【続編④】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「仕事が全くない」と嘆く派遣社員Pさんのトラブル対応
私の担当派遣社員としてF社で働き始めた30代女性の派遣社員Pさんですが、「全く仕事がなくて毎日何をしていいのか困っている」という相談がありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
派遣先G課長へのヒアリング
「うちとしてはPさんには続けてもらいたいと思っていますよ。そのためには我々が彼女に何をしてあげればいいと思いますか?」
それを考えるのがマネジメントであるあなたの仕事だろと思いつつも、G課長の真意をはかります。
本当に私に解決策を示してほしいと思っているのか?それとも彼なりの考えはすでにあって、私を試すためにわざと質問を投げかけているのか?
まだその真意を推し量ることはできませんが、質問に答えないわけにもいきません。
「ご質問頂きましたので私なりの見解を述べさせていただきますと・・・」
「根本的な問題は、この派遣社員のポストのメイン業務が頼まれ仕事であること、また仕事を頼む方が複数いるということだと思っています」
「定型業務のように仕事の流れの中で決まった業務をやるのと違いますから、社内システムや社内ルールに疎い新しい派遣社員からすると何をどうやっていいのかわからないという状態に陥りやすいんです」
「また一人の社員の方だけが仕事を頼むのであれば、仕事を教えるという発想になると思うんですが、複数の方から仕事を頂くような流れになっているので、皆様お忙しい中ではなかなか自分から仕事を教えようということにならないようです」
「仕事を頼むのが教える手間とセットになってしまうため、社員の皆様もPに仕事を頼むことを躊躇されるようです」
G課長はときおり「なるほど」と言いながら、私の話を口を挟まずに聞いてくれます。
「それと解決方法ということなのですが、これは私も現場で一緒に仕事をしているわけではないので少し自信はないのですが・・・」
「これまでの経験上でお話をさせて頂きますと、いくつかパターンがあります」
「一つは最初しばらくの間、特定の社員の方の専属のアシスタントという位置づけにして頂くというやり方です」
「専属のアシスタントにすることによって、社員の側にも『仕事を教えなければいけない』という発想が生まれます」
「もう一つは最初しばらくの間、定型業務を与えるということです」
「いずれも社内システムや社内ルール、社内の人間関係に派遣社員を慣れさせるための取り組みです」
黙って私の話を聞いていたG課長が少しの間を置いてから口を開きます。
「なるほど、よく分かりました」
「確かにおっしゃる通り、今のPさんの派遣のポストは以前他の派遣会社から来ていた派遣社員の人がやっていたポストで、その方は数年当社で働いていた人でした」
「つまりある程度の習熟がないと、このポストの仕事はなかなか立ち行かないってことですね」
物わかりが良い課長で大変助かります。彼の「我々が彼女に何をしてあげればいいと思いますか?」という質問に対しての私の答えは間違っていないようでした。
「この件は意外とスムーズに解決しそうだ」とこのまま具体策に話を移そうとしたところ、G課長がまた口を開くのでした。
「ところでうちの社員からPさんが仕事に対して意欲がないということを言ってるんですが、これについてはどう思われますか?」
突然の切り返しに私は少し戸惑います。
「・・・と言いますと?」なんとか言葉を返しましたが、口調が上ずっていたのは伝わってしまったかもしれません。
「えぇ、部下たちはPさんに頼む仕事がある程度の社内システムや社内ルールをわかっていないとできない仕事もあることは理解していたんですが、どうやらPさんは一から十まで丁寧に仕事を教えて差し上げないと動けないタイプのようで・・・」
「最初のうちは部下たちなりに丁寧に仕事を教えていたようなんですが、あまりに仕事を教えるのに時間を取られるので、繁忙時期であることもあって仕事を頼めなくなっている状況みたいなんですよ」
「結局いま頼んでいる仕事は単純な入力とかファイリングとか、コピーやシュレッダーくらいで、私どもとしてもせっかく派遣社員を頼んだのに採算が合わないという認識なんです」
淡々と語るG課長。
どうやら私は油断していたようです。稀にいるのです、こんな担当者が。
まず、こちらにひとしきり話をさせて手の内を確認する。「なるほど」「そうでしたか」など合いの手を入れ、途中で口を挟まずに相手に気持ちよく話をさせます。
自分の言いたいことは最後まで取っておいて、相手が気持ちよく話し終えた後に、その話の矛盾をつきながら反論をする。
感情を全面に出さず、淡々と鋭い指摘をしてくることも特徴です。
話術の一つなのでしょうが、相手が同意をもとに話を聞いてくれていると思って話をしていた側からすると梯子を外された感覚であり、相手が腹の中で反論を持ちながら自分の話を聞いていたのだと振り替えると、自分の未熟さが恥ずかしくなるのです。
偉そうに原因とその対策を大上段から語ってしまいました。
つまりG課長はそういういやらしい話の運びをする相手だということ。今後の発言は重々注意をする必要がありそうです。