【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】仕事はできるのに自己主張が強すぎる派遣社員Eさんのクレーム対応

【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】仕事はできるのに自己主張が強すぎる派遣社員Eさんのクレーム対応

私の担当派遣社員として派遣先のO社に勤務してくれている40代女性のEさんですが、仕事はとてもできるのだが、上司や同僚とのコミュニケーションの取り方、人間関係にかなり問題があり、どうにかして欲しいという派遣先からのクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

クレーム経緯

●派遣社員Eさんは1年半前にO社で営業アシスタントとして就業開始

●明るく元気な性格で、自分から積極的に周りとコミュニケーションをとり、仕事にも前向きでとても評価が高かった

●就業開始8か月頃に、上司が変わった

●1年を過ぎたあたりから、仕事にも人間関係にも慣れてきたのか、新しい上司や社員に対してアシスタントという自分の立場を超え、人の仕事の仕方に口を挟んでくるような発言が多くなった

●最近では新しい上司に対して、周囲の目がある中で、マネジメントの在り方に文句をつけるような発言が頻繁になった

●自分の主張が取り上げられないと、さらに上の上司や、お客様含めてCCを入れて上司や同僚に意見するメールを送るようになった

●チームのメンバーの大半が、彼女のせいで仕事がやりづらいと考えており、職場の雰囲気が悪くなっている

●派遣社員Eさんは仕事ぶりは優秀で、欠かせない存在なのだが、このままの仕事への取り組み方では、どこかのタイミングで契約の更新を考えなければならない

●派遣会社から、彼女の仕事への取り組み方をなおすようなアプローチはできないか?

対応のポイント

仕事のパフォーマンスの良さに比例するように強い性格の派遣社員に手こずる派遣先という構図はよくあるケースです。

前任の上司が優秀な方で、Eさんの手綱をうまく引いていて、とても高い評価を頂いていたのですが、上司が変わった途端に厄介者扱いされるようになったようです。

派遣先への対応のポイント

今回のケースで、派遣先のお話と要望をまとめると、次のようになります。

  1. Eさんは主体的で前向きな性格で、仕事では頼りになる
  2. たが、その性格が災いして職場の人間関係が悪くなっている
  3. Eさんの性格を変えろとは言わないが、もっと周りの人に配慮しながら働くように指導して欲しい

Eさんの、主体的で前向きな性格に由来して評価が高く、同じくEさんの性格で評価が悪いということです。

派遣先の要望する指導をするには、彼女の性格的な特徴を軌道修正するしかなく、そういった指摘をしたときに、その性格から彼女なりの思いや考えをもとにした強い反論と、「派遣会社を経由してクレームを入れられた!!」という強い被害者意識が芽生えることが懸念されます。

ますます職場での振る舞いが悪化することも想定され、派遣先に懸念をお話ししました。

派遣先も同じ懸念を持っていて、とりあえず私が本人と面談して、近況や最近の仕事への考えを聞き、その上で対応を考えようという、ぼんやりした結論になりました。

このようなケースでのお客様への対応のポイントは次のようなものになります。

  1. 性格的な特徴が由来する今回のケースでは根本解決は難しい。結局、最終的に派遣先はEさんをどうしたいのか?続けて欲しいのか?辞めて欲しいのか?を見極める
  2. 続けて欲しい場合は、Eさんの性格を踏まえ、どうなれば良しと判断できるのか?
  3. 辞めて欲しい場合はいつなのか?後任は必要なのか?直接の引き継ぎは必要なのか?を確認する
  4. 辞めさせたいのであれば、Eさんの性格を考えると、「辞めさせられた」と受け止めると職場でのトラブルに発展する懸念。自分から辞めたいと思わせる仕掛けに協力を頂けるかの確認

今回の打ち合わせでは、派遣先の担当者が5名と大人数で出席し、上のポイントの細部まで合意形成することが難しかったため、一旦Eさんとの面談を優先し、改めて打ち合わせをする事にしました。

ここまでの段階でも、この程度の打ち合わせに大人数で参加している点、それでいて結論が出せないという点、そもそもある程度の結論を持って打ち合わせに望んでいないという点からも、リーダーシップが乏しく、結論が先送りにされがちな文化が垣間見え、Eさんとの面談では色々と文句が出てきそうな予感がしました。

