【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】自分から辞めたいと言ったのに、あとから「不当解雇だ!」と主張する派遣社員Iさんのクレーム対応
私の担当派遣社員として派遣先のK社に勤務してくれている50代男性のIさんですが、自分から退職を申し出たのに、私の勤める会社のあらゆる部署に「不当解雇された!無理やり退職の書類を書かされた!」と苦情の電話を入れまくるというトラブルがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください
クレーム経緯
●派遣社員IさんはK社で約1年、データ入力やファイリング作業で就業している
●派遣社員Iさんの仕事ぶりに対するお客様の評価は平均的。しかし、私語が多く、周りのメンバーの作業の手を止めるため、私語を慎むように注意をしてほしいという派遣先からの依頼があった
対応経緯
派遣社員Iさんとの面談
派遣先からの指摘を受け、Iさんと面談を行い、事情を聞きました。
- 指摘の通り、多少の私語はしている
- だが他の人も私語はしていて、私だけが注意されるのは納得いかない
- 自分としては職場で必要最低限のコミュニケーションだと思っていて、それを頭ごなしに否定されるなら辞めたい
Iさんは私より年上の男性ということもあって、年下の私に「私語を控えろ」なんていう基本動作を注意されるのはプライドが傷つくかな?と思っていたので、事情を聞いただけで、頭ごなしに注意はしていなかったつもりなのですが、かなり感情的に言葉を返してきて、勢いなのか、辞めたいとまで言ってきました。
ひき止めようか迷いましたが、派遣先の話によると、周りのメンバー数人から「Iさんに話しかけられると迷惑だが、遮ると不機嫌になるので付き合うしかなかった。仕事の手が止まって、自分の評価も下がるので迷惑」との意見があったようで、Iさんが私語を認めつつも、反省の弁や改善の意思表示もないことから、同じことの繰り返しになると感じ、退職の意思に対して引き止めはしないと判断しました。
Iさんに「そうですか、残念ですが、ご意思は固いんですか?」と聞くと、次のような言葉が返ってきました。
- なんの事情も聞かずに、頭ごなしに注意するような派遣先や派遣会社はこっちから願い下げ
- 職場のメンバーも、あんたの顔も二度と見たくないので、今すぐ辞めたい
- 退職が理由で、給与が払われなかったり、不利益があったら、すぐに訴える
「訴えるぞ!!」と声高に言う人が訴えてきた試しがないので、そこは気にせず、退職によって制裁的な意味合いでの不利益はないことを説明し、即日の退職については派遣先の同意も得たいことを説明しました。しかし、Iさんの抗議は止まりません。
- 雇用契約は派遣会社と結んでいるものなので、いちいち派遣先の許可が必要というのはおかしい
- なんでもかんでも派遣先の言いなりなのか?今回の私語の件も私だけが注意されるのはおかしい、派遣先のでっち上げではないのか?そのでっち上げをおたくが真に受けているだけなんじゃないのか?
雇用契約に関して、派遣先の意見を参考にするのは不当なことではありませんが、この調子で職場に戻られても派遣先も迷惑なだけだと感じました。
仕方なく、派遣先への説明は後回しにし、入館証などの貸与物を回収し、自己都合退職である旨の一筆を頂き、退職に関する事務処理は郵送で行うことを約束し、Iさんは会議室から、そのまま帰宅しました。
その後、派遣先にIさんとの経緯を説明し、変に揉め事になるよりは即日の退職で良かったとご理解を頂きました。
私としてはこれで一件落着だと思っていたのですが、そうではなかったようです・・・
派遣社員Iさんから、私の会社のあらゆる部署に苦情の電話
翌朝、自宅から派遣先先に向かっていると、本社の派遣社員向け相談窓口の担当者から電話がありました。
Iさんが、私の会社のホームページに電話番号が載っているあらゆる部署に、ありもしない苦情の電話を入れまくっていると言うのです。
苦情の内容は次の通り。
- おたくの営業担当の●●(私のこと)が、自分を恫喝して無理やり解雇した。無理やり退職の書類を書かされた
- ●●(私のこと)は自分が勤めていた派遣先の派遣社員にひどいパワハラや、セクハラをしている
- おたくの会社はそんな問題社員を雇っていてどう言うつもりなのか?
