【続編11】【派遣社員として働くための基礎知識】派遣から正社員への転職に成功した派遣社員Oさんの事例
引き続き、日々の仕事に翻弄されて、派遣から正社員への転職に成功した派遣社員Oさんの事例をご紹介します。
F社と退職交渉
前日のOさんとの打ち合わせをもとに、朝一番にF社のC課長に電話をかけます。
- 昨晩、Oから連絡があり、明日からしばらく休みたいとの連絡があった
- Oは休みたいという理由について、涙ぐむばかりで詳しく話してくれず、こちらも困ってしまったが、とりあえず休みたいと言うので、有給もあり、休みを受理した
- 本人から欠勤の連絡をさせてもよかったが、派遣会社として、あまりに様子がわからないので、私から連絡をさせてもらったとともに、できれば今日お伺いさせて頂き、様子をお聞きしたい
私からの電話を受けたC課長は戸惑った様子で、とりあえず今日午後に訪問の時間をくれたのでした。
今回のOさんへの行き過ぎた説得については、間違いなくD役員が主導をしているでしょうから、正直、C課長だけにお会いをしても、伝言ゲームになるだけで、解決までに時間ばかりかかってしまうことでしょう。
- Oが言うには、昨日にD役員とC課長と話し合いの時間を頂いたようで、詳しく内容は教えてくれないながら、その話し合いが原因で、しばらく休みたいと言っているようだ
- 十数年、派遣会社の営業担当をやっているが、スタッフから、しばらく休みたいと言われたときに、復帰をした試しがない
- 早々に対応をしなければいけないと思うので、できれば今日の打ち合わせにD役員も同席をして頂けないだろうか?
私からの話に、C課長も同意見のようで、できるだけ調整してみるとの返答でした。
D役員との打ち合わせ
夕方であればD役員も打ち合わせに参加できるとのC課長からの連絡があり、F社に向かいます。
D役員とC課長との打ち合わせが始まると、今朝の私からの連絡はD役員に報告がされているようで、昨日のOさんとの話し合いについて、説明を始めました。
- 結論から言うと、昨日のOさんとの話し合いで、Oさんは当社の契約社員になってくれると言う意思表示があった
- 御社からは「1週間程度待ってほしい」との話があった中で先走って申し訳なかった
- しかし当社もOさんが残ってくれるか否かは、部署運営上死活問題なので、声をかけさせてもらった
- いま御社と結んでいる契約期間外の話だし、先日からの契約社員化の話の流れもあるので、問題はないかと思っている
「1週間返事を待ってほしい」とお願いをしていたにもかかわらず、ずいぶん勝手な言い草です。
また、正社員での転職の可能性を打診した中で、対案としてのF社での契約社員化という流れにはなってはいたものの、あくまで「転職の可能性」を前提にしていたに過ぎず、契約期間内に雇用主である派遣会社の許可なくOさんに直接契約社員化の打診をすることは「引き抜き」行為でしかありません。
派遣先での直接雇用化といった、ケースによっては派遣社員にとってメリットのある話を邪魔するようなことはありませんが、なんの断りもなく行うのは商取引の前提となる信頼関係の問題です。
色々文句はありつつも、D役員の話を聞き続けます。
- Oさんは当社での契約社員化を承諾したのだし、「しばらく休みたい」というのは腑に落ちない
- 今はまだ雇用主は御社であるから、明日から責任を持って出社させてほしい
- Oさんが出社したら、当社での契約社員化について改めて考えを聞こうと思う
ここまでD役員の話を聞いて感じたのは、次のようなことです。
- ことの経緯について、全く悪びれた様子がない
- 自分たちの都合しか考えていない
- 都合が悪いことは「現在の雇用主は派遣会社」という理屈で責任を押し付けようと考えている
そもそも、F社の総務経理部は派遣社員任せの部署運営で、責任者であるC課長のマネジメント下手もあって、その根本解決は難しく、Oさんが退職をすることを機に取引を控えようと考えていました。
ここへきて、その上司であるD役員のやり方も知るにつれ、やはりその判断は間違えていないと確信したのです。
しかし相手は曲がりなりにも役員。
F社とは他の部署で結構な取引があり、たくさんの私の担当派遣社員が働いているのです。
慎重な対応をしなければ、後々どのような不利益を被るかわかりません。
言葉を選びながら、私から話します。
- D役員から頂いたお話では、昨晩Oと契約社員化について話し合いをしたときには、何も不自然な様子はなかったという理解でよろしいか?
- であれば、Oともう一度話してみて、なぜしばらく休みたいといった考えになったのかを確認してみる
- D役員おっしゃる通り、契約期間中はOは当社の雇用契約なので、契約社員化については私を通してほしい
- 邪魔をするようなことは一切しないし、私もOがなんらか安定した雇用に変わることは歓迎している
これ以上議論をしても、お互い得るものもなさそうでしたので、一旦打ち合わせを終え、Oと話した上で改めることにしました。
長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。