、事前の契約処理や入館処理、パソコンの準備など数々の準備を重ねたのに数日で辞めるとはどういう事だ!
  • 就業スタートしてから数日は社内の案内やOJTしかしていない。つまりなんのアウトプットも出していないのに、なぜお金を払わなければいけないのか?
  • こんなにすぐ辞めるなら他の派遣会社に頼めばよかった。次は他の派遣会社に頼む
  • 人が必要だからスタートしてもらったのに人員に穴が空いてしまった。後任はどうするつもりか?

ポイントをまとめると次のようになります。

  1. コスト負担に関するクレーム・トラブル
  2. 取引停止のリスク
  3. 代替人員の要請

●派遣社員

  • 雇用契約を盾に、相手の事情や心情を考えずに無理な引き止めをしたときに、オファー時に話した条件面との瑣末な違いを取り上げて「聞いていた話と違うから辞めるのは当たり前」と居直られたり、翌日から連絡なく突然出勤しなくなるリスク

対応テクニック

派遣社員への対応テクニック

いくら雇用契約があるとはいえ、人間ですから嫌なものは嫌でしょうし、何か事情ですぐ辞めなければいけなくなったのであればどうしようもありません。

多くの派遣会社が雇用契約書には「退職の際は2週間以上前に申告すること」と記載していると思いますが、実際問題、派遣社員を無理やり職場に連れて行っても派遣先も困るだけです。

また、スタートして早々ですから、「初回の契約期間だけはなんとか頑張ります」といわれても、派遣先はその間、仕事を教えることに手間を取られるだけでなんのメリットもありません。

派遣会社営業担当としては、スタート早々に派遣社員が辞めてしまうことでお客様から叱られるのを恐れ、なんとか両者をごまかして、乗り切りたいところですが、諦めましょう。

「労働力の仲介業」たる派遣会社ですから、自社の事情を前面に押し出し、派遣先と派遣社員双方にメリットのない対応をし続けると必ずどちらからも見放されます。

この時点で必要なのは、これから派遣先にお詫びの連絡をし、今後の対応を話し合うにあたって、事前に派遣社員と「早々に辞めるのはわかったので、これだけは守ってほしい」という約束をし、派遣先との調整がついた後に派遣社員が心変わりして、クレーム・トラブルの傷口が広がるのを避けることです。

派遣先への対応テクニック

前述の通り、スタート早々に派遣社員が辞めると伝えた場合、派遣先とは次のようなクレーム・トラブルになることが想定されます。

  1. コスト負担に関するクレーム・トラブル
  2. 取引停止のリスク
  3. 代替人員の要請

「早々に派遣社員が辞める」という事情を伝えるにも、段取りや説明の仕方で、ずいぶん相手の反応は変わります。

この点は具体的な対応例の方が理解しやすいと思いますので、今回のケースで行った対応でご説明をしていきます。

対応経緯

週末に「辞めたい」といわれた派遣会社営業担当はどう思う?

派遣会社営業担当にとって毎週金曜日の夜と日曜日の夜は鬼門と言えます。

辞めたい側の派遣社員からすると「イヤイヤ行っていた職場だけど、なんとか今週は我慢して乗り切った。でもまた来週から行くのは嫌だなぁ。キリがいいというとことで派遣会社の営業担当に今日で辞めたいと言おう」とか、「イヤイヤ行っていた職場だけど、なんとか金曜日まで我慢して乗り切った。もうすぐ日曜日も終わっちゃうのかぁ。明日から行きたくないな。そうだ、派遣会社の営業担当に月曜から行きませんってメールしよう」というような心の移り変わりがあるのだと思います。

私も社会人ですからイヤイヤ仕事をしている時もあって、そういった心情は十分に理解できるのですが、金曜の夜や、日曜の夜に退職の決意が固まった連絡をもらっても、事前に派遣社員と調整をしたりとか、派遣先に対して報告や今後の対応を説明するタイミングがなく、週があけたらいきなりトラブル化するという意味で、派遣会社側からすると、かなり悪質な辞め方と捉えられてしまいます。

派遣で働かれている方で、この記事をご覧いただいている方がいらっしゃったら、お願いですから週末の「辞めます連絡」はお控えください。派遣先だけでなく派遣会社側も感情的な対応になるケースもあり、誰も得をしません。

派遣社員への対応

愚痴めいたお話はそこそこに、実際の対応にうつりたいと思います。

スタート3日目の金曜日の夜に辞めたいという電話をくれたAさんですが、「辞めたい」というよりは、すでに「辞めます」といった語調で、経験上、色々時間を話しても気持ちが変わることはないなと感じました。

同業の営業担当の方々からすると、「ずいぶんあきらめが早い」と言われそうですが、無理に引き止めてモチベーションが低いまま働いてもらっても派遣先に失礼ですし、少しだけ働く期間を延ばしたところでスタート早々では仕事を教わる身ですから、これまた派遣先にメリットがありません。

