【派遣会社で働く営業担当のための基礎知識】派遣業界はクレーム産業、なぜクレームやトラブルが多いのか?対処法は?

【派遣会社で働く営業担当のための基礎知識】派遣業界はクレーム産業、なぜクレームやトラブルが多いのか?対処法は?

派遣業界はクレーム産業

同僚や同業者で集まったりすると、最近のクレームやトラブル事例を半分笑い話、半分苦労話として披露するのは良くあることです。

派遣業界はクレームの頻発が前提になったクレーム産業であり、その中で働く営業マンは、大なり小なりクレームやトラブルで苦しんだ経験を持っています。

なぜクレームやトラブルが多いのか?

いわゆる派遣会社とは、登録型派遣という事業を行なっています。

これはつまり、派遣会社に登録をしてくれた人を、派遣先と派遣契約という商契約が結ばれたときに、派遣会社と派遣社員が有期の雇用契約を結び、派遣先の指揮命令のもとで働いてもらう、という仕組みです。

そんなわけですので、派遣会社はこれまで縁もゆかりもなかった人を、有期雇用社員として雇用し、派遣先で働いてもらうということになります。

日常の仕事で関わる人々は派遣先の方々、仕事の苦楽を共にするのも派遣先の方々という事で、なかなか雇用主である派遣会社への帰属意識やロイヤリティは生まれづらい環境です。

派遣社員からすると、気に入った勤務地、仕事内容である今の派遣先で働くために、便宜上、派遣会社と雇用契約を結ぶような感覚ですね。

また、派遣社員という働き方を選んだ理由も人それぞれです。

  • 勤務地や仕事内容にこだわって働きたい。正社員だと配置転換や転勤などもあってそれが叶えられないので派遣社員として働く
  • パートやアルバイトよりも時給が高いので派遣社員として働く
  • 契約期間ごとに、今の仕事を続けるかどうか判断できるので派遣社員として働く
  • 責任を問われず、指揮命令に従って受け身に働けるので派遣社員として働く
  • 独立するまで、本業だけでは食べていけないので派遣社員として働く
  • なかなか正社員で仕事が決まらず、仕方ないので派遣社員として働く

思いつくままに書き連ねても、かなり色々な考えの人がいそうです。

つまり、一括りに派遣社員といっても、「働く」という事を色々なベクトルで考えている人がいるという事ですね。

これまでの話をまとめると、派遣社員とは次のような特徴を持つものと整理できます。

  1. 雇用主である派遣会社とは、仕事を通じての人間関係や信頼関係が醸成しづらく、帰属意識やロイヤリティは生まれにくい
  2. 働き方の自由度を重視して、雇用の安定や対価を妥協して派遣社員という働き方を選んでいるので、正社員のような滅私奉公的メンタリティは持ち得ない

これは、「派遣社員だから、こういう在り方」という属人的な特徴ではなくて、「派遣という仕組みで働くと、こういう在り方になる」と捉えた方が正しいと思います。

働き方が変わる事で、働くメンタリティが変わるという事ですね。

そのような派遣社員の特徴から、次のような派遣社員と派遣先の派遣先の認識の違いが起き、クレームという形で顕在化し、派遣会社の営業担当は派遣社員と派遣先の間に立たされ、対応を迫られます。

  • 派遣社員からすると、「もともと聞いていた仕事と違うからその仕事はできない」、派遣先からすると「それくらいは庶務の範囲、やる気がないのか?」といったボタンのかけ違い
  • 派遣社員からすると「今の契約が満了するから更新はせず辞めます」、派遣先からすると「長く働いてくれるといってたのに!そんなにころころ仕事を変えるいい加減な人だったのか!?」といったすれ違い
  • 派遣会社の営業担当に勤怠のだらしさを注意されても、一緒に仕事もしていない人から注意されたという腹落ちしない感情が先に立ち、「働いた分しか給料もらってないんで」「だからこそ派遣社員で働いてるんで」といった開き直った態度になってしまう。派遣先には到底そのままのやり取りを伝えられず、「雇用主である派遣会社なのに、まともな注意もできないのか!?」と、新たなお叱りの火種が生まれてしまう

例を挙げていくとキリがなさそうですし、いちいちその時のことを思い出して暗い気持ちになるので、このへんでやめておきましょう・・・

では、どうすればいいのか?

