【続編②】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「派遣先の社員から脅迫された!」と損害賠償を請求してくる派遣社員Jさんのクレーム対応
私の担当派遣社員としてD社で就業スタートしたばかりの40代女性の派遣社員Jさんから、「派遣先の社員から脅迫された!」という訴えとともに、派遣先と当社を相手取って損害賠償を請求するというトラブルがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
派遣社員Jさんとの面談
派遣先D社のB課長から状況のヒアリングをしたものの、Jさんが業務指示に対して「そんな仕事はまだ一人ではできない。それでもやれというのは脅迫ですか!?」などという極端なコメントをした理由はわかりませんでした。
さらには抗議をする中で金切り声を上げたという話もあり、周りの人たちからすると「得体の知れない入社2週間目の派遣社員」という認識になっており、Jさんはすでに居場所を失っているようです。
いずれにせよ真意はJさん本人に確かめるしかありませんが、B課長の話のニュアンスから察するに、よっぽどの急展開でも無い限り、この職場でJさんが気持ちよく仕事をできる環境はなさそうです。
B課長に会議室をお借りし、Jさんを呼んでもらいます。
私もJさんとは就業初日の同行と、数日後の電話での仕事状況のヒアリングくらいしか接点はありません。
これまでのやり取りでは「真面目でおとなしい人」くらいの印象でしかなく、こうして会議室に来てもらうことにしたものの、B課長からめぼしい情報も得られなかったことから、ほぼノーアイデアで彼女を迎えることになってしまいました。
B課長に促されてJさんが入室してきました。
硬い面持ち。さてどう切り出しましょうか?
「Jさん、仕事中に突然お呼びしてすみません」
「Jさんがここでの仕事の進め方でご意見があったと聞いたものですから」
まずはこちらから細かい話はせずに、Jさんの出方を探ってみましょう。
「私のことをどんな風に聞いているんですか?」
Jさんが質問をしてきました。
「いや、細かいところまでは聞いていないのですが、少なくとも先週の引き継ぎを終えて、今週からある程度一人称で仕事をしてもらう中でご不安の声があったようだと聞いていますよ・・・」
もう少しJさんの様子を探ってみましょう。
こちらからペラペラと話して揚げ足を取られるのはよくありません。
「そうですか・・・実は私、ここの社員のFさんから脅迫されたんです!」
・・・またずいぶんと極端な言葉を言い出しました。
これまでの経験の中でもわざと極端な表現をして、過度に謝罪や有利な条件を引き出そうとする人達はいました。
この手の表現をする人達への対応のポイントは「相手の土俵に乗らない」ということです。
なにがあったのか知りませんが、「脅迫」という単語に匹敵するような出来事があったとは到底思えません。
真偽は後々明らかにするにして、今後のやり取りの中で「脅迫」という単語をそのまま使わせ続けることは、いわば相手の土俵に乗ったことであり、Jさんとの会話の中での「脅迫」という単語の意味についてきっちり定義をしておかなければならないのです。
「Jさん、何があったかはきちんとお話をお伺いさせていただくにしても、職場を含めた日常生活の中で『脅迫』なんていう単語はそうそう登場しませんよ?その言葉の重みを考えて発言されていますか?」
するとJさんは数秒押し黙り、目線を足元に落とします。
じっと足元を数秒間眺めていたかと思うと、徐々に徐々に目線を私に戻してきます。
その表情がさっきとまるで違うのです。
なんと表現をしていいのか、目が座っているというか、表情があるようで無いというか。
「・・・あなたは私のいうことを信じていないんですね・・・」
「信じているもいないも、これからお話をおうかがいしようと思っているんですよ。ただ、脅迫という表現は普通じゃ無いと考えを伝えただけです」
感情を押し殺したようなJさんのコメントに少し怯えながらも、私は冷静に反論をします。
「だって、社員のFさんは引き継いだばかりで右も左もわからない私に、『いいからとりあえずやってみてください』っていうんですよ!これが脅迫じゃなくてなんだっていうんですか!!」
いきなり大きな声を出したJさんにびっくりして不覚にもビクッと体を震わせてしまいました。
それにしても「いいからとりあえずやってみてください」といったから脅迫とは・・・今までの職場でどんな風に仕事をしてきたのでしょうか。
「ちょっと、Jさん。突然大きな声出さないでもらえますか?びっくりするじゃないですか」
「あと、『いいからとりあえずやってみてください』と言われたら脅迫だなんて聞いたことありませんよ。なにか個室に連れられて二人きりの状況でそう言われたとか、そういった特別な環境下での話ですか?」
Jさんがどんな人なのかまだ掴みかねますが、普通でない言い分からして一筋縄では行かないことは確かのようです。
Jさんがこちらの反論を許さないような強硬な主張をして「ごね得」を狙っているような人物であった場合、今時点から私は彼女に舐められるわけにはいきません。
まずは「突然大声を出したこと」に抗議をしました。
これは後々も大声で私を威嚇しようとした時、または職場でそのようなそのような振る舞いをした時に、「この前注意をしましたが仕事の場で突然大声を出すようなことはやめてください」と注意をするきっかけになります。
また、『いいからとりあえずやってみてください』という発言は脅迫には当たらないと明確に否定をしました。
Jさんの剣幕に臆せずにその場その場できっちり「違うことは違う」と主張することが大切なのです。
Jさんがごね得を狙うような輩であった場合、「この前は『いいからとりあえずやってみてください』という社員の発言は脅迫に当たるという私の訴えを否定しなかった」と必ず揚げ足を取ってくるからです。
私の考え過ぎかもしれませんが、Jさんはこれまで私が経験した中でも結構な難物である予感がします。
一言一句に注意を払って対応をすることが重要なのです。
長くなりましたので、続きは続編とさせて頂きます。