【続編⑧】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】勤怠や交通費を水増し請求する派遣社員Dさんのクレーム対応

【続編⑧】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】勤怠や交通費を水増し請求する派遣社員Dさんのクレーム対応

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派遣先B社で外回りの営業職として半年働いてくれている30代男性の派遣社員Dさんですが、「営業成果が悪いだけでなく、営業報告書に矛盾が多く、仕事をサボっているのではないか?」との派遣先からクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

対応経緯

「これまでの不正を明らかにして、きちんと謝罪した上で先方が引き続きDさんにチャンスをくださるかどうかって事じゃないですか?」

虚偽の営業報告と業務怠慢、交通費の不正請求を「勘違い」で乗り切ろうと考えたDさん。世の中はそんなに甘くはありません。

とはいえ労働者の権利意識は歪な形で肥大していますし、労働行政も労働者保護を是としています。誰もが自分の都合よく出来事を発信するのことのできるSNSなどのメディアも普及していますし、今回のように明らかにDさんに非があるようなケースでも、その決着においては証拠をもとにした一方的な言い渡しではなく、Dさんの言質を取りながらの対応が必要なのです。

業務上の指揮命令は派遣先、雇用の責任は派遣会社と、直接雇用に比べてステークホルダーが多く、互いの利害によって考えにズレが起こりやすい人材派遣という契約形態では特に揚げ足を取られやすく、後から「実はこう思っていたが一方的に責め立てられたので怖くていえなかった」とか「派遣先は了解してくれていたのに派遣会社は取り合ってくれなかった」というような「後出し」のないよう、きっちり合意を取らなければいけません。

派遣社員Dさんとの面談

「じゃぁ、正直に話せば引き続きここで働けるってことなんですか?」

B社での就業継続に執着するDさん。たしかに仕事を失うのは困るのでしょうが、不正が白日の元に晒され、派遣先からの評価も地に落ちたような状態で引き続き働きたいと希望することに不自然さを感じます。

この仕事にやりがいを感じているのであればもう少しまともに働いているのでしょうし、何か理由があるに違いありません。

「いや、正直に話せば引き続き契約が延長されるなんていう保証はないですよ」

「普通に考えれば、営業報告書の虚偽や交通費の不正請求っていう今わかっている不正行為だけで十分に雇い止めの要件に当たりますから」

「正社員で言えば解雇までいくかわかりませんが、なんらかの処罰がされるレベルですよ」

私からの説明にDさんは噛み付いてきます。

「雇い止めって契約の更新がないって事ですか?勘違いで辞めさせられるなんておかしいです!不当解雇ですよ」

この状況で不当解雇という神経が理解できませんが、不当な雇い止めや解雇と主張されたからにはきちんと反論をしておかなければなりません。

「Dさん、その言い分は苦しいですよ・・・まず辞めさせられるのではなく、契約の更新がないかもしれないってことです。言い方が理屈っぽいかもしれませんが」

「派遣社員は有期雇用契約ですから、その契約期間内に辞めてくださいとなれば解雇です。そして雇い止めとは契約の更新をしない事ですが、契約更新が3回以上もしくは就業期間が1年以上の労働者の有期雇用契約を更新しないと判断したときのことを指します」

「DさんはB社でご勤務いただいてから契約更新としては1回、就業期間としては半年ですから、今の契約をもってDさんの契約を更新しないとしても法的に問題はありません」

「そもそも解雇も雇い止めも正当な事由があればなんら問題のある行為ではありませんし、今回の不正は解雇の要件にあたるかは今ここで判断できるものではないにしても、雇い止めの要件としては十分なものだと思っていますよ」

「それに、勘違いが、悪意を持って行われたかは関係ありませんよ。先ほどもお伝えした通り、結果として事実としてどうだったかということでしょう?」

相手に口を挟ませる隙間なく一気にまくしたてます。Dさんの次回契約を更新しないことになったとしても当社、派遣先とも法的に全く問題はありませんから、このまま法の解釈について話を煮詰めて行ってもあまり意味はありません。

「・・・いや、でも納得いきません・・・」

発言の根拠を失った者に残されるのは感情論くらいですが、Dさんを納得させる必要はないまでも、後からありもしない話で足を引っ張られるのは面倒です。法律論争からは離れて本音ベースの議論に切り替えましょう。

「Dさんね、この状況で不当解雇だなんて単語を使われたら、こっちだって構えますよ」

「Dさんがこれだけの不正の事実があっても契約が更新されなかったら納得いかないのは十分に分かりました」

「でも、疑問なんですよ、なんでそこまでB社での就業にこだわるんですか?普通に考えたらここまで不正が表沙汰になったら働きづらいと感じませんか?何か評価を一新するような材料でも持っているんですか?」

Dさんは迷った表情を浮かべ、少し時間を置いてから答えます。

「・・・職場に仲間がいるんですよ。これからも彼らと一緒に働きたいなと思っているだけです」

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