【続編⑨】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】辞めたのに入館証をなかなか返さない派遣社員Kさんのクレーム対応

【続編⑨】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】辞めたのに入館証をなかなか返さない派遣社員Kさんのクレーム対応

←前編①   ←前編②   ←前編③

←前編④   ←前編⑤   ←前編⑥

←前編⑦   ←前編⑧   →続編⑩

→続編11  →続編12  →続編13

→続編14  →続編15

私の担当派遣社員としてT社で2週間前に就業介した30代男性の派遣社員Kさんですが、色々な経緯の中で派遣先のT社を契約途中で退職したのに、なぜか貸与されている入館証を返さないという状況が続き、派遣先からクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

対応経緯

派遣社員Kさんの自宅に訪問

近所の方らしき老人から「もしもし、どうしたんですか?」と声をかけられ、少し動揺します。

思えば、Kさんの自宅周りをウロウロし始めてから、チラチラと目線に入っていたご老人なのでした。

きっと不審者だと思われたのでしょう。私は名刺を差し出しながら説明をします。

「私、○○という会社の者なのですが、当社の社員のKさんが連絡が取れなくなってしまいまして」

「住所はここだと思うんですが、一階には人気がないので上の住居の方にいるのかなと思って、二階に上る階段を探していたんです」

訝しげな表情で私を見ていたご老人ですが、事情を説明すると納得したようでした。

「Kさんのご両親にも連絡をしてるんですが、そちらも連絡がつかなくて。安否が確認できないので心配してるんです」

私が困りきった様子で話をすると、ご老人は話好きなのか堰を切ったように話し始めます。

  • Kさんは今もこの家に暮らしている
  • そこの路地から裏手に回ると二階に上る階段がある
  • Kさんのお母さんは随分前に他界していて、お父さんは存命なのだが、たしか痴呆がひどくて施設に入ったと聞いている
  • Kさんの兄弟が面倒を見るという話で、たしか地方の施設だったはずだ
  • もともと工場をやっていた家なので地域のつながりは強く、Kさんは町内の催しに顔を出し手伝いをしてくれる

ご老人から色々な情報をもらうことができました。なんといいますか・・・個人情報もなにもあったものではありませんが、私にとってはありがたい限りです。

Kさんの緊急連絡先である肉親の電話番号が地方の局番であったのはKさんのご兄弟の電話番号だからなのでしょう。

留守番電話の機能もないので、東京からの見慣れぬ番号からの着信を怪しんで電話に出てくれないのかもしれません。

そうなればなんとかして直接Kさんに会うしかありません。

まずは二階の自宅を捜索してみましょう。雑草を掻き分けながら薄暗い路地を進み、裏手に回ります。

なんの工場であったのか、辺りには材料らしき鉄筋やトタンのようなものが雑然と置かれ、大きな脚立が行く手を阻みます。

錆びて端が欠けてきている頼りない階段を登り、なんとか二階に。

古い木造アパートによくあるような木目の模様の薄っぺらい玄関ドアにたどり着きます。

中から物音はしません。

チャイムを何度も鳴らしてみますが、全く反応はなし。

試しに玄関ドアに耳を近付けてKさんの携帯電話番号に電話をしてみますが、室内から着信音やバイブレーションの音は聞こえないのでした。

先ほどのご老人の証言や電気メーターがずっと動いていることからKさんがここに住んでいるのは間違いないようです。

仕方ありません。今日のところはKさんの自宅が突き止められただけで良しとしましょう。

名刺の裏に「ご連絡が取れなくなって心配しています。貸与物の回収もあり、早急にご連絡をください」とメッセージを書き、玄関ドアの目線の位置にセロハンテープで貼り付けます。

そして、Kさんに次のようなメールを送りました。

ご退職の御意思を受けて、退職処理を進めさせていただいておりますが、T社より貸与された入館証を早期に返却して頂きたいと考えております。再三ご連絡を頂くよう御電話やメールを致しましたが、折り返しもないためご自宅を訪問させて頂きました。本日はいらっしゃらないようでしたので、また改めてご訪問をさせて頂きます。メールをご覧になっていない可能性も考え、玄関ドアにメッセージを貼ってありますので、ご確認ください。よろしくお願いいたします。

Kさんにとっては気分の悪いメールでしょうが、私も好きでやっているわけではありません。

まるで警察か探偵のようですが、入館証が回収できるまで根気比べでKさんに負けるわけにはいかないのです。

派遣先のO部長に実況中継

派遣会社として派遣先から貸与されたセキュリティー上重要な品である入館証を回収して返却するのは当然の義務です。

今回のような退職後に回収が難航したケースで、派遣社員が独自の判断で入館証を捨ててしまったケースがありました。

「勝手に捨てるなんて信じられない!派遣社員とはいえ、どのような社員教育をしているのか!?」

怒るのは当たり前、取引中止はもちろん、大炎上をしたのでした。

私の担当案件ではありませんでしたが、社内でそのような事例も聞いているため、最悪Kさんが勝手に入館証を捨ててしまっていたり、どうしてもKさんにたどり着けず、回収ができないといった事態も考えられるのです。

そのような事態を予見して行うべきは、都度の派遣先担当者への報連相です。

自宅訪問をした際には、できればその場で実況中継のように報告をするのがよいでしょう。

相手も人間ですから、こちらが身を削って努力をしていることを理解してもらえれば、必ず妥協点を示してくれるのです。

実はさきほどKさんの自宅を捜索している間も、派遣先のO部長と電話をしながら実況中継をしていたのでした。

「部長、近所のご老人にお話をうかがったら、路地から建物の裏手に回って二階の階段に上がるってことだったんですが、薄暗い細い路地でなにかの部品が散乱していて、あんまり人が住んでいるって感じではないんですよ」

「部長、いま私の私用の携帯でKさんに電話してみたんですが、なかから着信音やバイブの音は聞こえないですね」

「部長、やはりKさんはいないみたいなので、今度は夜に再度訪問をしてみます」

第三者から見れば馬鹿馬鹿しい限りですが、暑い夏の盛りに、私が大汗をかきながら探偵さながらに入館証をなんとか回収しようと努力をしていることを理解してもらわなければいけないのです。

長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。

更新情報はTwitterに配信しています。

←前編①   ←前編②   ←前編③

←前編④   ←前編⑤   ←前編⑥

←前編⑦   ←前編⑧   →続編⑩

→続編11  →続編12  →続編13

→続編14  →続編15