【派遣業界裏事情】派遣スタッフが倒れて救急車で運ばれた!?派遣会社営業マンとしての対応方法は?
お客様から突然の電話
ある日、営業途中に普段は電話をしてこないような担当者から突然の電話がありました。興奮気味の担当者の話を聞くと、
- A社で就業をしているBさんが社内で資料を運んでいる途中に転んで、廊下に頭から倒れ込んで意識を失った
- しばらくしたら意識を取戻し、Bさんから話を聞いたところ、もともと貧血気味で、ここ最近体調が悪かったこともあって貧血で気を失って倒れたと思うとのこと
意識は取り戻したものの、頭を打ったからか気分が悪いというBさんを心配して、A社の担当者が救急車を呼び、これから搬送するとのことです。
派遣スタッフが救急車で搬送された時の派遣会社営業マンとしての対応方法は?
あまり頻繁にある話ではありませんが、派遣スタッフが救急車で搬送された時の派遣会社営業マンとしての対応方法についてご紹介します。
私は120名前後のスタッフさんを担当していますが、1-2年に1度はこの手の状況に直面します。スタッフさんご本人の安否が第一ですが、ポイントを押さえて対応をしないと後にお客様、派遣スタッフ双方から信頼を失うこともあり、慎重かつ丁寧な対応が必要です。
対応のポイント
念頭に置くべき対応のポイントは次の通りです。
- 派遣スタッフは派遣会社の社員であり、派遣先(就業先)の社員ではないという大前提を念頭に置いて対応する
- 自社の社員である派遣スタッフの安否確認の責任は営業マンである自分にあるという大前提を念頭に置いて対応する
- 倒れた派遣スタッフの対応をお客様任せにして受け身に対応しない
至極当たり前のポイントなのですが、職場で派遣スタッフが倒れ、救急車を呼ぶという非常事態にお客様も、倒れた派遣スタッフも、そして派遣会社の営業マンも冷静な判断力を失っています。
派遣会社の営業マンは若い方が多く、社会経験や修羅場の経験不足から特に冷静さを失う傾向がありますね。
就業期間が長いスタッフの場合は特にそうなのですが、派遣先の社員たちから見ても「職場の同僚」という意識が強く、救急車で運ばれるような非常事態では、雇用形態云々というよりは単に「職場の同僚として心配」「職場の同僚としてなんとか役に立ちたい」という気持ちが先行します。
この派遣先の皆様のお気持ちを否定する必要は全くないのですが、倒れた派遣スタッフの雇用主で、現場にいる担当者として、何をするべきかを考える冷静さが必要だということです。
現場に着くまでにやるべきこと
今回、私が遭遇したケースでは、すでにお客様が救急車の手配をし、これから救急車に乗って搬送先が決まるといった状況でした。
ですので、お客様には「とりあえず、御社の最寄駅に向かいますので、搬送先が決まったらメールか電話でお教えください、すぐに向かいます」とお伝えし、お客様先の最寄駅に向かいました。
すぐに現場に向かうことも重要ですが、ただ来たというだけでは芸がありませんので、多少遅れてでも必要な段取りを整えようと、社内関係部署にもろもろの確認を始めました。
- 貧血で倒れて頭を打って救急車搬送という状況は労災になるのかどうかの確認
- 救急車で運ばれた救急病院が労災指定病院であった場合とそうでなかった場合の派遣スタッフに案内する手続き方法の確認
- スタッフ登録時に確認している派遣スタッフの緊急連絡先の確認
ある程度情報が揃ったところで派遣先担当者より電話があり、搬送先の救急病院が判明し、現場に向かうことにしました。
現場についてからやるべきこと
救急病院につくと、派遣先担当者と女性社員数名が心配そうな表情でBさんについて話していました。
状況を聞くと、Bさんは救急車に乗っている間も意識はあって、多少具合は悪い様子だが話はできたとのことです。頭を打ったので、今はCTを行っていて、その後にMRIを行う予定とのこと。
派遣先の皆様はBさんが心配なので、ひと段落つくまで様子を見てから帰ろうと思っているとのことでした。
