【続編14】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】辞めたのに入館証をなかなか返さない派遣社員Kさんのクレーム対応
私の担当派遣社員としてT社で2週間前に就業介した30代男性の派遣社員Kさんですが、色々な経緯の中で派遣先のT社を契約途中で退職したのに、なぜか貸与されている入館証を返さないという状況が続き、派遣先からクレームがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
派遣社員Kさんからヒアリング
不本意ではありましたが、「入館証を捨てた」というKさんを脅したりすかしたりしながら、なんとかT社へ提出をする顛末書の経緯部分の聴取と本人直筆の反省文を書いてもらうところまで合意が取れました。
このような薄氷の上で行われた合意の実行に時間をおいてはなりません。
「着替えていただいて、近くの喫茶店に行きましょうか?」
すぐにKさんに着替えを促し、Kさんの自宅近くの喫茶店を探します。
すでに時刻は21時。
めぼしい喫茶店は閉店し、結局ファミリーレストランに入ります。
「早速なんですが、Kさんが入館証を捨てた経緯を事細かに教えてもらえますか?」
顛末書(案)
2019年○月○日
T株式会社
株式会社○○
○○
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
この度、弊社派遣社員が貴社より貸与された入館証を廃棄してしまったという事案につきまして多大なるご迷惑をお掛け致しましたことを深くお詫びいたします。
事案の経緯、原因および再発防止策につきましてご報告をさせて頂きます。
【事案の経緯】
2019年○月○日まで貴社で派遣社員として就業をしていた弊社派遣社員Kは、本人意思により突然に退職を弊社に通知し出社をしなかった○月○日に下記のような経緯で貴社より貸与された入館証を廃棄した。
○月○日 6時
弊社営業担当に退職の意思を示したショートメールを送信
○月○日6時過ぎ
メール送信直後にK自身の判断で自宅のゴミ箱に廃棄
○月○日8時過ぎ
自宅より15メールと程離れた場所にあるゴミ集積所に他の生活ゴミと一緒に自治体指定のゴミ袋に入れ廃棄
○月○日9時過ぎ
ゴミ収集車から流れる音楽でゴミが収集されたことを確認
○月△日20時ごろ
弊社営業担当が入館証回収のためKの自宅に訪問し面談を行った際に本人から「入館証を捨てた」という申告があり事案の発生を確認
【事案の原因】
・「派遣会社を退職し、派遣先であるT社で就業をすることもなくなったので、必要のないものだと思って廃棄した」というK本人の証言から、貸与をされたものは返却をするといった社会人として当然の常識が欠如していた
・本人の社会常識の欠如はありつつも、弊社社員として情報セキュリティーに関する教育・指導が不十分であった
【再発防止策】
・弊社派遣社員Kについては既に退職をしているが、本件から見られる社会常識の欠如を勘案し、今後弊社と雇用関係が結ばれることはない
・本件については厳重注意を行うとともに、本人より反省の弁をまとめた書類を提出させている
・同様の事案が発生しないよう、貴社で就業する弊社派遣社員全員に対してセキュリティー研修を実施し、セキュリティ意識の向上を図る
派遣社員Kさんにヒアリングをしながら顛末書を作成
深夜のファミリーレストランで寝癖でボサボサ頭のKさんと2人、ヒアリングをしながらノートパソコンで書類に仕上げていきます。
悲しいことに、この手の書類を作るのは慣れていて、その場で即興で作ることができるのです。
ボソボソと話すKさんに細かく経緯を聞きながらポイントを絞っていきます。
また入館証廃棄の原因については、この後Kさんに書いてもらう反省文の下地になるものですから、認識を合わせながら作り込んで行く必要があります。
貸与されたものを勝手に捨ててしまうというKさんの「社会人としての常識のなさ」に尽きる事案ですので、そうとしか書きようがありません。
彼が書く反省文も、自分の「社会人としての常識のなさ」について表現を変えて書いてもらうのです。
また、この手の書類では一方的にKさんだけを悪者にすることは得策ではありません。
当時、当社の雇用契約の元にあったKさんは、当社の社員であり、その社会常識のなさは本来当社が教育・指導を行うべきものなのです。
そういった意味でKさんへの事前の情報セキュリティーに関する教育が徹底していれば防げたかもしれない事案であり、当社として反省を示すべきポイントです。
なんとか顛末書の下書きを終え、Kさんが反省文を書くためのポイントも整えて、私のパソコンを差し出します。
主体はKさんではありますが、あまりに文章が拙いため30分ほど横につきっきりで指導し、なんとか反省文を書き終えました。
この時点で23時半、そろそろ終電が心配です。
一体自分が何のためにここにいるのかわからなくなるほど徒労感に苛まれつつも、近くのコンビニで文章をプリントし、署名欄にKさんにサインしてもらい、一応の体裁を整えることができたのでした。
さて、明日は朝一番にO部長に連絡を取らなければいけません。
うんざりしているKさんを解放し、私も明日のことを考えながら暗い気持ちで帰路を急ぐのでした。
長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。