対策はいたってシンプル、人材派遣というサービスの特徴を理解し、かつ、派遣社員の特徴を踏まえて対応するということです。

繰り返しになりますが、次の派遣社員の特徴を頭に入れ込みましょう。

  1. 雇用主である派遣会社とは、仕事を通じての人間関係や信頼関係が醸成しづらく、帰属意識やロイヤリティは生まれにくい
  2. 働き方の自由度を重視して、雇用の安定や対価を妥協して派遣を選んでいるので、正社員のような滅私奉公的メンタリティは持ち得ない

業務内容の認識の違いによるトラブルの対処法は?

人材派遣というサービスの特徴と派遣社員の特徴を踏まえながら、先ほど例に出したトラブルに対する対処法を考えてみましょう。

派遣社員からすると、「もともと聞いていた仕事と違うからその仕事はできない」、派遣先からすると「それくらいは庶務の範囲、やる気がないのか?」といったボタンのかけ違い

このケースでは、いくつかのボタンのかけ違いの原因が考えられます。

  1. そもそも営業担当の事前の契約内容の詰めや、業務内容の詳細部分の両者への認識合わせが甘かった
  2. 派遣社員が、「本当に事前に言われていたことしかやらない」という、極端な解釈をする人であった
  3. 派遣先が派遣社員を正社員と同じように捉え、「庶務」という括りの業務の範囲を広く捉えている

1の場合は営業担当の修行不足です。素直に非を認め、派遣先と派遣社員双方に改めて共通認識を持ってもらうためのアプローチをするしかありません。

2の場合は、今後の就業継続の中で、別の形でもトラブルが発生しそうです。契約のタイミングで人の入れ替えをし、その派遣社員には適性にあった派遣先をご紹介するなり、お付き合いを控えるなりしたら良いと思います。

よくあるのが3のケースですが、こちらもいくつかのパターンに分岐します。

  1. 派遣先に悪意なく、派遣社員に幅広く仕事を覚えてもらうことで職場になくてはならない人物に育てようといった、前向きな理由で業務内容を広く解釈しようとするケース
  2. 派遣先がコストを変えずに派遣社員の使い勝手を高めるため、派遣社員の顔色を見ながら徐々に業務の幅を広げていくケース

きっかけが善意にせよ、悪意にせよ、どちらにしても、派遣先には人材派遣というサービスの特徴、派遣社員の特徴を正しく理解していただく必要があります。

人材派遣というサービスは、どんな会社でも、どんな部署でも、どんな職位の担当者でも利用する可能性のあるサービスです。

けれども、その利用者である派遣先は人事労務の素人ばかり。派遣法なんてほとんど知りません。

かたや、派遣会社にとってみれば、有期雇用とはいえ自社が雇用している社員に対して、派遣先の担当者の素人考えで労務トラブルを起こされ、その上、「おたくの派遣社員は融通がきかない!」なんて叱られたのでは目も当てられません。

パワーバランス上、言いづらい場面も多いと思いますが、派遣先に基本的な理解をして頂かないと、後々なし崩しになって自分の首を締めるのです。

嫌がられても、派遣先への地道な「教育」が必要

まず、派遣先には人材派遣というサービスを正しく理解してもらう必要があります。

●人材派遣というサービスの特徴

  • 人材派遣とは〇〇という業務を行って欲しいという派遣先と、〇〇という業務ができるという派遣社員を派遣契約のもとでマッチングさせるサービス
  • 契約で定められた業務(業務内容)を、契約で定められた条件(勤務時間、勤務地などの就業条件)で遂行するサービス
  • 成果物責任は問われず、あくまで指揮命令されたことを遂行するサービス
  • 業務は派遣先の指揮命令のもとに行い、指揮命令者は契約上に明確に定められる(派遣先以外の人が指揮命令してはいけない、派遣先の人であれば誰でも指揮命令できるわけではない、といった意味)

つまり、拡大解釈したらなんでもやらせられてしまう懸念を法律や契約で制限をかけているわけです。

「そんなこと言われなくてもわかってる」とか、「そんなんじゃ、使いづらくて派遣を使う意味がない」なんていう言葉に心が折れてはいけません。

そんな時私は「だったら、派遣なんて使わないで、正社員雇って、好きなように指示して働かせればいいじゃん、派遣という雇用の責任を負わないサービスの使い勝手がいいから人材派遣を利用してるんでしょ?」と内心うそぶいています。

派遣先も「そんなに都合の良いサービスなんてあるわけない」と内心わかって言っていますし、営業担当として、言いにくいことでもキチンと伝えたという事実が後々効いてきます。

●派遣社員の特徴

繰り返しになりますが、派遣社員の特徴は次のようなものです。

  1. 雇用主である派遣会社とは、仕事を通じての人間関係や信頼関係が醸成しづらく、帰属意識やロイヤリティは生まれにくい
  2. 働き方の自由度を重視して、雇用の安定や対価を妥協して派遣を選んでいるので、正社員のような滅私奉公的メンタリティは持ち得ない

