【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】派遣先の既婚中年担当者から「俺と付き合わない?」と告白された派遣社員Wさんのクレーム対応
引き続き、派遣先の40代既婚担当者から言い寄られた20代女性の派遣社員Wさんのクレーム対応をご紹介していきます。
M課長達の反応
「あなた達が下手を打ったせいで、ハラスメントの件がやぶへびで顕在化しただけでなく、御社の内部通報の仕組みのまずさで犯人扱いという二次被害まで含めて訴え出られるリスクが発生しましたよ」
という私からの話にM課長もS係長も青ざめたままです。
おそらく今日は不在の部長に「上手くやっておけ」と言われていたに違いありません。
やっとの事で口を開いたM課長から質問をされます。
- 「然るべきところに相談」とのことだが、どんなところに相談するのだろうか?
私は次のように答えます。
- まずは労働基準監督署が考えられる
- 労基署はこの手のトラブルを解決するところではないので、労基署のアドバイスのもと、「あっせん」「労働審判」といった労務トラブルを調停する公的な仕組みの利用が想定される
- ただ、Wと御社は直接の雇用関係がないため、いきなりの「訴訟」の可能性もある
- 対応が難しくなるのは「ユニオン」など
- 御社とその親会社は大手企業であり、社会的知名度も高いことから、ハラスメント被害に内部告発の機能不全が絡んだような今回のケースではマスコミが取り上げる懸念も捨てきれない
T社との接触を有利に進めるための「方便」とはいえ、ずいぶん話が物騒になってきました。
M課長は頭を抱えたまま、さらに質問をしてきます。
- 私見で構わないので、何か解決策があれば教えて欲しい
私は淡々と答えました。
- Wが訴え出る方法は様々予測できるが、最終的には金銭による示談になると思う
- これまでの経緯から考えて、どんな方法で訴え出られても必ず御社が負ける
- 早めにWが納得するような解決案を提示した方が無難だと思う
M課長はさらに質問を続けます。
- 「解決案」とは金銭による示談という理解でいいか?
- その場合、あなたのWさんとのこれまでのやりとりや、派遣会社の営業担当としての経験からして、どんな形でどれくらいの金額を提示すれば妥当なのか?
- 金銭でWさんと示談する場合、Wさん個人に金銭を支払うということが社内の仕組みから考えて非常に困難。御社を経由して支払うことは可能か?
かなり具体的になってきたM課長の質問に、事前に上司である部長に根回しをしている気配を感じました。
私が段取りした三者面談ではWさんを直接言いくるめることができないことから、T社にとって都合の悪い結果になることを覚悟していたのかもしれません。
私は言葉を選びながら答えます。
- 「解決案」はあくまで御社とWの間の問題で、私が具体的にお示しするものではない
- ただ、一般的に示談といえば金銭解決
- 妥当な金額はW次第なのでなんとも言えない
- Wの受けとめを考えると、金額もそうだが、どんな意味合いの金額であるかも大事だと思う
- 当社を経由してWに支払えるかどうかは確認するが、当社も御社と同じように支払いにはルールがある。そちらからW渡したいという金額がそのまま本人に渡せるかは断言できない
私からの説明にM課長は納得したようでした。
最後に一つ質問をされます。
- 解決に向けて、金銭による示談は検討するが、合わせてWさんにあらためて謝罪をする機会は儲けられないか?
- 私やS係長ではなく、上司の部長など然るべき立場の者がWさんに謝罪することになると思うが、どう思うか?
Wさん自身、もうT社とはかかわりは持ちたくないでしょうし、いまやT社はWさんにとって派遣先でもなく、M課長達の上司となれば全く関わりのない面々です。
「また、やぶへびになるので、やめたほうがいいと思います」
簡潔に答えてM課長達との打ち合わせを終えました。
派遣社員Wさんに連絡
M課長達との打ち合わせを終え、Wさんに連絡をしました。
打ち合わせの報告とともに今後について話します。
- T社には明日以降、Wさんが出社はしないということで話がついた
- 今回のWさんがうけたハラスメントに対する抗議は引き続き行い、なんらかの結論は導き出すつもり。また報告するので、しばらく時間をもらいたい
- すぐに当社から次の仕事を紹介する手はずをしているが、それでいいか?今回の件を受けて派遣社員として働きたくないとか、少し休みたいとか希望があれば言って欲しい
- もししばらく休みながら転職活動ということであれば、失業保険(雇用保険の失業給付)の手続きをおすすめする。その場合、当社から離職票を発行するが、離職票の退職理由は今回の経緯を記載するつもりなので、ハローワークは「会社都合」として給付制限はなく、すぐに失業保険がもらえるだろう
今日付けでT社での就業を辞めてしまったWさんは、一人暮らしでもあり、早急に収入の確保が必要です。
T社から受けた被害に対する対応も懸案事項ですが、まずはWさんの収入確保のための選択肢を示し、それを選んでもらうことで私のやるべきことの優先順位は変わります。
矢継ぎ早に色々と投げかけてしまいましたが、Wさんは「しばらく落ち着いて転職活動をしたい」ということなので、失業保険の手続きのために社内に段取りをかけました。
長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。