ここで派遣会社の営業マンに求められるのは次のような動きです。
- 派遣先の皆様に、「Bは当社の社員なので、私が最後まで責任を持って対応しますので安心してください。皆様ご予定もあると思うので、区切りのよいところで先にお帰りください」と、病院まで来てしまった手前、帰り辛い人もいることを想定し、こちらから区切りをつけてあげる
- 緊急連絡先に連絡し、ご家族に病院に来てもらう
- 今回は労災指定病院であったため、とりあえず労災での手続きをお願いする(その場合、一旦10割負担になるケースが多く、ご家族にお金の用意をお願いする)
つまり、雇用主である派遣会社の営業マンとして、「この場の責任を持つよ」と宣言して、段取りを整えるということです。
前述した対応のポイントにもあったように、現地についても、ただ慌てるだけで対応をお客様任せにするようではお客様から信頼を失いますし、派遣スタッフからも「頼りない営業担当」という烙印を押されてしまいます。
皆にとって慣れない状況ですので、正確な判断が難しいと思いますが、「派遣スタッフの雇用主は自分、その自分が何をすべきか?」という根っこの考えがぶれなければ、だいたいのことは乗り切れます。
その後の展開
その後、ご主人と連絡が取れ、すぐに病院に向かっていただくことにしました。
30分後にご主人が到着し、派遣先の皆様との挨拶や状況説明をしてひと段落ついたところで、派遣先の皆様には私から、
「では、ご主人もいらっしゃったところで、後はご家族での問題ということもありましょうから、いったん解散とさせて頂きましょう。この後、私だけ残ってご主人に労災関係の手続きを説明しますので、皆様先にお帰りください。また状況は私から皆様にご報告させて頂きます。今日は色々とご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした。」
とお伝えし、いったん解散をしました。
その後、ご主人に次のような労災関係の案内を行いました。
- 貧血で倒れて頭を打って救急車搬送という状況が労災に認定されるか否かは労基署が判断をする
- 状況からして労災判定されるかは微妙だったが、認定されればお金がかからないので、一旦労災で手続きしている
- 労災の場合、本日は10割負担になるが、急なことなので手持ちが足りなければ後日で良いという交渉を終えている
- もし、労災認定されなければ健康保険に切り替えて3割負担になる
- 何にせよ、明日一度当社の専門部署に連絡をしてほしい
BさんのMRIが終わったようで、医者に呼ばれ、私もBさんの顔だけ見ようと冒頭だけ同席をさせてもらいました。Bさんは顔色も良く、意識もしっかりとしていて安心しましたし、診断としても心配する内容ではありませんでしたので、少し安静にしてからお仕事に復帰して頂ければとお伝えし、あまりご夫婦の邪魔をしないように、席を立ちました。
病院を出た後すぐに、派遣先担当者に電話をし、診断後の様子も良く、心配はなさそうだと伝え、また改めて状況をお伝えにあがることを約束し、当日の対応を終えました。
私のホンネ
私も若いころに同じような場面に遭遇し、慌てるだけで何もできずに、お客様やスタッフさんからお叱りを頂きました。
慣れの問題ということもありますが、対応のポイントになるのは「派遣スタッフの雇用主は自分であり、この場の責任は自分が持つ」という意識を持つことです。
ポイントを踏まえて対応をすると、その意識は派遣先担当者にも派遣スタッフにも言葉にしなくても伝わりますし、「頼りがいのある営業マン」という評価にもつながります。
救急車で運ばれて・・・という状況への対応で不謹慎かもしれませんが、「ピンチはチャンス」という言葉の通り、非日常で冷静な対応ができたという事実は、お客様の信頼を得るという広い意味での営業活動に確実につながります。
一生懸命テレアポしたり、汗水たらして営業回りするよりも、相手の心にグッサリと印象が残るという点で、効果の高いアクションです。