【続編 ⑧】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「Excel基本操作」をめぐって両者の意見が食い違う派遣社員Kさんのクレーム対応

【続編⑧】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「Excel基本操作」をめぐって両者の意見が食い違う派遣社員Kさんのクレーム対応

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私の担当派遣社員としてD社でスタートしたばかりの30代男性の派遣社員Kさんですが、派遣先から「Excel基本操作はできると聞いていたのに全くできない!」というクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

 

対応経緯

派遣社員Kさんとの面談

派遣先R課長の「Excel基本操作はできると聞いていたのに全くできないから人を入れ替えて欲しい」という要求から端を発したこの問題解決ですが、紆余曲折ののち「R課長が何を持ってKさんに対して強く不満を持っているのかよくわからない」という状況に達したのでした。

派遣先の担当者がこのようなあやふやな思いでクレームをつけてくるのは珍しいケースですが、解決をしない事には派遣先にとっても、Kさんにとっても健全ではありません。

私がKさんに1日OA研修を行うていでKさんのスキルや仕事ぶりを確認する事になりましたが、Kさんの合意も取りながら事を進めなければいけないのです。

「Kさん、すみません突然お呼びして」

Kさんは30代の男性、少し飄々とした印象はありますが、物腰も柔らかで腰が低く好感が持てます。

D社で就業するに至るまでのやり取りの中でもレスポンスはよく、「真面目に仕事をしてくれそう」という印象で、当社での派遣社員としての就業は初めてながら、私としては安心してD社に送り出したつもりだったのでした。

「どうですか?就業が始まってから1週間くらい経ちましたが」

本題に入るにしても話が急すぎますから少し世間話をしつつ、KさんのD社やR課長に対する印象も確認しておきましょう。

「そうですね・・・まだ1週間なので右も左もわからないという感じでしょうか。まだR課長からはごく一部しか仕事を任せてもらっていませんけど、徐々に増やしていくつもりなのかなって思ってます」

「とにかくR課長が忙しそうで、私は課長としか関わりがないので、会議とかの合間に慌ただしく仕事を指示されて、課長がまた居なくなっての繰り返しといった感じです」

やはり心配していたとおり、Kさんは放置されがちな状況のようです。

R課長は仕事の合間合間でKさんに指示をしたり、仕事を教えたりといった繰り返しをしているようで、せっかちなR課長の性格を考えると、思うように指揮命令が出来ず、Kさんの習熟やアウトプットが進まない事に勝手にイライラを募らせるといった悪循環が想像できます。

「そうですか・・・R課長としか仕事の関わりがないというのはちょっと辛いですかね?R課長はあまり席に居ないし、周りの社員とも接点がないしじゃ、居づらくなったりしませんか?」

少し後ろ向きな問いかけをする事でKさんの本音を引き出す試みをします。

「・・・そうですね。R課長としかやりとりがないので、R課長がいないと仕事の仕方を聞く相手もいないし、正直不安というか寂しいというか、いる場所がない感じはしますね」

それはそうでしょう。私だって同じような環境に放り込まれたら不安になると思います。

Kさんの目線で現状把握をしたときに、次のようなことがわかりました。

  • 唯一の指揮命令者であるR課長は席にいないことが多く、満足に指揮命令や仕事のやり方のレクチャーができているとは思えない
  • 入社1週間でその状況では、指示に対して的確なアウトプットを出すことは難しい
  • OAスキルの問題というより、指揮命令や職場環境の問題の可能性が高い

KさんがこのままD社で仕事を続けていきたいと思っているかどうかは別として、このままこの状況を放っておいてはKさんでなくとも長続きするとは思えません。

思えば、今回のこのポストは新設のポストでした。

新しく派遣社員を募集するときにありがちなのは、派遣先に受け入れ態勢が整っていないという状況です。

R課長は自分の手が回らないから派遣社員に手伝って貰おうと思ったわけですから、Kさんにやって欲しいことは沢山あるのでしょう。

問題なのは自分がやって欲しい事を他の人にやってもらうときに育成コストがかかる事を計算に入れていないという事です。

正社員であろうが派遣社員であろうが、今日着任した人がいきなり思った通りの働きをしてくれるなどということはありません。

正社員であれば自分の評価を守るため、なんとしてでも仕事を覚えて食らいついていこうとするのでしょうが、派遣社員に同じような動きを求めるのは間違っているのです。

それは派遣社員が意欲が低いということではなく、派遣社員はそもそも明確な指揮命令を受けて、受け身に働くことが前提となっている雇用形態だから。

「職能給」という賃金体系があります。

日本の正社員の多くが職能給であり、「スキルは経年とともに上昇する」という考え方に立っています。

日本の高度経済成長期に導入された考え方で、「経年とともにスキルが上昇する」という曖昧さが年功序列と相性が良いのです。

「年を追うごとにスキルが高まったとする上司の評価を背景に出世をしていく」ということであり、常に上司の顔色を伺う文化が出来上がりました。

しかし派遣社員は、派遣先と派遣会社間の派遣契約を前提に「〇〇というスキル・経験を活かして、〇〇という業務を行ってもらう」という雇用契約を結んでいます。

これは「職務給」といわれる賃金体系で、「決まった仕事を、その仕事に応じた給与で行ってもらう」といった考え方です。

賃金制度、つまりは評価制度が違うと同じ人物でも働き方や仕事に対する考え方が全く変わります。

多くが職能給をとっている正社員の派遣先担当者と、派遣社員の仕事に対する感覚の違いを理解するには、こういった背景を踏まえた対応が必要になるのです。

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