【続編⑩】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】仕事ができすぎる派遣社員Tさんが気に食わない派遣先担当者B課長からのクレーム対応
私の担当派遣社員としてD社で就業を開始した30代女性の派遣社員Tさんは、非常に優秀で前向きかつ自発的に仕事に取り組み、就業開始早々ながら業務改善や業務効率化では社員以上の成果をあげる人物。
本来であれば派遣先からその働きへの評価や称賛があって然るべきですが、指揮命令者であるB課長はなぜか正しく評価をしてくれず、関係は悪くなるばかりです。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
派遣先B課長との打ち合わせ
「B課長、弊社のTが出過ぎた言動があるようで申し訳ありません」
「言い方の良し悪しは別として、私もTの仕事に対する前のめりさには少し行き過ぎなところを感じてはいまして・・・」
Tさんに対する個人的な感情が先行した不満を感じているであろうB課長に少し寄り添った返答をします。
さて、Tさんに約束をした「Tさんの働き方の指向性にマッチする業務内容に変更ができないか打診をする」という点ですが、この状況からどのように話を切り出しましょうか。
「課長、Tに行き過ぎた言動ですとか、御社での仕事に対する考え方のようなところを私から注意した方がよろしいでしょうか?お許し頂ければ強く注意しますが・・・」
一見見当違いなこの投げかけ、B課長がどう反応するでしょうか?
「いやいや、それはしなくていいですよ。モチベーションの低下にもつながるし、ややこしい話になりそうだから」
B課長の返答を捕まえて、私はここぞとばかりに勝負に出ます。
「・・・そうですよね。『前向きに働くな』みたいなメッセージにとられてしまう可能性もありますし、あとあとこのメッセージを引き合いに出して揉め事になり兼ねませんしね・・・」
「B課長もお感じになられていると思うんですが、今回のTの件は彼女の仕事に対する考え方といいますか、派遣という働き方対する考え方といいますか、そこが一般の派遣社員の人とズレているのが原因のように思っているんです・・・」
Tさんへの不満をB課長から突き付けられるという「守り」から、この件の原因はなにか?という問題解決のフェースに話をズラすことによって「攻め」に転じます。
「このままTが就業を続けさせて頂いても、今起こっているような問題はずっと続くように思いますし、人間関係という意味では深刻化していくように思います」
「彼女は日常的な業務を当たり前に行うだけでなくて、自律的に一人称で仕事を組み立てたり効率化したりすることにやりがいを感じるようです」
「今の職場で、派遣社員という立場で、そのような働き方は可能なんでしょうか?」
「おそらくTには今の職場で求められている働き方のスタンスを明確に示してあげて、その上で続けるか続けないかという選択をさせてあげた方が良いように思うんですが・・・」
ここまでのやり取りで、今回の商談の目的としていた次の投げかけが完了しました。
- Tさんの働き方の指向性にマッチする業務内容に変更ができないかB課長に打診をしてみる
- それが不可能である場合、B課長がTさんに求める働き方を確認する
「そうですね・・・確かにちゃんと線引きをしておかないと問題を引きずるだけかもしれませんね・・・」
B課長は少し考えた後に口を開きます。
「まず、Tさんが求めるような働き方は少なくとも私の部署では求めてませんね」
「やっていただきたい仕事を淡々と正確に着実にやってほしいということに尽きます」
「そもそも仕事の仕組みや効率化を考えるのは社員の役割ですし」
想像通りの返答です。
「そうなりますとTには今頂いたようなお話をフィードバックさせて頂きますね」
「おかしなハレーションを起こさないように言い方には気をつけるのですが、Tからすると自分の考えに合わない働き方を続けるか、それとも辞めるかという判断になるわけでして・・・」
「話の運び次第では契約途中で退職を願い出る可能性も考えられるのですが、それはお許し頂けますでしょうか?」
B課長は「それは仕方ないかもしれませんね」と答えます。
Tさんには申し訳ありませんが、想定通りの結果になりました。
Tさんにフィードバックをする中で、彼女にはB課長の求める働き方を受け入れるのか、それとも自分の考えに合った別の職場を探すのかを選択してもらうしかありません。
業務内容などの契約条件に相違があったのであれば派遣先へのアプローチの仕方も違ったのですが、今回のように「働き方のスタンス」といった抽象的な、しかしその食い違いがあると、そこに端を発してお互いがストレスをためていくような根本的な問題については、調整役である私はお互いの考えを明確にさせ、それをお互いに伝えることでそれぞれに決断をしてもらうというアプローチしかとりえないのです。
そのまま放っておくと、日を追うごとに別の形でトラブルが顕在化するでしょうから、三者それぞれのためにも早めに芽を摘んでしまうことが肝要です。