このような派遣社員の特徴を、派遣先はわかっているようで、わかっていません。

冒頭で前述した、派遣社員の特徴に至る理由までしっかり説明できると、後の他のトラブルでも派遣先の理解を格段に得やすくなります。

これまで私が会った派遣先担当者で、1番困った派遣先担当者は「私は派遣社員も、正社員と同じ職場の大切な仲間だと思っている。だから、派遣社員も正社員と分け隔てなく仕事を与えて、充実して働いて欲しいんだ!!」と公言してやまない部長さんでした。

善意で言っているのがタチが悪くて、この方の考え方を変えていただくのには苦労しました・・・

善意で言っていることなので、派遣社員も最初は付き合ってあげるのですが、途中で息切れして、案の定、派遣社員の定着が悪い職場でした。

それが部長さんを苛立たせ、また暴走が加速するわけです。

しかし、人の入れ替えが発生するたびに、怒られながらも人材派遣というサービスの特徴と、派遣社員の特徴を言い方を変えながら説明し、最近はやっとご理解頂き、ある程度定着率は改善されました。

大口の派遣先だったので粘りましたが、そうでなければ、この手の派遣先は避けた方がいいかもしれません。

派遣社員との関わり方

今回、問題解決の事例で出したのは派遣へのアプローチでしたが、派遣社員の特徴を理解すると、派遣社員との関わり方も少し変わってきます。

派遣社員に派遣会社への帰属意識が生まれづらいなら、それを踏まえ、雇用主であるという建前は持ちつつも、その派遣社員のエージェントとして、下支えをしてあげるというスタンスで接するということです。

派遣会社の新人研修では、よく「派遣先である企業も、派遣社員もお客様」というような教育をします。

言っていることは間違っていないように感じますが、やはり派遣会社と派遣社員は雇用関係のため、「お客様」とは少しニュアンスが異なります。労務管理的な視点も必要ですし。

派遣社員は派遣会社との有期の雇用契約をもとに、派遣先でいわば「出稼ぎ」をしてきてくれているようなものですから、その働きが優秀であれば、もっと長く稼いできてくれるように下支えしてあげるというのが正しい理解に感じます。ですので、何か困った時にご本人の代わりに問題解決をするエージェント、というわけです。

働き方の特徴が違うわけですから、派遣会社の正社員である自分と比べて「あの人は働くことに関して考え方がドライすぎる」とか思ってみても無駄にイライラするだけです。

きっとその人も、あなたと同じ会社に入って、あなたと同じ雇用形態で働くことになったら、 あなたと同じような考え方、働き方をするはずですよ。

つまり派遣社員は「派遣社員だから、派遣社員なりの考え方をする」のではなく、「昨日まで正社員として働いていた人が、今日から派遣社員として働き始めたら、派遣社員なりの考え方で仕事をするようになる」ということです。

「あの人は派遣だから・・・」とか、「あんな人だから派遣でしか働けないんだ・・・」ではないのです。

人材派遣というサービスの仕組み、働き方の仕組みがそうさせることを肝に銘じましょう。

性善説や性悪説で論じるのではなく、あくまで仕組みの問題なのです。

丁度、定年前までバリバリ主体的に働いていた正社員が、定年再雇用で給与がガクンと下がり、権限も失ったときに「俺は再雇用だから責任もないし、ここまでしか仕事しないよ」というのに少し似ていますね。

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コメント

  1. みかん より:

    こんばんは。派遣コーディネーターのみかんです。
    ぼたんのかけ違いは本当によく発生し、うちの会社の場合はお客様→営業→コーディネーター→スタッフと仕事紹介だけでも大分長い伝言ゲームが行われるので解釈も変わってくるのだと思っていたのですが、そもそも派遣スタッフの目線で見ると言うことが出来てませんでした。帰属意識が低い、正社員よりも温度が低いことを念頭に伝えるべきところは伝えるべきですね。(スタッフにもお客様にも。)

    わたしはもうすぐこの仕事をはじめて5年目になります。まだまだ勉強です。
    このブログはいつも共感もあれば気づきもあり、今後も更新を楽しみにしております。

  2. foo より:

    こんばんは。コメントありがとうございます。相手の立場になって考えるって大事ですよね。長年派遣業界にいると、どうしても惰性で対応してしまいがちですが、このブログの記事を作っていると、基本に立ち還れて、自分自身勉強になります。引き続き読んで頂けると嬉しいです!