【同一労働同一賃金②】2020年4月派遣法改正で派遣社員に何が起こるのか?

【同一労働同一賃金②】2020年4月派遣法改正で派遣社員に何が起こるのか?

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安倍政権の掲げる働き方改革の一環として行われる同一労働同一賃金。

字面だけ見れば「同じ仕事をしていれば同じ賃金をもらえるということは、派遣でも同じような仕事をしている派遣先の正社員と同じ賃金が貰えるの?」というように理解する方もいるかもしれません。

しかしそう単純な話ではないのです。理解しづらい同一労働同一賃金。順を追って説明していきます。

2020年4月の派遣法の改正により派遣社員になにが起こるのか?

  • 通勤交通費の全額支給
  • 退職金の支給

派遣社員にとってはプラスしかない派遣法の改正。しかし話はそう簡単ではないのです。

一般財団法人日本人材派遣協会のホームページに記載されている、このグラフに注目してください。

あくまで平均ではありますが、人材派遣は営業利益率が1%前後の薄利多売のビジネスであることがわかります。

仮に派遣先から1時間あたり2200円の契約金額を貰っていたとして、営業利益は22円。

2020年4月から派遣社員に通勤交通費を支払わなければいけませんが、1万円の通勤交通費がかかる派遣社員がいたとして、その通勤交通費を時給換算すると63円(1万円÷(実働8時間×20日))。

これでは完全に赤字で、派遣会社が派遣先と派遣社員に無償で奉仕し、さらにお金を払っているのと同じ状況です。

つまり、派遣会社に通勤交通費を支払う原資などなく、その原資は派遣先に求めるしかないのです。

では、その協力を求められた派遣先はどのように受け止めるのでしょうか?

派遣社員は有期雇用とは言え派遣会社の社員なのだから、通勤交通費は派遣会社が支払うべきものだ

しごく当たり前の発想です。

派遣会社の社員である派遣社員の通勤交通費を派遣先に肩代わりしてもらうなどというのは全くのお門違い。

仮に派遣先が通勤交通費を支払ったとしても、その派遣社員のスキルや経験、業務内容が変わるわけでもありません。

つまり、なんの理由もないのにコストだけ上がるということになるのです。

では、通勤交通費を肩代わりしてもらえなかった派遣会社は派遣社員に対してどのように対応をするのでしょうか?

交通費を肩代わりしてくれる(もしくは相応の契約金額を提示してくれる)派遣先に派遣し直す

優秀な派遣社員Aさんに引き続き仕事を続けてほしい派遣先B社は、同一労働同一賃金による派遣法の改正で発生する通勤交通費のコスト負担を肩代わりしなければ、派遣会社から派遣社員を引き上げられてしまうわけです。

派遣社員Aさんに残って欲しい派遣先B社はしぶしぶ通勤交通費を肩代わりします。

では派遣先C社からの評価が低い派遣社員Dさんはどうでしょうか?

交通費を肩代わりしてくれる(もしくは相応の契約金額を提示してくれる)派遣先に派遣し直す
3月末までで契約満了、もしくは雇い止めをする

この場合の雇い止めで適法かどうかは別として、派遣法の改正をきっかけに失業が起こる可能性があるということです。

まさに官製失業であり、2018年の派遣法3年の期間制限をきっかけとした派遣切りが思い起こされます。

今回の派遣法改正をきっかけに派遣社員の処遇が改善するのは歓迎できるのですが、そもそも「賃金が上がれば景気も上がる」といった景気対策の側面も強い今回の法改正、有無を言わさぬ方法で派遣会社や派遣先に大きなコスト負担を伴う処遇の改善を促すのは無理があるのではと感じてしまいます。

これにより官製失業や、先々の人材派遣のニーズ減退といった懸念が想定され、それによって思わぬ悪影響を受ける人も多いのです。

派遣会社の営業担当は今、なにをしているのか?

2020年4月から新たに発生する通勤交通費というコストを踏まえて、派遣先にその負担を肩代わりしてもらわなければならない派遣会社の営業担当は今、どのような活動をしているのでしょうか?

4月から派遣先に追加のコスト負担をお願いするということは、派遣先の「来期の予算に計上をしてもらわなければならない」ということです。

日本企業であれば大半は3月決算、4月からの新たな会計年度に向けて、1月〜2月にかけて事業計画(来期の予算を作るための計画)が行われます。

つまり少なくとも2月末までには派遣社員の通勤交通費に関するコストを予算に計上してもらわなければいけないということです。

派遣社員が10名働いているA社。10名全員が都内の平均である1ヶ月あたり15,000円の通勤交通費であったとしましょう。

15,000円×12ヶ月×10名=180万円

派遣社員の通勤交通費をまるまる肩代わりしてもらったとして、年間でこれだけの追加コストが発生するのです。

そしてこのコストは派遣先の利益を削る形で支払われます。

派遣社員の人数の多い派遣先ほど、この追加コストは経営課題になり得ます。それほど派遣先にとってインパクトの大きいコストなのです。

来期の予算計上が締まってしまう2月末までの間に派遣会社の営業担当は知恵を絞り、提案を練って、派遣社員の雇用を守るために派遣先に足を運び、協力を求めます。

さて、そのような努力の結果は吉と出るのでしょうか、凶と出るのでしょうか?

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