【続編⑨】【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】勤怠や交通費を水増し請求する派遣社員Dさんのクレーム対応
派遣先B社で外回りの営業職として半年働いてくれている30代男性の派遣社員Dさんですが、「営業成果が悪いだけでなく、営業報告書に矛盾が多く、仕事をサボっているのではないか?」との派遣先からクレームがありました。
その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。
派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。
対応経緯
虚偽の営業報告と業務怠慢、交通費の不正請求といった数々の指摘し、Dさんに契約の継続は難しいことを伝えると「不当解雇だ!」などと見当違いな反論をしてきます。
これだけ不利な状況で、なぜ職場に残りたいと思うのか不思議に感じた私はその理由を尋ねてみると、「職場に仲間がいるんですよ。これからも彼らと一緒に働きたいなと思っているだけです」とこぼしたDさん、本当に言葉通りに受け止めてしまっていいのでしょうか?
派遣社員Dさんとの面談
「仲間・・・ですか?それは職場で仲良くなった人がいるってことですか?」
Dさんのコメントを不審に思った私は聞き返します。
「・・・え、えぇそうです。仲良くなった奴が何人かいましてね」
どうにも怪しい話です。友人であれば職場を変えたところで友人関係を続けていけばいいだけの話のはず。
「まぁ、わかりました。Dさんは今後もB社での仕事を続けたいというご希望だということですね」
「ただ、状況としては就業の継続というより、目の前の不正によって派遣先に与えた不利益を返還しなければいけないと思っています」
「不正請求した交通費もそうですし、営業報告書と矛盾する勤務については勤務したとみなしてもらえないかもしれません」
「そうなれば不正請求した分の交通費だけでなく、勤務とみなせなかった時給分もお返し頂くことになりますけど、それはご理解いただけますか?」
Dさんのように意図的に理屈を理屈として受け付けないような問答をする人には、こちらから何かしらの要求をする時には高めのボールを投げていくことが重要です。
派遣先B社のW課長からすればDさんが揉め事なく辞めてくれれば過去の出来事は問わないというスタンスですし、不正請求した交通費はおろか、矛盾する勤務時間分の請求の返金など要求されていません。
先々、B社から何かしらの返金要求があったときに備えるという意味合いもありますが、どちらかと言えばDさんに対して結構な額になるであろう金銭というプレッシャーを与えることで、今後の交渉をやりやすくする狙いが強いのです。
「え、時給を返金するんですか?それはないですよ」
慌てた様子で反論するDさん。狙い通りの反応です。
「あくまで可能性ですよ。ただ物証もあるわけですから働いていない分の給与を返金してもらうというのは当たり前のことです」
言葉には出ないものの悔しさからか唸るような声を出すDさん。
「では、一度派遣先と話してみて、またご連絡しますね」
Dさんを会議卓に残し、私は足早にB社を後にしたのでした。
同じ職場のベテランFさんにヒアリング
Dさんとの話を終えてB社から最寄りの駅に向かう途中で私は同じ職場に勤務しているFさんの携帯に電話をします。
Fさんは営業センターの立ち上げ前からB社で営業職として勤務をしてくれている派遣社員です。W課長もコンスタントに数字を出してくれ、後輩の面倒見の良いFさんを頼りにしていて、彼のもとには上からも下からも営業センター内の様々な情報が集まるのです。
「あ、Fさんですか?もう仕事終終わられました?ちょっとアドバイスを頂きたいことがあって、仕事帰りで申し訳ないんですけど、少し付き合ってもらえません?」
Fさんとはずいぶん長い付き合いです。何かとトラブルの多い営業職の派遣社員ですから、何かあるたびにアドバイスをもらっているのでした。
会社帰りということもあり、少しお酒も交えながら話をします。
「それで、どうしたの?なんか聞きたいことあって呼んだんでしょ?」
色々と掘り下げて聞きたいことはありますが、赤裸々にDさんの不正行為の話をするわけにもいきません。
「いや、それがね、W課長からDさんの営業成績のことでお叱りを頂いちゃいましてね・・・」
ハイボールを片手に少し愚痴めいた調子で話し出します。
「ベテランのFさんだから、彼の営業活動で何か弱点とかお耳に入っていないかなって思って・・・」
「あぁ、あいつかぁ」Fさんは何か心当たりのあるような反応です。
「あいつはさ、最初はすごい感じのいい奴だと思ってみんな大事に育てようとしてたんだけど途中から化けの皮が剥がれ始めてさ・・・」
「W課長は知ってるのかなぁ・・・あいつどうやらセンター内の若い奴に声かけまくってネットワークビジネスのグループを作ってるみたいなんだよ」
「営業行くって言って、すぐに近くの喫茶店に陣取ってさ。仕事もしないでせっせとスマホで手下に指示出してるみたいなんだよね」