【続編⑨】【派遣会社で働く営業担当のための基礎知識】派遣先に闇金から取り立ての電話があったときの対応方法
闇金業者との4回戦
3度までも一方的に電話を切られ、闇金業者も面目丸つぶれでしょうが、私も負けるわけにはいきません。
電話を切ってから数分経つと、また田中と名乗る男性から電話がかかってきました。
こちらとしてはもう話すこともないので、電話をかわりたくもないのですが、どうやら電話に出てくれた女性社員に難癖をつけているようです。
- 先程、〇〇に一方的に電話を切られたが失礼ではないか、御社ではどんな教育をしているのだ?上司を出せ!
- もう一度〇〇と話をさせろ、電話を変わらないのであれば、そちらの事務所に行く
女性社員はすっかり怯え、困り切った様子で私に状況を説明します。
このまま電話をかわらずにいても同じことの繰り返しになりそうなので、最後の一発をお見舞いしてやる必要がありそうです。
- もうそちらとはなんの話もない
- これ以上しつこく電話をしてくるようなら営業妨害で最寄りの警察署に相談する
- 過去の通話、今話しているこの通話も全て録音しており、警察に提出する
- Nさんからそちらの会社名や連絡先は聞いている
すると田中と名乗る男性は、これまで特徴を変え、次のように話しました。
「お前、いい加減にしろよ!なめとんのか!?」
「今からお前の事務所に行くから待ってろ!!」
いよいよ本性を現しました。
闇金業者たるものこうでなければいけません。
田中と名乗る男性は、組織内での役割柄、上司役といったところだと予想され、本来乱暴な口調で恫喝めいたことを言う役割ではないのだと思います。
散々私にコケにされて、いい加減腹が立ったのでしょう。
そろそろ潮時かなと思い、私は次のように答えました。
- 当社にお越しいただくのは勝手だが、私はお招きしていないし、お招きするつもりもない
- これから早速警察署に相談に行く、実はすでに相談をしてあって、「何かあったら呼んでくれ」と言われている
- 私の名刺がNさんから渡ったりしているのかもしれないが、Googleマップで私の事務所の住所を調べて欲しい、警察署の向かいのビルだ
田中と名乗る人物は電話越しにギャーギャーわめいています。
- もうお分かりいただいているかもしれないが、私は一切譲るつもりはない
- 社内全てには手を根回しをしてあって、どこに連絡を入れても私のところに戻ってくるのは、すでにご経験だろう
- あなたはNさんが当社の社員であることを拠り所に借金の肩代わりを求めているようだが、そんな理屈は通用しないし、そもそもNさんはすでに当社の社員ではない
- 前にも言ったが、給与の差し押さえなど法的な措置をとってもらえれば応じるので、必要があればそのようにしてほしい
- 私のような「食えない相手」に時間をかけていても時間の無駄なのではないだろうか?
- Nさんに直接返済をもとめるのが道理だと思う
諭すように話をすると、田中と名乗る男性は突然電話を切りました。
闇金業社の突然の訪問に備えて下準備
闇金業者に大見得を切って撃退をしたものの、本当に彼らが事務所に乗り込んで来ないかは不安が残るところです。
私の強気の理由は次のようなものでした。
- 組織だって電話での取り立てを行っている彼らが、回収可能性の低い当社にまでわざわざ乗り込んで行くのは業務効率が悪い
- 乗り込んだことで面が割れてしまい、個人を特定されてしまうリスク
- 乗り込んだことで不法侵入などで通報されたり、こっそりと撮影された映像をSNSにアップされたりといったリスク
彼らだってプロなんでしょうから、法的な手段を経ずに、Nさんの雇用主である、もしくは雇用主であったと言う理由だけで、私の会社がNさんの借金の肩代わりをするとは思っていないでしょう。
これ以上、私の会社にアプローチをしたとしても実入りはなく、まともな判断ができるのであれば「効率が悪く、リスクが高い」と考えます。
残る懸念は、これまでの私とのやり取りで意地になっているというケースです。
ないとは思いますが念には念をということで、次のような対策をとりました。
- 事務所入り口のドアは出入り自由であったが、常時施錠し、入り口のガラス面に「ご用のある方は下記の電話番号にお電話ください。係りの者がお迎えに参ります」とした
- 入室してすぐのカウンターに小型の三脚でビデオカメラを固定設置した
- 以前より入室時には会社名や入室者名を書く紙を用意してある
合わせて上司にお願いをし、ビル隣の警察署に相談に行ってもらい、これまでの経緯を説明し、何かあった際には相談することを伝えてもらいました。
これでいつ闇金業者が来たとしてもなんとか対抗できそうです。
私も営業担当をしている以上、毎日会社にいるわけにもいかず、上司と私と同僚数名で分担して、必ず事務所に男性社員がいるようにシフトを組みました。
それにしてもNさんの個人的な借金問題で、ここまで大掛かりな対応になるとは思いもしませんでした。
1週間後
色々な準備をして闇金業者を待ち構えていましたが、結局それから1週間経っても彼らは現れず、電話もかかってきません。
やはり私の読み通り、闇金業者はこれ以上私を追いかけても実入りもなく、手間ばかりかかるだけと判断をしたのでしょう。
1週間経ったこの時点で問題解決としました。
その後Nさんはどうなったのでしょう。無事に借金を返済することができたのでしょうか?
全く気にならないといえば嘘になりますが、Nさんを後追いしてもなんの手助けもしてあげられませんから、感傷はこれくらいにしておきましょう。
派遣会社で営業担当をしていると、何年かに数回、このような借金問題に巻き込まれることがあります。
その度に「世の中には色々な人がいるなぁ」と思うとともに、反面教師としているのです。