【派遣社員として働くための基礎知識】非正規雇用は「雇用」ではなく「需要」、人材派遣は「雇用」ではなく「サービス」

派遣社員として働くための基礎知識】非正規雇用は「雇用」ではなく「需要」、人材派遣は「雇用」ではなく「サービス」

正社員は長期的な視点の採用計画をもとに雇用される

正規雇用、非正規雇用と区別をされますが、正社員を正規雇用、契約社員やパート・アルバイト、派遣社員を非正規雇用とするのであれば、その違いはなんなのでしょうか?

企業は永続的な成長を求め、その実現のために労働者を雇用します。

日本の高度成長期に見られたような「三角形」の年齢構成は理想的な姿で、人件費が安く、意欲と体力に溢れた若い社員が数多くいて、年齢が上がるごとに人数が減っていくような人員構成は企業が目指すべき1つの姿です。

ただし実際の日本企業を見渡すと、日本の人口構造もあり、若年よりも40代以上の方がが多い「逆三角形」の年齢構成になっています。

理想と現実はあるにせよ、企業は毎年の業績はある程度反映しつつも、長期的に見て、年齢構成がいびつにならないように注意をしながら採用計画を練っているのです。

業績の大幅な低迷によるリストラといった非常事態が起こる可能性はありつつも、企業は正社員を業績によって増減させるという発想よりも、永続的な成長のためにどれくらい採用し、育成をしていくかといった視点で捉えています。

非正規雇用は「需要」をもとに「雇用」される

かたや契約社員やパート・アルバイト、派遣社員といった非正規雇用は「需要」をもとに「雇用」されます。

つまり、それぞれの企業の業績の良し悪しによって雇用される人数が大きく変動するということです。

事業や業務の繁閑によって、雇用される人数や、解雇もしくは雇い止めをされる人数が変動していきます。

そこには「企業の永続的な成長を支えるための労働者」という発想はなく、労働者は生産を拡大するための歯車や部品であり、生産を縮小するため、正社員の雇用を守るための「雇用の調整弁」です。

非正規雇用は企業業績の良し悪しによって大きく在りようを左右されるのです。

その最たるもので、未だ記憶に新しいのがリーマンショック後の解雇や雇い止めです。

サブプライムローンをはじめとする信用力の低い債務を容認し、北米を中心に、誰でも気軽にお金を借りて物を買う風潮ができ、それを背景に実力以上の消費が煽られ、世界的に広まっていたバブル的好景気が、サブプライムローンという詐欺まがいの金融商品の化けの皮が剥がれたことをきっかけに、一気に消費意欲が落ち、需要が冷え込んで景気が急低迷しました。

その景気の低迷度合いがあまりに急であったため、その煽りを受けた日本でも、雇用の調整弁たる契約社員やパート・アルバイト、派遣社員といった非正規雇用の解雇や雇い止めが相次ぎました。

需要が増えることで雇用が生まれ、需要がなくなることで簡単に雇用がなくなる。それが非正規雇用という質の低い雇用の実態なのです。

人材派遣は「雇用」ではなく、「サービス」

では、非正規雇用の中でも一風変わった存在である人材派遣はどういったものなのでしょうか?

私は「人材派遣は雇用ではなくサービスである」と答えます。

「派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の指揮命令下で就業をする」という意味では確かに雇用です。

ただ、派遣先企業に対して、派遣契約という商契約をもとに派遣先から提供される「労働力というサービス」と定義すると、派遣スタッフが他の非正規雇用と比べても不利なものであることが浮き彫りになります。

派遣先企業から人材派遣会社へのオーダー(派遣先企業の労働力ニーズ)は、他の非正規雇用が受ける市場の原理による影響の他にも、人材派遣という仕組みが故に、派遣社員という労働者のもとにたどり着くまでにいくつもの市場の原理に晒されるのです。

  • 派遣先企業の需要の増減と関係なく、人材派遣のオーダーは各派遣会社間の価格競争により、そもそも価格低下圧力がある
  • 派遣先企業は人材派遣契約を人件費でなく、購買の対象となる「モノ」に近い感覚で捉えるため、購買部などの管轄になり、コストダウンの要請を頻繁に受ける

また、派遣社員が就業を開始した後も苦難は続きます。

  • 人材派遣契約の更新をするか否かは、派遣先の企業業績次第であり、契約社員やパート・アルバイトといった直接雇用と違って直接の雇用関係が無い分、労働力が必要なくなれば真っ先に契約打ち切りの対象となる(そもそも派遣先企業にとって人材派遣は雇用ですら無い)
  • 働く側としては当たり前の感覚である業務習熟による昇給といった評価の仕組みがなく、賃金が上がり辛い

以上を考えると、人材派遣という仕組みで長期に働こうとした場合、非正規雇用の中でも人材派遣はことさら労働者にとって不利な働き方であると考えられます。

では、人材派遣という仕組みに社会的意義はないのでしょうか?

人材派遣という仕組みの社会的な意義は?

人材派遣業界も歴史が積み重なり、ついに成熟産業と呼ばれるようになってきました。

人材派遣という働き方は労働人口の約3%というごくマイノリティー。

とはいえ、全くなんの社会的意義なしに成熟産業と位置付けられるまで産業が継続するはずがありません。

派遣はずっと派遣!?派遣スパイラルを抜けるには能動的キャリアプランニングが必要の記事でもご紹介をしたとおり、自民党の小泉政権時代、派遣バブルのきっかけともなった「オー人事、オー人事」のCMが流行したあの時期に、「高い専門性を武器に、プロとして一時的な人材ニーズにこたえる」という人材派遣の大きな建前が崩れました。

今では、企業にとっては「雇用の調整弁」、働く側にとっては「条件で仕事を選べる都合の良さ」「仕事の決まりやすさ」が存在意義となってる人材派遣なのですが、本来は長期で就業する枠組みではありませんし、働く人の誰もが検討するような働き方では無いのです。

どこかの大手派遣会社の社名にもありますが、人材派遣で働くということはtemporary(テンポラリー/一時的な)staffとして働くということであり、働く側もその仕組みを理解した上で利用すべきです。

人材派遣会社のイメージ先行の広告に騙されてはいけません。