【続編⑥】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「仕事が全くない」と嘆く派遣社員Pさんのトラブル対応
私の担当派遣社員としてF社で働き始めた30代女性の派遣社員Pさんですが、「全く仕事がなくて毎日何をしていいのか困っている」という相談がありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
他の部署の担当者から裏をとる
「あぁ、G課長のとこのPさんのことだろ?多分連絡してくるんじゃないかと思ってたよ」というS係長。
なぜ私がPさんの件で困っているのを知っているのでしょうか?
「Pさん入ったばかりなのに、いつも暇そうにしているからさ。なんか辛そうだったからちょっと声かけたんだよ」
S係長は総務部の元課長。役職定年で課長職は外れましたが、今も同じ部署で役職を係長に変え仕事を続けています。
話好きな性格もあり、社内の色々な部署の部長・課長レベルの人々と交流があるとともに、派遣社員にも気軽に声をかけ、お昼なんかをご馳走して回っているようです。
普通でしたらオジサン担当者に声をかけられれば嫌な反応をする派遣社員も多いのでしょうが、いい塩梅に枯れた風貌と、保守的な社員が多いF社の中で歯に絹着せぬ彼の物言いが妙にマッチして、嫌味のない人物として誰からも受け入れられているようです。
いわばF社内の情報通であり、本人もそのように扱われることを好んでいるようで、私など外部業者も付き合っていて損のない人物としてたまにお声をかけさせてもらうのです。
「あぁそうなんですね。お気遣い頂いてありがとうございます」
「急にPさんと言われたのでびっくりしました。さすがお耳が早いですねS係長」
満更でもない表情のS係長。
「あそこの部署はさ、前に3年くらい勤めてた派遣社員の人がいたんだけど、その人が辞めたあとに何人も人が入れ替わっててさ・・・」
それは初耳です。Pさんが仕事をスタートするにあたってもG課長からは「前任は数年勤めていた」としか聞いていません。
「要するにあそこは社員が足りてないんだよ。忙しすぎて新しく来た派遣社員を構ってあげる暇もないからほったらかしになっちゃう」
「G課長がちゃんと仕切ってあげればいいのに全部部下任せにしちゃうから、その派遣社員に誰がなにを教えてて、なにを頼んでいるかがわからない・・・」
「G課長は次は部長狙ってるから上しか見てないんだよね・・・たぶん派遣社員なんてどうでもいいと思っているんだと思うよ」
相変わらずのS係長節です。ただ私にとってはとてもありがたい情報ばかり。もう少し掘り下げてみましょう。
「実はさっきG課長から、うちのPが一から十まで教えないと仕事しないから社員が仕事を頼めないってお小言を頂きまして、どうしたものか困っていたんですよ・・・」
するとS係長は話したくて仕方ない様子で口を開きます。
「いやいや、あそこの社員はG課長から次から次に仕事振られて結果を求められるから教えてる余裕ないだけだよ」
「たぶん、あなたからPさんの件を言われて部下にどうなっているか聞いたら、部下はG課長に怒られるの嫌だからPさんのせいにしただけじゃないかな?」
S係長のお言葉はありがたい限りですが、S係長は昔から部下や派遣社員など自分より目下の人に肩入れする傾向が強いことを知っているので念押しをしてみましょう。
「なるほど・・・そうするとPは全然悪くないってことですか?私自身話している中でずいぶん受け身だなと感じるところもあったんですが・・・」
S係長は少し苦笑いをしながら答えます。
「・・・うぅん、まぁ確かにそうかな。受け身なのは感じるね。まぁでもそこまで酷くないよ。彼女の部内事務的な仕事柄、総務のウチに関係のある仕事も多いけど、全部頼んだ社員に聞かないで私に聞きに来たり、自分で考えて仕事しているようだよ」
S係長の話を全て間に受けていいのかはわかりませんが、当事者以外の客観的な情報を得ることができました。
派遣営業は派遣先と派遣先の間に入る立場ですが、なにかトラブルが起きたときには出来るだけ客観的な視点でどちらか一方に肩入れしすぎることなく問題解決を図りたいものです。
今回のPさんのケースのように就業開始から2週間という短い期間での出来事では派遣先担当者や派遣社員の人柄も推し量りづらく、情報不足でなにか正しいのか判断しづらい。
そんなときにありがたいのがS係長などの「情報通」を自称している派遣先の担当者や、同じ派遣先で働く当社の派遣社員。できるだけ情報を仕入れて判断の材料を増やすのです。
S係長の話で私はこの件に対するスタンスを固めることができました。
- Pの仕事が全くないという状況の原因は大半が派遣先の受け入れ体制の不備の問題である
- それは数年勤めた派遣社員の後任が短期間に何人も入れ替わっていることが物語っている
- 再度G課長に職場環境の改善を申し入れる
- とはいえ、先方の指摘もあるためPさんに対して極端に受け身な仕事ぶりがなかったか確認をし、必要に応じて指導をする