【続編⑩】【派遣社員として働くための基礎知識】派遣から正社員への転職に成功した派遣社員Oさんの事例
引き続き、日々の仕事に翻弄されて、派遣から正社員への転職に成功した派遣社員Oさんの事例をご紹介します。
派遣社員Oさんから、涙ながらの連絡
F社のD役員、C課長と商談し、Oさんと打ち合わせをした翌日の夜に、仕事帰りらしいOさんから電話がありました。
声のトーンから明らかに様子がおかしいのです。
「どうしたんです?なんだか声の様子がいつもとおかしいんですけど?」
私が質問すると、電話口で涙ぐんでいるようでした。
無理に話をさせるのも申し訳ないと思い、しばらく黙っていたのですが、少し落ち着いたOさんが話し始めました。
- 今日帰り際にD役員とC課長に呼び止められた
- 会議室に連れていかれ、2時間に渡って、「なんとかうちの会社に残ってくれないか?」というような引き止めを受けた
- 残ってくれなければ、仕事が回らずに職場の皆に迷惑がかかるし、部署の仕事柄、総務的なサポートが受けられなくなる社員全体にも影響があると言われた
- 「すぐに契約社員として採用をするし、1年程度様子を見てくれれば正社員にすることもできる」と言われ、「なんとか自分たちの顔を立ててくれないか?」と懇願された
- 承諾しないと部屋を出ることも許してくれないような剣幕だったので、しぶしぶ承諾をした
- 本心ではないので、なかったことにしたいが、怖くてそんなことは到底いうことができない
- 本当に申し訳無いが派遣会社からF社に退職をしたい旨を伝えてもらえないか?
F社の親会社といえば、誰でも知っているような大企業、そこから出世街道まっしぐらで役員として出向してきたD役員ですが、ずいぶんと強引な性格のようです。
Oさんを「軟禁」して退職を阻止し、契約社員化を半ば強要するとは、ずいぶんと酷い振る舞いです。
また、1年後にOさんの正社員化を匂わせていますが、D役員はF社に赴任してから3年目であり、仮にOさんが契約社員化したとしても、D役員は1年を待たずに親会社に戻っているに違いありません。
つまり、親会社に戻る前に自分の配下にある組織で失態を犯したく無いがための保身の材料としてOさんが必要なのです。
このような脅迫まがいの引き止めと、契約社員化の承諾が有効であるはずがありません。
ただ、Oさんの応募した企業の二次面接は明日で、まだ決定したわけではありません。
私はF社への今後の対応についてOさんに質問しました。
- 応募した会社の二次面接は二日後、まだ採用が決まったわけではない
- この段階でF社に契約社員化を明確に断ってしまうと、選択肢が減ってしまう
- F社に対して「契約社員化を承諾したのは無効である」と伝えるタイミングをずらせば、二次面接の手応えだけでも確認した上でF社への対応をすることができるが、Oさんとしてはどうしてほしいか?
Oさんは少しも迷い様子もなく答えます。
- 仮に応募している会社が受からなかったとしても、あんな脅迫めいた引き止めを受けたら、怖くてF社で働き続けることはできない
- できれば、もう出社したくないくらいだが、そうすれば本当に困る人が沢山いるのは理解しているので、契約満了まではいたいと思っている
- ただ、出社するにしても、無理やり承諾させられた契約社員化の件を撤回させてもらい、二度とああいった行き過ぎた在職の説得がないと確信が持ててからにしたい
Oさんの考えはごもっともで、この状況で周りに迷惑をかけないために契約満了まで勤めようとしてくれていることに敬意を持ちました。
ただ、今現在夜遅くで先方も帰宅したであろうこの時間に、二度と行き過ぎた説得をしないように派遣先に約束をさせた上で明日からの出社の段取りを整えるのは難しそうです。
そこでOさんに次のように問いかけました。
- 今日はこの時間なので、明日の出勤に向けて、派遣先に段取りをする時間はないと考えている
- また、明日派遣先に連絡をしても、先方がどのような態度に出てくるのか予測がつかず、スケジュール感が読めない
- Oさんが無理やりさせられた契約社員化の約束を撤回し、二度と行き過ぎた説得をしないように派遣先に約束させるのは時間がかかるだろうし、果たしてそういった約束をさせられるのかも確信がない
- そうした前提でOさんは明日からの出社をどう考えるか?
私からの質問にOさんは少し悩みましたが、次のように答えました。
- 無理なお願いをして申し訳ない
- F社には明日以降連絡をしてもらうとして、様子がわかるまで数日休ませてもらえないか
- 二日後に二次面接もあり、明日からビクビクしながらF社で仕事をして、合格できる自信が全くない
Oさんの考えは、F社での現状や、二次面接のタイミングを考えてもとても都合が良く、それで進めようと良いことになりました。
合わせてF社への対応について、私からアイデアを出します。
- 明日朝の欠勤連絡は私から入れる
- 先方には「今朝、Oからしばらく休みたいとの連絡があったが、本人があまり理由を説明してくれず、御社から事情が聞ければと思い、私が代わりに欠勤の連絡をした」と伝える
- 「Oさんが説明してくれないので事情がわからない」とするのは、向こうから先に事情の説明をさせる流れを作るため、それにより派遣先がOさんの欠勤を受けてどのような受け止めをしているのかがわかる
Oさんは私のアイデアに賛成してくれ、明日そのように話を進めることになりました。
長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。