- 無理やり解雇されたので、損害賠償として100万円払え
- ユニオンにも相談して、派遣先の職場に乗り込むつもりだ
などなど、ありもしないことを言いたい放題、やりたい放題です。
私とあまり縁のない、地方の支店にまで私の名前を出して、ありもしない苦情の電話を入れるので、電話を受けた方は事情もわからず、とりあえずお詫びするしかありません。
社内の色々な方に迷惑をかけました。
上司や役員とも相談して、次のように対応することにしました。
- 役員から全社員に向けて私とIさんのトラブルに対する正確な情報を発信し、今後Iさんから電話があった場合は、一切話は取り合わず、本社窓口に連絡するよう伝える
- 顧問弁護士に相談し、この状況が営業妨害に当たると確認した上で、本社窓口から本人に、これ以上の営業妨害をした場合は警察に通報すると警告する
- 合わせて、最寄りの警察署に相談し、事情を説明して、営業妨害であることを理解してもらった上で、今後Iさんから同様の行為があった場合には、警察からIさんに注意の電話を入れてもらうように根回しする
以上の対策を打ち、翌日を迎えました。
思った通り、Iさんはまた私の会社の地方の営業所にありもしない苦情の電話をかけてきます。
電話を受けた営業所は社内周知の通り、何を言われても本社窓口に連絡するように伝えると、思った通り、Iさんから本社窓口に電話をしてきます。
そこでトラブル対応に長けた社員が本人に次のように話しました。
- Iさんが当社の各所に伝えている苦情を全て把握しているが、内容に一貫性がなく、不正確な内容だと感じている。なにかお考えやご意見があれば、●●(私のこと)を交えてお話を聞きたいと思うがどうか?
- Iさんが当社の各所に連絡をされているが、内容からして営業妨害に当たると考えている。これは顧問弁護士に相談しての見解である
- この営業妨害が続くようであれば警察に通報する考えである
- 以上は当社としての見解であり、当社のどの者に確認してもらっても変わるものではない
本社窓口から聞くと、「弁護士に相談」「警察に通報」というワードにかなり反応して激しく逆上したそうです。
が、その辺りの対応には慣れた社員ですので慌てることもなく当社の見解を繰り返し、最終的に本人の主張は次のようにまとまったようでした。
- 自分の主張は正しい。おたくは弁護士や警察権力を傘にきて弱者をいじめるブラック企業だ
- 営業妨害はしていないが、おたくの見解がそのようなことなら色々な部署に電話しても仕方ない
- なので、●●(私のこと)と直接話をする。他に誰も同席させないと約束しろ
私としては直接対決は望むところで、むしろ一人のがやりやすいのですが、顧問弁護士まで関わった今回のケースでは本社も口出しせざる得ないようで、半ば強引に本社トラブル対応担当者+私というメンバーでの話し合いをIさんに合意してもらったようです。
派遣社員Iさんとの話し合い
日を決めて、Iさんには私の在籍する営業所に来てもらい、Iさんと本社トラブル対応担当者、私の3人で話し合いをする事にしました。
本人より話し合いを録音したいとの申し出があり、お互いに録音をすることとしました。
まず私たちからIさんに次のことを伝えます。
- K社での派遣就業を前提とした雇用契約については、Iさんからご自身の判断で退職をされたと理解している
- 当社からすると、Iさんが雇用契約の途中であるにも関わらず、話し合いに応じずに一方的な主張で、強行に雇用契約を解約することを申し出て、状況から当社がそれを飲まざる得なかったと理解している
- Iさんが当社の各所に伝えている苦情を全て把握しているが、内容に一貫性がなく、不正確な内容という見解である
- Iさんが当社の各所に連絡をされているが、内容からして営業妨害に当たると考えている。これは顧問弁護士に相談しての見解である
- 本日の話し合いの後もこの営業妨害が続くようであれば警察に通報する考えである
話と合わせて、Iさんが提出した退職願いと退職書類をテーブルの上に置きました。
私達からの話に対してIさんの主張は次のようなものでした。
- ●●(私のこと)は私に無理やり退職願いを書かせた。なので、この退職願いは無効だ
- すでにしかるべき相手にこの件を相談しているが、●●からされた退職強要やパワハラ、職場の同僚の女性派遣社員に行ったセクハラは許されるものではない、おたくの会社はなぜ私のの話を信じずに●●を解雇しないのか?