派遣社員との対応のポイント

派遣先側のマネジメント能力やチーム力にも問題がありそうですので、Eさんへのアプローチは慎重に行う必要があります。

対応のポイントは次の通り。

  1. まずは仕事の現状の確認をする
  2. 派遣先のマネジメントや仕事の仕方に問題を感じているようであれば具体的にヒアリングをする
  3. その問題点、課題点の中でEさんがどのような解決のための考えやアクションをしたのかを確認する
  4. 今後の就業継続意思を確認する
  5. 継続意思があれば、その理由はなんなのかを確認する
  6. 退職の意思があれば、いつなのか、それまでのモチベーションは何に置くのかを確認する

良くも悪くも仕事に対して前向きで主体的なEさんを想定しての対応のポイントです。

派遣社員から聞く愚痴めいた派遣先の問題点や課題点に対して、通常は派遣社員がどのように考え、アクションをしたのかといった質問はあまりしませんが、前向きで主体的に仕事に取り組んでいるEさんであれば、なにかしらの考えやアクションをすでに起こしている可能性が高く、またそのアクションが結果として職場内でハレーションを生んだといった本人からのこぼれ話を聞くことができれば、後々のEさんとのやり取りの中で話の材料になるかもしれません。

また、Eさんのようにビビットに物事に対応する性格を考えると、退職の意思が固まると、すぐにでも行動に移す可能性があります。それはそれで仕方ないのですが、今の仕事に対するモチベーションの源泉を確認しておくことで、ある程度Eさんの行動パターンが想定できるかもしれません。

対応経緯

派遣社員への対応

派遣先との打ち合わせの中で明確な結論は得られませんでしたが、まずは、Eさんとの面談を行いました。

派遣先からのお話からも想定できた通り、Eさんからは多くの不平不満がヒアリングできました。

  • 派遣先の社員が何度言っても仕事の納期を守ってくれない
  • 上司がやる気がなく、何を言っても何のアクションもしてくれない
  • そもそも上司も社員も能力が低く、仕事のやり方やスピードに難がある
  • 派遣先のお客様からもそういった評価を聞いている
  • 締切もあるのに、上司や社員があまりにもなにもしてくれないときは、仕方ないので上司の上司やお客様を巻き込んで仕事の催促をするようになってしまった
  • 最初のうちは遠慮していたが、仕事が滞るくらいならと、遠慮しない事にした

派遣先からのお話とほぼ同じ内容あり、またEさんは特に悪びれた様子もなく、どちらかというと「能力の低い人たちと仕事をするのは疲れる」というような上から目線の物言いです。

Eさんからすると、遅々として進まない仕事を進めるための対策として上司を面罵したり、上司の上司に直訴するようにメールのCCを入れたり、最終的には仲良くなった派遣先のお客様に直に上司の悪口をいったりしていて、その行為をされた側がどのように思うのかは御構いなしのようでした。

「やらない方が悪い、できない方が悪い」という印象的な台詞が会話の中に出てきて、これは私からの軌道修正は難しいなと判断しました。

Eさんの言うことがすべて間違っているわけではありませんが、上司を周りの目がある中で面と向かって批判したり、上司の上司や派遣先のお客様を巻き込んで、上司や社員批判をするというのは常識から外れています。

ひとしきり愚痴と文句が終わったようでしたので、次に今後の就業継続の意欲について確認しました。

Eさんの意思次第ですが、私としては次のように対応をしようと考えていました。

  • 不平不満や、それを本人なりに解決する手段としている行為が過激であることから、Eさんの軌道修正は難しい
  • Eさんが自ら退職を望むのであれば止めない
  • Eさんが進退を迷う場合を考えて、これまでEさんが話した不平不満を一切否定しておらず、ご本人の迷いを感じたときは「さっきEさんはこういうことをおっしゃいましたよね、私もそう思うんです。そんな問題のある職場に不満を抱えながら働くなら、新しい職場を探した方がいいんじゃないですか?」といった、これまでの発言をもとにした転職への動機付けを行う
  • もし、続けたいという意思であれば、「これだけ不平不満がある中で何でそんなに頑張ろうと思えるんですか?」というEさんの前向きさをほめつつも、先ほどの不平不満を私から再度振り返る話の流れを作り、不平不満を再認識させる

