【同一労働同一賃金①】2020年4月派遣法改正で派遣社員に何が起こるのか?
安倍政権の掲げる働き方改革の一環として行われる同一労働同一賃金。
字面だけ見れば「同じ仕事をしていれば同じ賃金をもらえるということは、派遣でも同じような仕事をしている派遣先の正社員と同じ賃金が貰えるの?」というように理解する方もいるかもしれません。
しかしそう単純な話ではないのです。理解しづらい同一労働同一賃金。順を追って説明していきます。
そもそも働き方改革とは?
テレビや新聞で度々報じられる働き方改革。なぜ今、働き方の改革が必要なのでしょうか?
働き方改革の背景は「労働力人口の減少」です。
高齢化が進み、出生率が下がる日本では年を追うごとに働ける人が減ってしまう、それにより徐々に国力も落ちてしまうという大きな懸念があるのです。
根本原因である労働力人口の減少を解決するための働き方改革を行うという建て付け、その骨子は次の3つです。
- 働き手を増やす
- 出生率を上げる
- 労働生産性を高める
この3つの骨子のうち、「働き手を増やす」というテーマにフォーカスしてみましょう。
高齢化や出生率低下により労働力人口が減っていくわけですから、働き手を増やすにはこれまで働いていない人、働く機会がなかった人にも働いて貰わなければいけません。
では新たな働き手とは誰か?それは女性や老人です。
出産や育児で職場の第一線から離れたものの、また仕事に戻りたいのに様々な環境がそれを許してくれないと嘆く女性。
歳はとったがまだまだ元気で働くことができると意気込む老人。
このような活躍の機会が限られていた人々に新たな働き手になってもらうための課題解決が必要なのです。
- 長時間労働の是正
- 正規と非正規の格差是正
- 高齢者の雇用促進
新たな働き手に労働市場に参入してもらうには、それなりの環境整備が必要。
「あいつは毎日遅くまで残業して頑張っている」「定時で帰るなんてやる気がない」などという前近代的な評価基準。
これでは子供を育てながら働く女性は安心して働けません。長時間労働は是正していかなければいけないのです。
そこで行われたのが2019年4月の労働基準法の改正。主には「36協定」と言われる時間外労働の規制が厳しくなりました。
よく報道で見かける正規と非正規の格差問題。
「正社員と同じ仕事をしているのに給料は半分以下」とか「正社員は守られているのに非正規は使い捨て」などという嘆きが聞こえてきます。
そこで行われるのが2020年4月の派遣法の改正なのです。
つまり働き方改革はその課題解決に向けて労働基準法や派遣法などの関連法を改正し行われます。
一般に「働き方改革関連法」といわれるものは、新たな法ではなく、従来の労働関係の法律であり、この関連法の改正をもって働き方改革が行われているのです。
同一労働同一賃金とはなにか?
正規と非正規の格差問題。
非正規というと認められていない働き方のようで心外ではありますが、一般に非正規といわれる雇用は次のようなものです。
- 契約社員
- パート・アルバイト
- 派遣社員
数ヶ月間といった不安定な有期雇用契約であること、正規雇用といわれる正社員に比べると賃金が低く、同じ仕事をしていても雇用形態の違いによって理不尽に処遇が低いという一般的な特徴があります。
こういった格差を是正するための発想が同一労働同一賃金であり、「同じ仕事をしているならば同じ賃金を払う」という考え方です。
では同一労働同一賃金はどのような法的背景をもとに行われるのでしょうか?
- パート・アルバイト→パートタイム・有期雇用労働法
- 派遣社員→派遣法
パート・アルバイトは雇用主との直接雇用であり、派遣社員は派遣会社を介した三者間の契約であることから、同じ非正規でも別の法改正によって同一労働同一賃金の実現に向けた取り組みが行われます。
2020年4月の派遣法の改正により派遣社員になにが起こるのか?
では2020年4月の派遣法改正によって派遣社員にどのような変化が起こるのでしょうか?
- 通勤交通費の全額支給
- 退職金の支給
今回の派遣法改正により派遣社員には通勤交通費が支給され、退職金が支給されるという大きな変化があります。
これまで人材派遣では「時給込み」として支給されていなかった通勤交通費が、4月からは全額支給が必須に。
通勤交通費が1万円かかっていたとすれば、その分がまるまる上乗せして支給されるのです。
それだけ考えれば、派遣社員にとっては良いこと尽くめの法改正ですが、本当にそうなのでしょうか?