【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】一体誰が指揮命令者なの!?派遣社員Sさんのトラブル対応

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私の担当派遣社員としてK社で働き始めた30代男性の派遣社員Sさんですが、「X社に派遣されているはずが、その取引先のY社の社員から指揮命令を受けていてどうにかしてほしい」という相談がありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

 

クレーム経緯

●派遣社員Sさんは営業事務として2ヶ月前からX社で就業を開始した

●X社は主に大企業であるY社から仕事を請け負っており、業務によってはプロジェクトチームを作り、お客様であるY社の中にX社の社員が常駐して業務にあたっている

●派遣社員Sさんがスタートしたのは、Y社の中に常駐するX社のプロジェクトチームの中での営業事務の仕事であった

●派遣会社の営業担当として、X社のお客様先であるY社の中に常駐するX社のプロジェクトチームに当社の派遣社員を派遣することについては「二重派遣」や「偽装請負」のリスクを懸念し、その指揮命令関係について事前に念入りな確認を行った

●X社の回答として、就業場所は発注元となるY社の担当者の机の島と隣接しているが、隣の島との間に高めのパーテーションボードを配置して物理的に区切りを設けているし、派遣社員に対する指揮命令はX社の社員が行うという確約を頂き、Sさんが就業スタートするに至ったという経緯がある

●しかし就業開始から1週間程度経った後にSさんから連絡があり、「X社に派遣されているはずが、その取引先のY社の社員から指揮命令を受けていてどうにかしてほしい」という相談があった

対応のポイント

人材派遣とは派遣先と派遣社員、派遣会社の3者間の契約です。

  • 派遣会社⇄派遣社員=雇用関係
  • 派遣先⇄派遣社員=指揮命令関係⇄労務の提供)
  • 派遣先⇄派遣会社=人材派遣契約という商契約関係

この3者間の関係が1つでも違っていると、それは人材派遣とはいえないのです。

企業に直接雇用される正社員や契約社員・パートアルバイトといった労働者は、雇用主である企業との雇用契約のもと労務の提供を行う代わりに給与という対価をもらいます。

派遣社員は派遣会社と雇用契約を結ぶのに、実際に仕事をするのは派遣先という全く違う企業であるということに人材派遣の特殊性があります。

その特殊性から一歩間違えると派遣先や派遣会社にとって都合の良い、派遣労働者への搾取というべき状況につながってしまう懸念があるのです。

そういった派遣社員にとっての不利益を防ぐために定められているのが「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、略して派遣法です。

では、派遣労働者にとって搾取につながるような「派遣のようで派遣でない違法な契約」とはどのようなものがあるのでしょうか?

二重派遣

「二重派遣」という名称の通り、派遣先A社で就業をするべき派遣社員が、派遣先A社からさらにB社に派遣され就業をするという二重の派遣状態を言います。

派遣会社⇄派遣社員⇄派遣先A社→B社

本来三者間の契約である人材派遣という仕組みに、全く関わりのないB社が登場している時点で違法と言えます。

派遣先A社が二重派遣という違法行為を行う背景には次のようなことが考えられるのです。

  • A社は取引先のB社から「〇〇という業務を発注したいが、B社から優秀な人材を出向してほしい」という依頼を受け、相応の対価を提示された
  • A社は、より利益を増やすためには自社の社員をB社に出向させるのはもったいないし、優秀な社員を社外に出しては自社の業務に支障が出ると考えた
  • A社は派遣会社から派遣社員の派遣を受け、その派遣社員をB社に「出向」させ、〇〇という業務にあたらせた。業務の指揮命令はA社の社員から派遣社員に直接行われる

A社は派遣会社から派遣された派遣社員を違法に取引先のB社に「出向」させることにより、次のような利益を得るのです。

  • 給与の高い自社の社員ではなく、安価な派遣社員を「出向」させることで利幅が増えた
  • 3ヶ月更新といった有期雇用の派遣社員をA社の業務に当てがうことで、仮にB社からの業務がなくなってしまっても派遣社員の契約を更新しなければ良いだけなので雇用のリスクを気にすることなく利益だけを享受できる

こんな都合の良い雇用があっていいはずがありません。二重派遣の本質は「利益の中抜き」にあるのです。

二重派遣なんてもってのほかですが、三重四重となれば、その分間に入る企業に利益が中抜きされ、労働者の手元に残る給与は雀の涙なんてことになりかねません。

偽装請負

業務請負契約は〇〇という業務成果(成果物)を、業務委託契約は○○という業務の遂行をもとに対価が支払われる契約です。成果物や業務の遂行自体が対価の対象であり、雇用は直接的に関係しない企業間の契約と言えます。

発注したA社⇄受託したB社

極端な話をいえば100件ある業務を全て1人で行おうが100人で行おうが、どんな手順で業務を進めようが、契約上求められている結果さえ出せば、それは仕事を受けた側の自由であり、発注した会社と受託した会社の間に雇用契約における「指揮命令」のような概念は介在しません。

ここで問題になるのは発注をしたA社の社員が受託したB社の社員に対して逐一仕事の仕方を指示したり、都度途中経過の報告を求めるといったケースです。

事実上、A社がB社の社員を指揮命令していることとなり、その関係は人材派遣に近づきます。

偽装請負の本質は「成果物責任を問うことのできる、安価で都合の良い実質的な雇用」であるということです。

人材派遣はいわば「派遣労働者の時間の切り売り」ですから、派遣先の期待を下回る業務遂行や成果物であったとしても、指示された業務さえ遂行していれば派遣先は異議を唱えることはできません。

偽装請負であれば、業務の遂行の結果や成果を求めることができる上に、そのやり方についてもあれやこれやと口を出すことができ、発注する側の企業にとってこんな費用対効果の良い、都合の良い労働力はないのです。

さて、前置きが随分長くなってしまいました。

今回派遣社員Sさんの「X社に派遣されているはずが、その取引先のY社の社員から指揮命令を受けていてどうにかしてほしい」という相談が、二重派遣や偽装請負といった違法行為にあたるのかどうかを調べていかなければなりません。

派遣会社に悪意がなくても、派遣先が実質的に違法行為を行うことで、悪事の片棒を担がされることは珍しいことでは無いのです。

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