Eさんは先々辞めたいという意思で、詳しく聞くとEさんの考えは次のようなものでした。

  • 職場に不満が強いので、辞めたいと思っている
  • 仕掛中の仕事もあり、派遣先のお客様に迷惑をかけるのでひと段落してからが良いと思っている
  • 転職をしやすい時期と考えると、次の更新契約が終わるタイミングだと思うので、今回は契約を更新して、次の契約満了で終わりたい
  • これまで自分なりに前向きに頑張ってきたが、それを認めてもらえる職場ではないとわかったので、終わりまで淡々と仕事をしようと思っている
  • 仕事の手を抜くつもりはないが、前向きに新しい仕事に手を広げるつもりもない。淡々と仕事をするのに十分な仕事量があるので、働き方のスタンスがかわっても、パフォーマンスが大きく落ちることはないと思っている

Eさんの進退、スケジュール感、退職日までのモチベーションや行う業務イメージのすべてが確認できたので、この面談内容をもとに再度派遣先と打ち合わせをすることにしました。

派遣先への対応

Eさんとの面談内容を事細かに伝えると、派遣先としてはEさんの意思を受けて、今後の対応が明確になったということもあり、Eさんの希望通りでご納得を頂きました。

  • 仕掛中の業務もあり今回の契約は更新し、次の契約満期で人員を入れ替える
  • Eさんは今任せている仕事を実行してもらえるだけで十分なパフォーマンスと考えているので、前向きさがなくなり、淡々とした仕事ぶりになったとしても問題はない
  • Eさんの前向きさがなくなる分、社員とのぶつかり合いも減ることが予想され都合が良い

最後に人員の入れ替わりについて、引継を直接行う必要があるかどうかの確認をしました。

その時になってみないとわかりませんが、Eさんが後任の派遣スタッフに業務だけでなく不平不満まで引き継いでしまう可能性が高いため、引継は一旦今いる方に行い、Eさん退職後に新しい派遣社員を入れて、業務を引き継ぐ方が良いと進言し、これもご納得を頂きました。

私のホンネ

人材のご用命を頂く際に、よく派遣先から「前向きで主体的な人がほしい」と言われます。

派遣業界はクレーム産業、なぜクレームやトラブルが多いのか?対処法は?の記事でもご説明した通り、次のような派遣スタッフの特徴や人材派遣というサービスの特徴を考えると、「前向きで主体的な人」という派遣社員はなかなかいないことがわかります。

●派遣社員の特徴

  1. 雇用主である派遣会社とは、仕事を通じての人間関係や信頼関係が醸成しづらく、帰属意識やロイヤリティは生まれにくい
  2. 働き方の自由度を重視して、雇用の安定や対価を妥協して派遣を選んでいるので、正社員のような滅私奉公的メンタリティは持ち得ない

●人材派遣というサービスの特徴

  • 人材派遣とは〇〇という業務を行って欲しいという派遣先と、〇〇という業務ができるという派遣社員を派遣契約のもとでマッチングさせるサービス
  • 契約で定められた業務(業務内容)を、契約で定められた条件(勤務時間、勤務地などの就業条件)で遂行するサービス
  • 成果物責任は問われず、あくまで指揮命令されたことを遂行するサービス

人材派遣で働く派遣社員は「○○という業務を指揮命令に従って行う仕事」という理解で派遣の仕事を探し、就業を開始するわけですから、前向きで主体的にバリバリと自ら率先して働いてくれるような人を探すのであれば正社員などの直接雇用が向いているのです。

その理由は昇降格・昇降級といった人事考課があり、働く側もキャリアデザインができるからです。

前向きで主体的な方はおおよそキャリア志向ですから、派遣社員としてそのように働き始めた場合に、遅かれ早かれ、働きに対する評価や仕事の幅の問題で派遣社員が不平不満を持ち、息切れします。

今回のケースでもそうですが、人材派遣で「前向きで主体的な人」を求める職場には特徴があります。

  • 社員の能力もしくはモチベーションが低く、実務を外部人材(派遣や業務委託など)に依存している
  • マネジメントが弱く、個々の働く人たちの業務内容や業務量、成果が正しく把握されていない
  • チーム力が低く、個人商店化していて、業務が属人化している

ですので、派遣先から「前向きで主体的な人」が欲しいと言われたら要注意です。また、その派遣社員が退職してしまった後、同じような人材を求められるので、たいてい後任人選が難航するか、失注します。

派遣会社にとってあまり得のない、前向きで主体的な人案件。できれば避けたいところです。