【続編⑥】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】勤怠や交通費を水増し請求する派遣社員Dさんのクレーム対応
派遣先B社で外回りの営業職として半年働いてくれている30代男性の派遣社員Dさんですが、「営業成果が悪いだけでなく、営業報告書に矛盾が多く、仕事をサボっているのではないか?」との派遣先からクレームがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
派遣社員Dさんとの面談
「お一人で営業に出るようになった、ここ4ヶ月間の営業日報について一緒に全て見直しをさせて頂いてもよろしいですか?」
昨日1日だけでも営業報告書上のいくつもの矛盾が確認できました。過去4ヶ月間全てがこの調子だとは思いませんが、他にも数え切れないほどのおかしな点が見つかりそうです。
例えば昨日の営業報告書で「それは私の勘違いです。その会社は行っていないです」とDさんが認めた営業訪問。
タイムシートを確認したところ、この分の移動交通費はしっかり請求されています。
Dさんは「勘違い」と言いますが、そんな言葉でごまかせるはずがありません。この1件だけでも交通費の水増し請求であり、れっきとした不正行為なのです。
「・・・わかりました」Dさんは少し不満そうに答えます。
正直私も4ヶ月分の営業報告書を1日ずつ紐解き、タイムシートに計上された勤務時間や移動交通費と突き合わせていくつもりはありません。
これは根比べなのです。そのためにW課長にも事前にお願いをし、今日だけで終わらなければ、明日以降も明日Dさんが営業活動から帰って来る夕方にこのための時間をとっていいと了解をもらっています。
「Dさん、要するにW課長から結果が出ないのは日々の営業活動がしっかり行われていないんじゃないかと疑われているんですよ」
「私はどちらの味方というわけではありませんが、派遣先に言われっぱなしなのもシャクですから、この検証に付き合ってください。疑われっぱなしじゃ悔しいじゃないですか!」
「W課長にもタンカを切って、今日だけじゃなく明日以降もこの検証にDさんの時間を使っていいと許可を得てますから」
真剣な表情で話す私に、Dさんは呆然とした様子です。彼からすれば派遣先の了解のもとに、時間の制限なく自分の不正を暴く取り調べがされると言われたわけですから心中穏やかではないでしょう。
「・・・ちょ、ちょっと待って下さい。私も色々戻って事務処理をやらなければいけないので・・・」
逃げ腰になるDさんに、さらに追い詰める一言を突き付けます。
「いや、Dさん、私はW課長からDさんの時間をもらっている以上、私とこの検証を行うことは業務指示ですよ。私も日々の営業活動の時間を削ってこの作業をするわけですから、半端な気持ちで望んでませんよ」
私が「派遣先の指摘を覆すためにも、この検証作業が必要」と言うスタンスを取り、さらにはこの作業を「業務指示」と伝えることでWさんは完全に逃げ場をなくしました。
「私もそんなに時間が取れないので、W課長から営業報告書をお借りして、事前に調べて置いたんですよ」
「その中で疑問点が結構あって、それを一つ一つ確認させていただくと言うやり方でいいですか?」
Dさんは覚悟を決めた様子で「・・・わかりました」と答えます。
- 一人で外回りをし始めてからの4ヶ月間の営業報告書の訪問先と訪問時間をつき合わせたところ、30件ほどどれだけ商談を短くしても移動が間に合わないと思われるケースがあった
- 過去4ヶ月間、25社のお客さんの商談履歴に複数回同じ報告があった
- 過去4ヶ月間、「成約確度90%」とする商談が12件あったが、一つも制約していない
アシスタントの事務の人に手伝ってもらったものの、ここまで調べ上げるのには結構苦労しました。私が提示した質問にDさんは驚いた表情をしています。
「まずは移動時間の辻褄の合わない商談なんですけどね・・・例えばこことかこことか・・・」
資料の該当箇所を指で指し示しながら説明します。
「これは実際に訪問をされているんですか?それともさっきみたいに勘違い?」
Dさんは少し悩んでから答えます。「・・・勘違いですね・・・」
「そうですか・・・これだけ件数が多いと勘違いや書き間違いでは済まないかもしれませんね・・・」
「とりあえず、この分の交通費は派遣先に返還しますし、次の給与から天引きしますね」
Dさんは無言のままです。
「次に商談履歴に複数回同じ報告があるっていうのはどういう状況でしょうか?」
「例えばF社の営業報告書で、ここ2ヶ月間に5回の訪問があるんですが、みんな営業報告の内容が一緒なんです」
「これって、実際に訪問しているんでしょうか?」
Dさんは少し考えてから答えます。
「・・・いや、それは・・・実際は全部は訪問していなくてで電話での進捗確認も含まれてます」
「そうですか・・・そうなるとやはり交通費が請求されているのがおかしいですし、じゃぁその間は何をしていたのか?って話になっちゃいますね・・・」
「その間は飛び込み訪問をしていました」と、苦し紛れに発したDさんのコメントを逃しません。
「そうなると、その飛び込み訪問の営業報告がされていないってツッコミに繋がりますよ・・・」
「いずれにしても、この内容だと業務怠慢って言われても反論できないですね・・・そう思いませんか?」
Dさんは渋々といった様子で頷きます。
ここまでで訪問履歴の矛盾を指摘して実際には商談を行なっていなかっっという業務怠慢と、それに伴う交通費の架空請求があったことについて本人と認識合わせができました。
今回の面談の目的を達するまであと一歩です。