【続編⑦】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】「仕事が全くない」と嘆く派遣社員Pさんのトラブル対応
私の担当派遣社員としてF社で働き始めた30代女性の派遣社員Pさんですが、「全く仕事がなくて毎日何をしていいのか困っている」という相談がありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
F社内の情報通を自称するS係長からのヒアリングによってPさんの仕事が全くない原因は次のようなものであることが突き止められました。
- 派遣社員Pさんの業務の大半は都度都度の複数の社員からの頼まれ仕事である
- 以前に数年勤めたいた派遣社員であれば社内システムや社内ルールを把握できていたため問題なくできた業務であったが、社内の様子がわからない新しい派遣社員からすると最初はある程度教えてもらわなければやりようがない仕事が大半であった
- G課長は忙しい社員のサポートをするためにPさんという派遣社員をアシスタントに据えている
- 社員たちは仕事が忙しすぎて、Pさんに仕事を頼みたいが、合わせて仕事のやり方を教えるほどの余裕がない
- 故に誰もPさんに仕事を頼まなくなった
- おそらく同じ原因で短い期間に複数の他の派遣会社の派遣社員が辞めている
派遣先に大半の問題があるわけですから、再度G課長に職場環境の改善を申し入れていこうと思います。
ただし、その伝え方は十分に注意しなければいけません。出入りの業者という弱い立場で闇雲に相手を責め立てても、「そんなことはない」と相手に居直られてしまえばそれまでです。
ましてや相手はG課長。前回のようにこちらに言わせるだけ言わせて急に梯子を下すようなことをされかねません。
それにしてもS係長の話が本当ならば、短い期間に派遣社員が何人も入れ替わり、Pさんも同じような状況にあって、G課長はなんとも思わないのでしょうか?
「派遣先に問題がある」ということは、イコールその職場の管理職のマネジメント能力に問題があるということです。
部下たちが自分の身を守るために口々に派遣社員を悪者にした嘘を言うような職場なのだとしたら不健全としか言いようがありません。
G課長との再度の打ち合わせの前にはPさんとも認識合わせをし、万全の準備で臨みましょう。
派遣社員Pさんとの打ち合わせ
派遣先に職場環境改善などの要求をするときにいくつか気をつけなければいけないことがあります。
どれだけ正論でも、誰だって「この職場には問題がある」などと外部の人間から言われれば気分を悪くするものです。
伝え方を気をつけることは当たり前ですが、私がG課長に「Pはもっとみなさんのお役に立ちたいと言っていて、仕事の幅を増やしたいのでPにもう少し仕事を教えてあげて欲しい」と伝えれば、G課長から部下の一人一人までに話が届く頃には「Pさんが派遣会社を通じて、ここの社員は全然仕事を教えてくれないひどい職場だと言ったそうだ」というような伝わり方になっていることも十分に考えられるのです。
改善要求をするにおいては事前に派遣社員と相談をしながら、どんな相手にどんなことをどんなふうに伝えるのかを共有し、そこから想定される結果や懸念なども一緒に考えるステップを踏むことが必要です。
私がどれだけ丁寧にPさんの話を汲み取ってG課長に改善要求をして、それが叶ったとしても、Pさんのモチベーションが極端に低かったり、仕事ぶりが悪かったり、文句を言うだけ言って途中で辞めてしまうというようなことがあれば、G課長に対する私の影響力は地に落ちてしまいます。
影響力が落ちるということは、G課長に私のいうことを信じてもらえず、交渉や調整ができなくなるということ。
人材派遣という三者間の契約では雇用は派遣会社、指揮命令は派遣先に分かれていますから、間に立つ派遣営業が交渉・調整ができなくなると派遣先担当者と派遣社員は同じ職場にいるのにお互いの真意が伝わらなかったり、両者に対して状況に応じたフォローが入らないため、ますます関係が悪化します。
派遣先への職場環境改善の要求に限らず、派遣先と派遣社員の間に立つ派遣営業の問題解決では、両方のステークホルダーの考えや感情、温度感をきちんと掴んでおかなければいけないのです。
どちらか片方が全くハンドリングできなければ、それは単なる独り相撲。
実務的にはこれから行うPさんとの打ち合わせでこれまで私が収集した情報をもとに、今後私がなにをどんなふうにG課長に伝えていくかを共有することで、起こりうる結果や懸念を共有し、合わせてそれに対するPさんの反応から彼女のこの仕事に対する意気込みを推し量り、G課長に対するアプローチの強弱を定めていくことになります。