【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】仕事中にふらっといなくなる派遣社員Fさんのクレーム対応

【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】仕事中にふらっといなくなる派遣社員Fさんのクレーム対応

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私の担当派遣社員としてJ社で1年以上働いてくれている30代男性の派遣社員Fさんですが、仕事中にふらっといなくなる事が多いということで、派遣先からクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

クレーム経緯

●Fさんはデータ入力スタッフとしてJ社で1年以上働いている

●入力スピードや正確性、勤怠などは問題ないが、お昼休憩前後で30分以上いなくなったり、トイレやお茶を買いに行くような小休憩かと思いきや、1時間以上返ってこなかったりといった事象が頻繁に見られる

●結果としての入力量や正確性は他のスタッフと大きく引けをとることはない

●他にも同業務を行っている派遣社員が数名いるが、「Fさんばかり休憩を勝手に休憩を取っているのは不公平だ」というような声が出ている

●放っておくと他の派遣社員のモチベーションや職場の風紀にもかかわるので雇用主として派遣会社から本人に注意し、改善を図ってほしい

対応のポイント

派遣先への対応のポイント

派遣先J社はデータ入力という業務を行ってもらうために、データ入力の経験・スキル・適正を持った人材に1時間あたりいくらという形で派遣会社に支払いをしているのです。

極端に言えば、派遣先にとってはその人材がFさんであろうが他の人間であろうが関係はなく、Fさんに何かしらの事情があったとしても、支払いを行なっている時間=勤務時間に業務を行っていないということは許されません。

今回は「Fさんが働いていない時間は支払わない」というような強硬なクレームにはなっていませんが、そう主張をされても反論の余地はないのです。

派遣会社の営業担当が頭に入れておくべき対応のポイントは次のようなものになります。

  • 派遣契約は「○○という業務を○○の経験・スキルのある人材に実施してもらう」という契約である
  • 派遣契約は出来高見合いの契約ではなく、契約で定めた時間に執務をするという契約である
  • 派遣契約で求められているのは「○○の経験・スキルのある人材」であって属人は指定されていない

派遣社員への対応のポイント

派遣先と派遣会社が派遣契約という商契約の関係であるのとは違い、派遣社員と派遣会社は期間を定めた有期の雇用契約関係にあります。

雇用契約で定めた就業時間に執務していないということは、雇用契約に反することでもあり、またその間も時給が支払われているということであれば「業務怠慢」ということになるのです。

派遣会社の営業担当が頭に入れておくべき対応のポイントは次のようなものになります。

  • 派遣先からの指摘を全て鵜呑みにするのではなく、「派遣先からこういった指摘があったが実際はどうなのだろうか?」といった両者に中立な姿勢が必要
  • 何かしらの事情があった場合には、その事情に合わせて勤務時間を短縮してもらったり、無給の休憩時間を増やしてもらうといった派遣先との交渉・調整を行う
  • 本人の怠慢からくる業務怠慢であった場合は厳重注意を行うとともに、今後も同様の事案があった場合には然るべき対応を行うことを警告する

対応経緯

派遣先に詳細のヒアリングを行う

今回のクレームはFさんが勤務時間中に不当に休憩をとっているという内容であり、その理由にかかわらず執務をするべき時間に執務をしていないという意味で、Fさんに注意を行うことは間違いありません。

Fさんからの反応がどのようなものになるかわかりませんが、仮に「私は勤務時間中にサボってなんかいません!派遣先の言うことを鵜呑みにして一方的に注意してくるなんておかしい!」などとすべてを否定するような反論を想定した場合に、事前に派遣先から詳細な状況や証拠がないかといったヒアリングを行なっておくことが重要です。

これは派遣社員との面談時にも有効であるばかりでなく、派遣先の本件クレームに対する温度感を確認したり、今後の対応について認識合わせをするといった意味でも有効なのです。

