【続編11】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】一体誰が指揮命令者なの!?派遣社員Sさんのトラブル対応

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私の担当派遣社員としてK社で働き始めた30代男性の派遣社員Sさんですが、「X社に派遣されているはずが、その取引先のY社の社員から指揮命令を受けていてどうにかしてほしい」という相談がありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

 

対応経緯

派遣先G部長との再度の打ち合わせ

「それでね、今日お越しいただいた用件というのは、Sさんを当社に欲しいってことなんですよ」

唐突なセリフを口にしたG部長。どういうつもりでしょうか?

言葉通りに『Sさんは優秀なので当社の社員として向かい入れたい』ということであれば、ずいぶん急な話です。

Sさんが優秀であることは理解をしていますが、そもそも当社との雇用契約をもとにX社に派遣をしている人物。「当社に欲しい」となれば、いわば引き抜き行為です。

もちろんSさんがそれを望むのであれば止めるつもりはありませんが、通常、派遣先が派遣社員を直接雇用するにあたっては契約期間中の引き抜き行為は基本契約の中で防止され、契約の節目での直接雇用化についても紳士協定としての理解の中で然るべき段取りが踏まれます。

しかも今回の経緯の中での直接雇用化の打診については、きな臭さしか感じないのです。

「・・・と言いますと?」

こちらからカードを切る場面ではありませんから、G部長の発言を促します。

「いえね。今回の経緯でY社とも話したんですが、Sさんへの評価の高さが際立ったんですよ」

「そこでSさんを当社に迎え入れることによって、プロジェクトの質も高まるし、Y社の満足度も高まると思いましてね」

「Sさんも派遣のままより、ウチの社員になった方が安定するでしょう?」

雇用主たる派遣会社の私を目の前によく言えたものです・・・

Sさんを直接雇用しようという考えに至った経緯は、イコールX社での雇用の質にも直結すると考えます。

しかしG部長のような「腹黒ダヌキ」に根掘り葉掘り事情を聞いてもまともに答えてくれないでしょう。

私なりの理解は次のようなものです。

  • G部長はY社との話し合いの中で、D課長の現場での振る舞いが偽装請負や二重派遣といったコンプラリスクが高いことを伝え、改善を依頼した
  • Y社から改善を図るという言質は取れたものの、X社のプロジェクトマネジメント、具体的にはKリーダーの能力について疑問を呈された
  • Y社が発したのか、G部長が発したのか定かではないが、プロジェクトマネジメント強化の策として、SさんをX社の社員にし、プロジェクトの管理者の一人として参画させることを発案した

つまりはSさんをX社の社員としてプロジェクトに据え直すことで全て解決したことにしてしまおうという論法です。

二重派遣という問題は表面上解決されるのでしょうが、D課長のプロジェクトへの過干渉という偽装請負の問題はそのまま。これではいくら直接雇用といっても雇用の質は低いと言わざるを得ません。

G部長が誰と話をしたのかわかりませんが、おそらくY社の中で業務アウトソーシングを取りまとめているような立場の人なのでしょう。

発注したY社も、受託をしたX社も現状を根本的に解決しようなんて気はないのです。

Y社の取りまとめの担当者からすれば、「たかだか提案資料をまとめる程度のプロジェクト、そこに据えた他の部署に持って行き用のない鼻つまみもののD課長を飼い殺しするには丁度良いポジションだ」くらいに思っているに違いありません。

何か注意して改善がなされるような人物であれば、そもそもそんなポジションに配置されていないはずです。

G部長にとっても数あるプロジェクトの中の一つに過ぎません。

発注元のY社からは他にもいくつものプロジェクトを預かっており、G部長が強気に抗議のできるような力関係にはないのです。

「派遣社員のSをリーダーにすげ替えればD課長も満足だろうし、プロジェクトもこれまでよりはまともに機能するかもしれない」なんて安直に考えているに違いありません。

企業間の受委託関係ではこのような場当たり的な考えで運営をされているプロジェクトも多く、そのような環境に派遣社員を派遣した場合、様々な問題が発生します。

今回は事前にずいぶん確認や念押しをしたつもりではありましたが、蓋を開ければ懸念したような問題は避けられませんでした。

「・・・私としてはSが御社での直接雇用化を望むのであれば邪魔をするつもりはありませんが・・・」

G部長がどこまでゴリ押ししてくるのか?温度感を推し量るために合いの手を入れます。

「いや、Sさんを引き抜かれたら御社も痛手でしょうから、その分の対価はお示ししますよ」

「契約の切り替えのタイミングで当社の公募にSさんから応募してもらうような流れを考えているので、手数料みたいなものはお支払いできないんですが」

「その代わりと言ってはなんですが、他のプロジェクトでの人材派遣の募集を優先的に御社に発注しますよ」

しれっとのたまうG部長。

今回のG部長の場当たり的な対応を見るに、X社の他のプロジェクトでも偽装請負や二重派遣の懸念は払拭できないでしょう。

そんな不確かな案件をもらったところで嬉しくもなんともありません。

「G部長、先ほども申し上げました通り、Sが御社での直接雇用化を望んでいるのであれば、私は邪魔をするつもりはございませんので・・・」

「公募に応募というお話でしたが、これまでの経緯もありますので、一度私から本人に話をさせて頂けませんか?」

Y社とX社の偽装請負、Y社からSさんへの直接の指揮命令から来る実質的な二重派遣、そこへきて派遣先X社からの直接の引き抜き打診となれば、温厚なSさんとて、そのでたらめさに腹をたて、どのような反応をするのか読み切れないのです。

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