【派遣社員として働くための基礎知識】人材派遣会社が人材紹介に力を入れる理由

派遣社員として働くための基礎知識】人材派遣会社が人材紹介に力を入れる理由

バブル期を超える有効求人倍率の昨今、これまで俗説として言われていた「35歳の壁」がなくなりつつあります。

35歳を超えても転職が叶うかもしれないという市況を受けて、ここ数年の転職市場は大変賑わい、採用企業にとってはスクリーニングされた優秀な人材確保の手段、求職者とっては豊富な求人案件やカウンセリングを無料で提供してもらえるサービスとして「人材紹介」という仕組みが一般化してきました。

人材ビジネスという意味では共通項の多い人材派遣と人材紹介。

大手派遣会社は軒並み人材紹介ビジネスも行なっていますが、その狙いは何なのでしょうか?

人材紹介とはどのようなビジネスなのか?

一般社団法人 日本人材紹介事業協会によれば人材紹介のスキームは3つです。

①一般登録型

多くの方がイメージする、いわゆる人材紹介の仕組みです。

人材紹介案件は紹介手数料の分、採用ハードルが高いの記事でもご紹介をした通り、求職者には無料のサービスですが、採用となった場合は求人企業に想定年収の30ー40%を紹介手数料として請求する有料サービスです。

その特徴は次の通り。

  • 主に20ー30代の若手人材や、課長クラスまでの管理職を対象としている
  • 対象とする年齢の幅も職種の幅も広いため、ターゲットとなる求職者の裾野が広い
  • 対象とする年齢の幅も職種の幅も広いため、ターゲットとなる求人企業の裾野が広い
  • そのため、裾野の広い求職者と求人企業にもれなくアプローチのできる事業規模が重要で、事業規模が大きい程、営業効率が上がる
  • 人材紹介会社が収益を向上するポイントは専門性ではなく、規模拡大とそのシステム化、プラットフォーム化(リクナビやDODA好例)

主なプレイヤーにはリクルートやパーソル(インテリジェンス→DODA)、パソナ・JACリクルートメントなどがいます。

②サーチ型

一般登録型の人材紹介会社では扱いきれない経営幹部や高度な専門職など、人材紹介会社側にも専門性が求められる求職者・求人案件を対象としています。

エグゼクティブサーチやヘッドハンティングと呼ばれるような、求人企業の求める専門性と希少性の高い人材を独自の手法で探し出し、アプローチしていく一本釣りのような仕組みです。

専門性の高さや、営業効率の低さから企業規模を大きくすることやシステム化、プラットフォーム化することでの収益向上が難しく、大規模なプレイヤーはおらず、中小中堅規模のプレイヤーが乱立しています。

③再就職支援型

再就職支援サービス(アウトプレースメント)と言われる、ありていに言えば、リストラした企業が、対象となった社員に対して再就職の支援を外部委託する「最後の福利厚生」とも言えるようなサービスです。

再就職支援会社は求人案件の開拓により再就職支援サービスを受けている求職者に求人案件を提供したり、応募書類作成のアドバイスやキャリアカウンセリングなどを行います。

人材派遣は儲からないビジネスになった

「ピンハネ」「中抜き」の汚名は不本意、人材派遣は儲からない業種の記事でもご紹介をした通り、人材派遣は人手や手間がかかるわりに儲からないビジネスになりました。

人材派遣協会のホームページに記載のある人材派遣の原価構造をみても、派遣会社の営業利益は1.2%。

ここから税金等を差し引くと、さしたる純利益は残りません。

営業担当など派遣会社の社員が不当に高い給与を貰っている?

ネットで少し調べれば、派遣会社の給与が、一般に給与の低い業界と言われる小売や飲食業と変わらないことが分かります。

どうして人材派遣は儲からないビジネスになってしまったのでしょうか?

