【続編⑩】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】辞めたのに入館証をなかなか返さない派遣社員Kさんのクレーム対応
私の担当派遣社員としてT社で2週間前に就業介した30代男性の派遣社員Kさんですが、色々な経緯の中で派遣先のT社を契約途中で退職したのに、なぜか貸与されている入館証を返さないという状況が続き、派遣先からクレームがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
Kさんの最初の自宅訪問は空振りに終わってしまいました。
しかしご近所の方の証言で、Kさんが自宅に今も住んでいること、もともとは実家だったが父親は地方に住む兄弟の家の近くの介護施設に暮らしていて連絡は取れないことがわかりました。
つまりはT社から貸与されている入館証を回収するには、Kさん本人をなんとか捕まえるしか方法がなさそうです。
何のつもりで入館証を返却しないのかわかりませんが、何度も何度も電話やメールをし、何度も何度も自宅を訪問して、Kさんが根を上げて自ら返却をするように追い詰めていくのです。
SNSで派遣社員Kさんの近況を探る
さて、Kさんの自宅を訪問するにしても、あまりにあてずっぽうに訪問をしたのでは効率が悪すぎます。
そこでダメでもともと、SNSでKさんを検索してみることにしたのです。
最近はどの世代もFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSを利用しています。
かくゆう私もそうですが、自分の近況を常に発信している人も多いのです。
昨今の派遣業界では派遣社員の中心となる年齢層は40歳前後、この世代は感覚的にFacebookとTwitterの利用率が高い世代です。
Twitterは匿名性の高いSNSですが、Facebookは震災の影響で実名で投稿をしている人も多く、ライフログを追うには好都合のSNSと言えます。
実際、私の担当の派遣社員でも「すみません・・・今日体調が悪くてお休みします・・・」といっていた方が、職場のメンバーとFacebookで繋がっていて、当日旅行先での写真をアップしているのを見つけられ気まずい思いをしたというような笑い話をよく聞くのです。
KさんのフルネームをFacebookで検索すると、何人か同姓同名のアカウントが表示されます。
「いくら利用者の多いFacebookでも、さすがにKさんを探し当てるのは無理か・・・」
と諦め半分で調べていると、アイコンに動物を抱えた人の写真が使われたアカウントを見つけます。
ん?そういえばKさんはウサギを飼っているといっていたような・・・
写真を拡大し、よくみてみるとウサギを抱えた男性らしき社員。顔は写っていません。
さらによく見てみると、ベージュのヨレヨレのカーディガン。
KさんがT社に勤めているときに見たあのカーディガンです。
同姓同名、ウサギ、カーディガン、この3つが揃えばおそらくKさん本人と判断して良さそうです。
「よし、尻尾をつかんだ」
私は早速、彼の投稿を調べます。
一番直近の投稿は昨日。
ちょうど私が彼の自宅にいた頃のようです。
顔は写っていませんが、友人らしき男性数人とスパの食堂らしき場所でビールジョッキを片手に乾杯をしている写真・・・ウェーイな感じです。腹立たしい。
Kさんを驚かせるために、私の実名のアカウントで友達申請したい誘惑に駆られましたがやめておきます。
その後もKさんの投稿をみるに、T社を辞めたあと、まだ働いてはおらず、どうやらここ数日は遊び歩いているようでした。
Facebookの投稿も参考にしながら、自宅を訪問する時間を選べばKさんに会うことができそうです。
さらに投稿を遡っていく中で、Kさんのご両親は自宅周辺にいくつか不動産を持っており、一定の家賃収入があるようでした。
彼は家賃もかからない実家に暮らし、不動産の管理、というか掃除などをしていくばくかお小遣いのようなものをもらっているようです。
頻繁に一人旅に行っているようで、要するにお金に困っていない人なのです。
過去の投稿には「暇つぶしに働くか〜」といった投稿もあり、金銭的な余裕もあって気ままに働いているという印象です。
それにしてもFacebookをはじめとしたSNSは怖いものだと感じました。
今回のように必要に駆られて第三者に調べ上げられた場合、投稿の内容によっては随分と個人情報を得ることができるのです。
まったくもって好きでやっているわけでもありませんが、自分も気をつけなければと強く感じるのでした。
派遣社員Kさんの自宅に2回目の訪問
Twitterと違い、Facebookは頻繁に投稿をするというSNSでもないためか、翌日朝にKさんの投稿はありません。
自宅の場所もわかっていることですし、今度は部屋の明かりでKさんがいるかどうかわかりやすい夕方以降に訪問をしてみたいと思います。
夏の盛りの夕暮れ、日は落ちたものの、まだ辺りは蒸し暑く汗が噴き出します。
やっとのことで駅からKさんの自宅近くまで来ると、彼の家に明かりが灯っています。
これでやっとKさんに接触をすることができそうです。
私は歩みを少し早めつつ、ポケットからスマートフォンを出し、電話をかける準備をするのでした。