私は派遣先J社のK係長に訪問し打ち合わせが始まります。

まずは指摘を頂いたFさんの不当な休憩について詳細をヒアリングします。

  • 「気がつくとFさんがいない」ということが頻繁に起きだしたのは、ここ数ヶ月くらい
  • 昼休憩は1時間だが、前後に10分〜20分職場に帰ってこないことが常態化している
  • 毎日ではないが、午後には1時間程度急にいなくなることがある
  • メンバーには適時5〜10分の休憩を取ってもらっているのだが、複数名から「Fさんが休憩時間以外に職場からいなくなったと思ったら、ビルの周りをウロウロと歩き回っていた」という証言がある
  • 実は1名の他の派遣会社の人が「サボってばっかりいるFさんと同じ時給で働くなんて耐えられない!」と最近退職した
  • 職場ではFさんのサボりグセは周知の事実で、皆のモチベーションが下がっている

状況は思っていたよりもかなり深刻で、Fさん自身のだけでなく他の派遣会社の派遣社員にまで迷惑をかけているようです。

「こんなにひどい状況なのに、本人への注意だけでいいなんて、ずいぶん優しいお客さんだな」と感じてしまうくらいです。

K係長に私の考えている今後の対応を伝えます。

  • ご指摘の点踏まえて、本人に注意面談を行う
  • 一方的な注意をすると感情的になったり、居直ったりする可能性もあるので、まずは中立的な立場でのヒアリングから入るつもり
  • 本人が業務怠慢を一部でも認めた場合は今後同様の事案がないように厳重注意を行うが、お話を聞くかぎりかなり悪質なようなので先々の雇い止めを踏まえた対応をしたい
  • 具体的には注意とその後の改善結果の検証を複数回繰り返すことにより、本人が雇い止めを不服として訴え出た際のこちら側の反論の論拠として履歴を残していくということ
  • Fは当社の社員であり、御社と雇用契約はないが、最近の労務トラブルは派遣先を巻き込む形になることが多く、労務トラブル回避のためにご協力を頂きたい

最後に聞きずらいなと思いながら、K係長に確認をしておきたいことがありました。

「大変お聞きしずらいのですが、これから本人への注意面談を行う中で、ご指摘の業務怠慢について何か証拠になるようなものはありませんか?」

「写真とか入退室データなどだけでなく、『Fが○月○日○時〜○時に業務時間中にもかかわらずいなかった』といったメモでも結構なんです」

予想通りK係長は気色ばんで言い返してきます。

「それってウチがFさんがサボっていた証拠を示さないと対応ができないってことですか?」

よくある切り返しに、私は少し慌てたふりをしてお話しします。

「いえいえ、違うんです。誤解をさせてしまったら申し訳ありません」

「あくまでそういったものがあると、本人も反論ができないなということでして」

「皆さんが始終Fを監視しているわけでもありませんから、そんなものがないのはわかっています。ただ、もし今後お手間でなければ、彼が業務怠慢をしていた日時や状況をメモ程度で結構ですので記録しておいて頂きたいんですよ。のちのち訴訟などになった時に有効なんです」

あまり派遣社員の対応に慣れていないK係長は「派遣会社の社員であるFさんの業務怠慢をなぜ当社が立証しなければいけないのか?」という点で引っかかっているようです。

その感覚は至極当然なのですが、私は「あっせん」や「労働審判」などでの調停、訴訟での判決など例を出して、圧倒的に労働者に非があると感じられる状況でも法は労働者を守るスタンスであること、それを前提とした対応が必要であること、派遣での労務トラブルでは雇用主である派遣会社はもちろん派遣先も矢面に立つことが多いことを噛んで含めるように説明し、ご納得を頂いたのでした。

これらの作業は一見無駄なように感じられるかもしれませんが、のちのちのトラブル解決においては派遣先の理解や協力は不可欠であり、怒られながらもスタンスを合わせておくことは重要なのです。

長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。

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