そんなわけでAさんへの引き止めは諦め、理由の確認と、今後の対応について話し合います。

まず、退職したい理由は次のようなものでした。

●退職理由

  • スタート早々、かなりの量の資料作成を頼まれたが、業界用語や専門用語の説明はなく、何が何だかわからない。また、まわりの派遣社員に聞くと、いつもそんなもので、皆、自分で調べてなんとかやっているとのこと
  • 私はこの業界の経験も知識もないので、やっていける自信がない
  • まわりの人々は悪い人ではなさそうだが、「話しかけなければ話さない」「聞かれなければ教えない」といった雰囲気で、どうにも馴染めない 。やっていける自信がない

この退職理由に納得できる人、できない人、それぞれですが、派遣社員の退職理由としては割と多い退職理由です。

私の感想としてはAさんは色々と職務経験がある割には、思った以上に心配性で、自分では主体的に仕事をするタイプと思っているようですが、皆と協力協調して仕事をするタイプのようです。

つまり、この職場には合わないようだと判断できます。

Aさんは頑なに「来週から出勤したくない」というので、無理やり連れて行くわけにもいきませんし、了承するしかありません。

Aさんの希望を叶えつつ、B社とうまく問題解決をするために、次の段取りを約束してもらいました。

●Aさんとの約束

  • 今日をもって辞めたいというのは了解した
  • しかし、Aさんのいう退職理由に対して、B社はなんの改善をする機会もなく、突然に辞めると言われ、そのままAさんが来なくなるわけで、納得しがたいし、そもそもビジネス上も失礼な話
  • そこでB社が納得するための段取りを踏みたい
  • Aさんに具体的に何かしてほしいということはなく、また出勤の必要もないと考えている
  • 週明け数日で解決するつもりだが、正式な退職とさせてほしい

「もう出勤したくない」というAさんを無理にどうこうするつもりもなく、もう出勤して頂かなくて結構なのですが、これからB社にAさんが辞めることを伝え、納得をしていただくプロセスの中で、もしかしたらAさんに何かしらのアクションをしてもらう必要が出るかも知れません。

正式に退職を認めなかったのは、そのための保険ということです。

Aさんからは必要な情報が確認でき、B社とのやり取りをスムーズにするための約束もできました。

いよいよ、B社とのやり取りを始め、納得していただければ、問題解決です。

週末のうちにやっておくこと

金曜の夜のうちにAさんとの調整を終えて、いよいよクライアントへの対応です。

今回、Aさんから金曜の夜に連絡があり、色々話した後には22時頃になっていたので、すでに派遣先担当者は会社におらず、週明けAさんが出社しないという状況の中でAさんが辞めると言っていることを伝えなければならない難易度の高い状況です。

そこで次のように対応しました。

  • 日曜の夜にAさんに変わり、体調不良で休むというメールを入れておく
  • 文面には「日曜の夜にAさんから電話があり、体調が悪いので、月曜は休みたいとの連絡があった」こと、「電話で話していると少し様子がおかしく、何か仕事で悩んでいる可能性があるので翌火曜日に出社した際にフォロー面談をさせて頂く」ことを記載しておく

これにより月曜一日は時間が稼げるとともに、「週末まで派遣社員と連絡を取り合う仕事熱心な営業担当」「Aさんの休み明けにはフォロー面談を行い、今後のリテンション(定着)にも気配りを欠かさない営業担当」、派遣先担当者は私にそんな印象を抱くはずです。

派遣業界に限らず、週末にメール一本送る手間を惜しむ営業担当は多いですが、だからこそ他の営業担当がやらない一手間に意味が発生するのです。

送られてきたメールの送信履歴が週末や深夜になっていると、お客様は「自分というお客のために、この営業担当は週末や深夜の寝る時間まで犠牲にして頑張ってくれている」と錯覚します。

実際にメールの文章を作るのは平日日中で、送信するのを週末や深夜にしたっていいのです。ちょっとした手間で相手の印象は変わり、こちらに好意的な対応をしてくれるようになります。

週明けの対応

朝、派遣先の始業少し後に電話をします。

派遣先担当者はすでにメールを読んでいてくれたようで、送っておいたメールの内容を反復するように話し、欠勤となったお詫びと、明日Aさんが出勤した際にはフォロー面談をすることを伝えます。