  • 社会保険料、特に年金・健康保険料の上昇
  • 人材確保難からの求人広告コストの上昇
  • 改正派遣法で義務付けられた就業中の派遣社員への教育研修(1年あたり8時間)のコスト
  • 労働契約法、派遣法により有期雇用の派遣社員から無期雇用社員(直接雇用)となったものに対する終身雇用コスト
  • 同一労働同一賃金に対するコスト
  • 派遣社員の労働者としての権利意識が高まったことを受けて、クレーム・トラブルが増加したことによる人件費増

数え上げればきりがないのですが、ご覧頂いた項目だけでも、とても儲かりそうもないビジネスであることがお分かり頂けると思います。

派遣会社の生き残り策は?

儲からない人材派遣ビジネス。大手各社の生き残り策は明確です。

  • リクルート社がスタッフサービス社を買収
  • テンプスタッフ社がインテリジェンス社を買収
  • パソナ社がNTT子会社の派遣事業を事業譲受

業界のシェアは徐々に大手派遣会社に集中しつつあります。

つまり、「儲からない業種になったので規模によって厳しい事業環境を生き抜こう」ということです。

ただ、これらの施策はかなり大掛かりであり、時間も資本も必要な取り組みです。

儲からないビジネスとなってしまった派遣会社の営業現場では、どのような取り組みがされているのでしょうか?

派遣会社は人材紹介ビジネスに注力している

儲からない人材派遣ですが、派遣会社は次のような理由で、人材紹介に注力し、利益向上に努力をしています。

人材紹介は利益率が高い

人材派遣に比べ、人材紹介はとても利益率の高いビジネスです。

人材派遣と人材紹介を比較したときに、人材紹介は次の費用が発生しません。

  • スタッフに支払う給与
  • 社会保険料
  • 有給休暇
  • 給与計算に必要なタイムシートもしくは勤怠管理のシステム利用料
  • 社会保険事務や給与計算などの労務コスト
  • 派遣法で定められた法廷帳票類の作成、保管コスト
  • 派遣社員のフォローにかかる営業マンなどの人件費

つまり、人材紹介では、人材派遣に見られるランニングコストが一切ないのです。

したがって、人材紹介手数料の高い割合がそのまま利益となります。

人材紹介は人材派遣で得た資産を転用できる

派遣会社が人材派遣で得た次のような資産を人材紹介に転用することで、人材紹介専門会社よりも効率的に効果的に事業運営ができるのです。

  • 登録スタッフ
  • 取引先
  • ブランド

派遣会社が行う人材紹介は前述した「一般登録型」です。

重複しますが、このビジネスの特徴が次のようなものであることを考えると、労せずして派遣会社の登録スタッフの中に人材紹介で求人企業に紹介できる人材がいるということになります。

  • 主に20ー30代の若手人材や、課長クラスまでの管理職を対象としている
  • 対象とする年齢の幅も職種の幅も広いため、ターゲットとなる求職者の裾野が広い
  • 対象とする年齢の幅も職種の幅も広いため、ターゲットとなる求人企業の裾野が広い
  • そのため、裾野の広い求職者と求人企業にもれなくアプローチのできる事業規模が重要で、事業規模が大きい程、営業効率が上がる

また、人海戦術を是とする人材派遣ビジネスで培った取引や顧客情報は、人材紹介専門会社に集められものではありません。

汗と努力で育て上げた顧客資産と派遣会社としてのブランドは、求人企業担当者から見れば、中小中堅人材紹介会社に比べ圧倒的な信頼を持つのです。

人材紹介ビジネスから撤退しやすい

人材紹介は「好況時のビジネス」です。

特に一般登録型の人材紹介は、その裾野が広い分、景気が悪化すると一気にニーズが萎みます。

ベテランが強みを活かしづらい派遣会社営業マンのキャリアプランは?の記事でもご紹介した通り、派遣会社は長くキャリアを積んでもなかなか専門性と言えるスキルが育ちにくいため、ベテラン派遣会社営業担当のキャリアルートのひとつは「人材紹介会社のエージェント」であるという業界内の認識があります。

実際私の先輩や同僚にもそのような選択をした人達がいました。

しかし景気変動の影響をもろに受けやすい一般登録型の人材紹介は専業で行うには浮き沈みが激しすぎるのです。

その点、派遣会社では、これまで培った資産をベースに景況感に合わせて事業規模を伸縮することができ、人材派遣と人材紹介は相性が良いと言えるのです。

更新情報はTwitterに配信しています!