- おたくの会社の各部署に電話をしたのは、あなたたちが私の話を信じないから、話を信じてくれるところを探していただけで、営業妨害ではない
- 今回の話し合いでも、私の話を信じてくれないのであれば、またおたくの会社の中で信じてくれる人がいるまで電話なり、訪問をするつもりだ
Iさんの事実無根で勝手な主張にあきれ果て、本社のトラブル対応担当者と顔を見合わせて半笑いしてしまうくらいでした。
1時間程度話は続きましたが、お互いの主張が全くかみ合わないので、話は進みません。
結局、折り合いがつかないまま物別れとなりました。
翌日から派遣社員Iさんの営業妨害が再開
話し合いが物別れに終わったことで、Iさんの予告通り、翌日から全国の営業所に、Iさんからの電話がかかり続けました。
全国の営業所といっても、そんなに数があるわけではないので、1つの地方営業所に1日に何回も電話がかかってくるような始末で、1回の電話で30分程度一方的に自分の言い分を主張するといった具合でしたので、いよいよ営業妨害といった様相です。
全国の営業所には、役員から私とIさんのトラブルに対する正確な情報を発信し、今後Iさんから電話があった場合は、一切話は取り合わず、本社窓口に連絡するよう伝えてありますので、Iさんの主張を真に受けるようなことはなく、また可能な限り記録をするなり、録音をするなりといった証拠を残す動きも取ってもらいました。
Iさんからの営業妨害が再発して2日目、事前に相談をしておいた最寄りの警察署に役員、上司とともに訪問し、証拠のメモや録音データを渡して、どのように対応をしたらよいか相談をしました。
警察からのアドバイスは次のようなものでした。
- まずは警察からIさんに電話で厳重注意をする
- 電話番号などの個人情報の警察への提供については本人の許可を取る必要はないが、できれば事前に本人にメールなどで通知をしておいてほしい
- 電話での厳重注意でも改善されない場合は、本人宅に出向くか、署に出頭させる
- いずれにしても立件などはせずに、警察が間に入ることで、話し合いで解決されるようにしたいと思う
私どもも当事者同士の話し合いでの解決を望んでいましたので、警察からのアドバイス通り、Iさんに警察に通報をしたこと、そのために警察からIさんに連絡が行くことをメールで伝えました。
警察から厳重注意の後の派遣社員Iさんは・・・?
警察から連絡がある旨のメールを送った翌日、Iさんからのメールの返信もなく、また私の会社への営業妨害電話もありませんでした。
数日経って、Iさんより次のような主旨のメールが届きました。
- 御社との雇用契約は、自己都合により私から破棄した
- 御社との間に債権債務はない
- 今後御社とはかかわりを持たない
これまでのIさんの電話やメールからすると、ずいぶんかしこまったしおらしい文面です。
相談をした警察署に聞くと、Iさんの住む所轄の警察署に確認をしたところ、地元でも有名なクレーマーで、様々なトラブルを起こしては金品をせしめていたようだとのこと。
今回、警察から電話をして注意をすると、急に態度を変えて反省の弁をまくし立てた(反省の弁でも一方的に主張をすることは同じようです)ので、「事実を認めて反省をしているなら、そのことを相手先(私の会社)にも伝えて、許しを請いなさい」と指導をしたそうです。
それを受けてのメールだったようで、お詫びの一文がないのは腑に落ちないものの、了解した旨のメールを返信して、この件は一件落着となりました。
私のホンネ
Iさんが私の会社の色々な営業所に電話をしまくったせいで、私はすっかり社内の有名人になってしまいました・・・
皆、事情は知って頂いているものの、ご迷惑はかけているので、すべての営業所にお詫びのメールと電話をしました。
すっかりいわれのない恥をかかされた私ですが、有名人になったおかげで、仕事上で必要な全国周知などでは、すぐに私からの発信だとわかってもらえて返事をもらえたりするので、思わぬ副産物だなぁと、妙に感心するのでした。