担当者は納得してくれ、これで月曜日一日時間が稼げました。

しかし、明日以降はどうしましょう。今日中にやっておかなければいけないことがいくつもあります。

夕方を狙ってお客様に再度連絡し、次のように話しました。

  • Aさんから連絡があり、電話で色々と話をした
  • 体調は悪いようだが、どうやら仕事面に悩みが強いようだ
  • 今回の業務内容は資料作成がメインだが、業界知識や専門用語の理解は必要。いくらネットで調べればわかるとは言っても、事前のレクチャーなしにはなかなか難しいよう
  • 知識不足を補うべく、社員様におうかがいしようとするも、皆さまお忙しすぎていらっしゃらず、声をかけるタイミングもないようだ
  • 同じ職場の他の派遣会社の派遣社員に聞いてみるも、皆さんわからないながらやっているというレベルのようで、聞いても答えが返ってこない
  • 他の派遣社員がやれているのに、なぜAさんはできないか?という話になるが、そこは性格の問題で、わからないながらもなんとなく資料を仕上げる要領の良い人もいれば、Aさんのように真面目でキチンと理解した上で仕事に取り組むという人もいる
  • つまり、Aさんは御社のこの職場の仕事の進め方や、社員がほとんど席におらず相談ができないという職場環境にミスマッチなようだ

ここまでで私が先方に伝えたかったのは次のようなポイントです。

  1. Aさんは辞めそうだ
  2. 理由は御社の仕事の進め方や職場環境が合わないから
  3. つまり、辞めたいというのはAさんのわがままではなく、スタートして初めてわかったミスマッチの問題

派遣会社営業担当からすると派遣先の仕事の進め方や職場環境を責めるのは難しいと考えるかもしれませんが、話の根っこは「マッチング」です。

つまり、「御社の仕事の進め方や職場環境が悪いわけではないが、向き不向きがあるようで、Aさんにはミスマッチなことが就業スタートして初めてわかった」というアプローチであれば、先方も気を悪くはしないはずです。

担当者は私の話に理解を示してくれました。どうやら仕事の進め方や職場環境については心当たりがあるようです。

担当者から「どうしたらいいですか?」と問われたので次のようにお答えしました。

  • 明日火曜日もお休みをさせて頂き、私がAさんの自宅近くまで行って面談をし、対面で顔色を見ながら話を聞いてみたい
  • このまま彼女を復職させてもモチベーションも低いだろうし、なんのアウトプットもできないと思う
  • 御社の仕事の進め方や職場環境をAさんのために変えてもらうのもおかしな話なので、Aさんに今のかんきを受け入れられるか判断してもらい、難しいということであれば、早々に自ら「辞めたい」というように話しをもっていく

論点を「マッチング」に絞ったことで、「Aさんが今の環境を受け入れるか、受け入れないかこちらで確認する」と、主導権を取ることができ、また仮に「受け入れられない」となったときに、今の環境を受け入れられないAさんが納得感のないまま、契約期間満了までB社で働くという懸念が残りますが、すでにAさんからは「辞めたい」との話を受けていますから、担当者に「Aさんが自ら辞めたいというように私が話をもっていく」と私がなんとかしますというように宣言することで、恩まで感じてもらうことができるのです。

懸念していたクレーム・トラブルの振り返り

今回の経緯で懸念する派遣先からのクレーム・トラブルはなんだったでしょうか。

  1. コスト負担に関するクレーム・トラブル
  2. 取引停止のリスク
  3. 代替人員の要請

Aさんがスタート数日で辞めたいという理由について、論点を「マッチング」に絞り、派遣先の仕事の進め方や職場環境について遠回しに問題点を指摘したことで、「すぐ辞めるAさんも良くないが、当社の仕事の進め方や職場環境にも問題があったことだし、お互い様」といった流れになっています。

したがってAさんの数日の勤務分を支払わないという話にはつながらず、「コスト負担に関するクレーム・トラブル」にはならないでしょう。

また、同様の理由で「取引停止のリスク」も避けられそうです。

最後は「代替人員の要請」ですが、当社としても後任を手配することは望むところなのです。

懸念したのはクレームめいて早急に人を手配しなければいけないような状況でした。

これまでの経緯からそういった急かされての人選の必要はなさそうですが、「マッチング」を理由に今回の経緯を乗り切った手前、次回はB社の状況にマッチングするような人材の紹介が必要になります。

ただ、B社のこの職場はAさんには合いませんでしたが、自分のペースで自主的に仕事をしたいという方には向いた職場のようですから、それほど人選に苦労することもなさそうです。

無事、問題解決

今回のAさんのスタート早々の退職希望については、これまでご説明したような対応で無事に大きなクレーム・トラブルにもならず解決することができました。

私のホンネ

人によっては私に「嘘ばっかりついているひどい奴だ」と憤りを感じるかもしれません。

ただ、派遣先と派遣社員の間に立って、両者が納得して頂けるように、また当社の利益もある程度守りつつとなると、全てを真正直に伝えることは難しいのです。

三者が極端に不利にならずに皆が納得できる落とし所を探る・・・私の中ではそれが派遣会社営業担当の役割の1つだと考えています。

「嘘も方便」と言いますが、人を傷つけるような嘘だけはつかないよう肝に命じて日々仕事に取り組んでいるのです。

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