【続編⑥】【派遣会社で働く営業担当のための基礎知識】派遣先に闇金から取り立ての電話があったときの対応方法

【続編⑥】【派遣会社で働く営業担当のための基礎知識】派遣先に闇金から取り立ての電話があったときの対応方法

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Nさんと合意解約

R社への訪問後にすぐにNさんに連絡し、再び話し合いをすることになりました。

Nさんに来社してもらい、会議室に通します。

ずいぶん疲れた様子で、あまり覇気を感じません。

まず私からNさんに質問をしました。

  • お金の問題は何か進展があっただろうか
  • 昨日当社に金融業者からの電話があってから、その後はなんの連絡もない
  • Nさんとの間でなんらか進展があってのことかと思い質問している

Nさんは俯いたままで答えました。

  • 今日も親戚に頭を下げて回ったが、結局必要な金額は集められなかった
  • 金融業者には「契約内容に虚偽があったので訴える」と言われており困っている
  • 「すぐに元本を返済すれば穏便に済ませる」とも言われていて金策に走っている
  • 正直な話、お金を借りたのは「闇金」と言われるような怪しい業者なので、訴えられることはないと思っているが、逆に何をされるかわからないところがあり、怯えている
  • なんとか助けてもらえないだろうか?

Nさんの様子を見るに実際にかなり困っているのでしょう。

ただ私としても、会社としても、なんの非もなく、ただただNさんの行いの被害を受けているだけなのです。

どうして助けてもらえると思えるのでしょうか。

冷たいようですが、Nさんへの同情の余地もなく、次のように話しました。

  • Nさんがお困りの状況は理解したが、Nさんの行いで重大な被害を受けていてこちらも困っている
  • 先程R社に謝罪に行ってきたが、今回の件でNさんに限らず、会社と会社としての問題になっており、全ての取引がなくなってしまうかもしれない
  • 今後も金融業者からの連絡があることで営業妨害をされることも予想される
  • すべてをNさんのせいにするつもりはないが、やはり責任は重いと思っている
  • 残念ながらこの状況でNさんをお助けすることは難しい
  • 以前にもお話しした、就業規則には懲戒を検討しているが、Nさんの今後もあるので懲戒解雇などの処分は避け、できればお互い合意しての雇用契約の解約(合意解約)としたい

Nさんはこの展開を予想していたのか、あまり動じた様子はありません。

少し考えてからポツリと呟くように話しました。

「今回の件は、私が仕事を失うくらい重大なことだったんでしょうか?だってお金を借りて、たまたま取り立ての電話が数回派遣先に行っただけですよ」

・・・どこまで本気かわかりませんが、やはりNさんには事態の深刻さを理解してもらえていなかったようです。

私は少しうんざりしながら、改めて今回の件での問題点を伝えることにしました。

  • 懲戒を検討している根拠は当社の就業規則。懲戒事由として「故意または過失により、災害または営業上の事故を発生させ、使用者に損害を与えたとき」と定められており、今回の件はこの事由にあたると考えている
  • 具体的には金融業者に派遣先R社の社員であると偽り、その証拠としてR社の名刺や入館証を使ったこと。さらに先程R社より、「金融業者の本人確認のためR社電話をさせ、うまく信用させるようにR社内で手はずをした」という新たな指摘も頂いている
  • これらのことから、R社から当社への信頼はなくなり、R社すべてとの取引停止の危機に陥っている
  • Nさんの業務上のミスや、スキル不足といった問題であれば、当社の人選マッチングの問題と考えるが、今回はあくまでNさん個人のお金の問題を起点に故意にしかも悪質に行われたものであると考えている
【派遣会社営業担当の皆様へ】なにをもって懲戒の対象とするかは派遣会社によって大きく見解が分かれます。実際に懲戒を検討する際は、お勤めの会社の法務部などにご確認ください。

するとNさんは少し驚くコメントをします。

「派遣会社は契約期間中は、派遣社員の人生の全てを受け入れなくちゃ存在価値はないと思うんですよ」

・・・Nさんがそのように思うのは勝手ですが、我々はNさんの親や親戚ではありません。

  • 残念ながら当社にはそういった認識はない
  • Nさんと当社に認識の違いがあるのは当然だが、今のお話ではお互い合意しての雇用契約の解約は難しいようなので、懲戒処分で検討していく
  • 異論がおありの際は、訴え出るなりしていただければ良いと思う

するとNさんが質問をしてきました。

  • 訴えでろというが、どこに訴えでたら良いのか?
  • 懲戒処分となった場合はどんな不利益があるのか?

私に訴え出るところを教えてくれというのも少し驚きましたが、懲戒処分となった場合の不利益についてはきちんと説明をしておかなければならないと、丁寧に答えることにしました。

  • 仮に最も重い懲戒解雇とした場合には、転職活動で不利になる可能性がある
  • たとえば面接で退職理由を聞かれた際に懲戒解雇であったことを伝えないと経歴詐称になる
  • 履歴書に懲戒解雇であることを書かなくてもよいが、もし採用された後に勤務先から離職票を求めれた場合、離職票にはその旨の記載がされており、のちのち懲戒解雇をされたことが知られてしまう可能性がある
  • 私としてはそこまで重い処分はしたくないが、それを決めるのは上司であるため、なんとも言えない

「そうですか・・・実はお金を借りたのは親戚の不幸があってというのは嘘なんです。借金の返済があって」

「どうにも首が回らなくなって、今のところで一本化したんですが、額が大きいんで、さらに首が回らなくなっちゃいました」

「いろいろご迷惑をおかけしたので、これで辞めます」

やはりNさんは多重債務者だったようです。

全てが嘘に塗り固められた話でした。そもそも彼の職歴もあてにならないかもしれません。

正社員の採用もそうですが、採用は基本的に自己申告を前提としたものであり、採用以前の派遣会社での「登録」は選考ですらなく、自己申告の最たるものになります。

派遣先に紹介するにあたっては人選担当や営業担当の派遣社員の見極めが力量を問われれところですが、売り手市場で派遣社員不足の昨今、選定眼も曇りがちです。

今回もNさんの表面上の人柄の良さに騙され、本質を見抜くことができなかったのは大きな反省です。

Nさんとは合意解約をすることとなり、一筆交わした上で会社から送り出しました。

ただ帰り際にNさんの言った「金融業者には、私が御社を辞めたことは伝えますが、どうにも言うことを聞いてくれる人たちじゃないんですよ」という一言がとても気になるのでした。

長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。

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