【続編⑤】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「Excel基本操作」をめぐって両者の意見が食い違う派遣社員Kさんのクレーム対応
私の担当派遣社員としてD社でスタートしたばかりの30代男性の派遣社員Kさんですが、派遣先から「Excel基本操作はできると聞いていたのに全くできない!」というクレームがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
派遣先R課長への反論開始
「Excelの基本操作が全くできないからKから別の派遣社員に変えてほしいということなんですが、他の業務で支障は出ているんでしょうか?」
R課長の「契約を守っていないから人を入れ替えろ」という要求が、どこまで奥行きのある論拠があってのことなのかを探るために質問をしたのでした。
「いや、まだ他の業務はやらせていないからわからないですよ。でもExcelを使っての簡単な集計と見積書の作成はできていないわけですから契約は守られていないですよね!?」
R課長は平気な顔をして答えます。
この人は一体なんのつもりなんでしょうか?
「でもR課長、まだKが就業を開始して1週間ですよね?しかもごく一部の業務しかお任せいただいていないようですし。他の業務をやらせてもいないのに、いきなり人を入れ替えろというのは乱暴ではありませんか?」
R課長の物言いに頭がきた私は、喧嘩を覚悟で言い返し始めます。
「何いっているんですか?御社が契約を守っているかどうかの話をしているんですよ!?」
R課長も負けじと言い返してきます。
そろそろ各論に入りましょう。
「契約という意味では、KはExcel基本操作のスキル・経験は持っています」
「弊社のスキルチェックでも相応のスコアが出ていますし、これまでの業務経験でも使用しています」
「ですから、冒頭に申し上げたとおり、Excel基本操作の使い方の部分でミスマッチがあるんではないかと思っています」
「K本人にもヒアリングをして、そのミスマッチを明らかにしなければいけませんし、それが改善できるレベルのものなのか、それとも課長のおっしゃるとおり人を入れ替えなければ解決できないレベルなのかを見極めたいと思っています」
「それに当初の業務内容には社内外へのメールのやり取りや、専用システムを使っての事務処理もあったと思います」
「それらの業務ができるかどうかといった全体のバランスも考えて判断をしないといけないと思っているんです」
私は珍しく腹立ち混じりに一気に捲し立てたのでした。
「いや、でもKさんは今頼んでる簡単な集計と見積書の作成ができていないんですよ!!アウトプットが出せないのに、これでどこが契約が守られてるって言えるんですか!?」
ついにR課長の尻尾を掴みました。
どこがポイントか気が付いたでしょうか?
当初のR課長の主張は次のようなものでした。
- KさんはD社と派遣会社間で契約をした派遣社員に遂行してもらう業務内容を遂行するために必要なExcel基本操作が全くできない
- 必要としていたスキル・経験がないので業務が遂行できず、契約が守られていない
- よって業務を遂行できるスキル・経験を持った派遣社員にすぐにでも入れ替えてほしい
このようなR課長の主張に対して私は次のような反論をしたのでした。
- 当社のスキルチェックからExcelの基本操作はできるという結果が出ているし、業務経験からもその実務経験は有している
- ミスマッチはExcel基本操作の使い方の違いの可能性が高く、勉強や習熟によって改善ができるのか、それも難しいのか検証が必要
- Excel基本操作のスキル・経験が必要なのは、業務全体の中の一部であり、他の業務が期待通りにできるかどうかと言ったバランスも考えての判断が必要
つまり私は「契約している業務内容を遂行するために必要なスキル・経験があるか否か、足りないのであれば改善ができるのか否か?」という論点で話をしているつもりでした。
しかし先ほどのR課長の「Kさんは今頼んでる簡単な集計と見積書の作成ができていないんですよ!!アウトプットが出せないのに、これでどこが契約が守られてるって言えるんですか!?」という発言。
これは明らかに成果物責任を問うような内容です。
人材派遣では派遣先に対し、派遣会社も派遣社員も成果物責任を負いません。
「いついつまでに〇〇の業務がミスなく完了していること」といった成果物を納める契約ではないのです。
「課長、申し訳ないのですが人材派遣は労働力の提供がサービスの内容ですので、ご依頼頂いた業務の成果物をお約束する契約ではないんです」
「生意気な言い方をして申し訳ないのですが、派遣契約には成果物責任はないので、頂いた業務内容をできるだけ適切に実行できる人材を派遣させて頂くという取り組みをさせて頂いています」
唖然とするR課長。
この局面では彼が何を持って唖然としたのかを推し量ることが重要です。
額面通りに「派遣には成果物責任がないこと」に唖然としたのか?
それとも当社から派遣した派遣社員の仕事ぶりに対してクレームを入れたのに、面と向かって「派遣には成果物責任はないのだから、そんなクレームは受け付けられない」と言った私に対して唖然としたのか。