【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】上司にパワハラの濡れ衣を着せ、辞めさせようとたくらむ派遣社員Kさんのクレーム対応

【派遣会社営業担当のクレーム対応報告】上司にパワハラの濡れ衣を着せ、辞めさせようとたくらむ派遣社員Kさんのクレーム対応

私の担当派遣社員として派遣先のB社に勤務してくれている40代男性のKさんですが、Kさんの所属するチームのリーダーである他の派遣会社の派遣社員Aさんに対してとても反抗的で、指示を聞かずに業務に支障をきたしており、どうにかして欲しいという派遣先からのクレームがありました。

その際の経緯や対応について、営業日報形式でご紹介します。

派遣会社営業担当が、どんな事を考えて問題解決をしているのかがお分かり頂けます。是非ご覧ください。

クレーム経緯

●派遣社員KさんはB社でコールセンターのオペレーターとして1年近く勤務している

●2ヶ月前から派遣社員Kさんの所属するチームリーダーとして他の派遣会社の派遣社員Aさんが着任した

●当初は問題なかったが、派遣社員Kさんとリーダーの派遣社員Aさんの反りが合わないのか、Kさんが徐々にリーダーAさんの指示を聞かないようになった

●派遣先担当者から派遣社員Kさんに注意をしたところ、

「派遣社員同士で指揮命令関係になるのは法律的におかしい。なので指示に従わないのは問題ないと思っている。またAさんは自分が正しく、すべて私が悪いように主張しているようだが、全くの嘘で、私はAさんからパワハラを受けている。法律違反の指揮命令と、その上のパワハラについて、然るべきところに訴え出たいと思っている」

との反論があった

●派遣先としては両者の主張や、チームの他のメンバーの話を聞くに、他社派遣社員であるリーダーAさんの主張の方が正しいように感じられるが、主観的な判断も良くないので、派遣社員Kさんと面談をし、事情を聞いて欲しいとの要望であった

●また、この派遣社員KさんとリーダーAさんのいざこざが原因でチームの雰囲気も悪くなっており、業務に悪影響になっているとともに、Kさんが「派遣同士で指揮命令されるのはおかしい」という論法でリーダーAさんの指示を拒むので、マネジメントが効かなくっている。一刻も早く状況を打開したいとの要望であった

対応のポイント

私の担当の派遣社員ながら、こんなことをいうのもなんですが、Kさんは就業開始当から自分本位の主張が多く、プライドが高い印象があり、職場によってはハレーションを生む可能性があるなと懸念をしていました。

だからといって彼の言っていることが全て間違っているとは思っていませんが、本人面談を行う前に、ある程度の理論武装は必要です。

今回のクレームで、現時点での対応のポイントは次の2点になります。

①派遣社員同士の指揮命令関係は違法なのか?

派遣法やその他の労働法規を確認する限り、派遣先の指揮命令や管理下であれば、派遣社員が派遣社員を指揮命令することを規制する定めはありません。

また、派遣元の違う派遣社員同士が指揮命令関係になることについても特段の規制はありませんでした。

つまり、リーダーAさんがKさんに指揮命令を行うことになんの問題もないのですが、ここまでこじれた状況では、実際問題として、なんらかの対応が必要そうです。

②ハラスメント被害の主張にどのように対応するか?

派遣先担当者がリーダーAさんと、チームメンバーそれぞれに確認をした限り、リーダーAさんのKさんに対するパワハラは一切なかったということですが、次の点に注意しての対応が必要です。

  • Kさんとの面談においては、派遣先担当者の言い分を正しいものとして話すのではなく、「相手側の認識はこのようだが、Kさんの認識はどうか?」といった両者の意見を聞く、中立的なスタンスをとる
  • とはいえ、派遣社員であるKさんの味方は最終的には派遣会社の担当営業担当である私しかいないわけで、Kさんに寄り添う姿勢が必要

派遣社員Kさんとの面談

前述の対応のポイントをもとにKさんと面談を行いました。

  • 派遣先との商談の際にKさんが仕事上の人間関係でやりづらそうに見えるという話を聞いた。何か困っていることはあるか?

派遣先からの詳細情報をフックに話を始めると、どうしても派遣先寄り、他社派遣社員のリーダーAさんよりの印象になってしまうため、あくまでも派遣先が商談時にこぼした、ちょっとした一言が気になって、様子を聞きに面談の機会を設けたというような話始めにしました。

Kさんは「我が意を得たり」と話始めてくれました。

  • このコールセンターではオペレーターの上司であるSVが派遣社員で、派遣社員が派遣社員に指揮命令をしている法律的に異常な状況が恒常化している
  • 私のチームでは色々な派遣会社の派遣社員がおり、私の上司であるSVは他の派遣会社の派遣社員。違法に違法の上塗りをしていておかしい
  • しかも、私の上司である派遣社員のSVは、無理難題と思える指示を頻繁にしてきてパワハラだと思っている
  • 派遣社員同士による指揮命令の件、パワハラの件含めて、しかるべきところに相談しようと思っている

一通りのKさんの主張を聞いて、次のように答えました。

  • 色々と想いがあるのは理解した。また様々持っている疑問や想いをしかるべきところに相談されるというのは個人の判断なので、納得いくようにされたらいいと思う
  • 派遣社員同士の指揮命令関係は、法律上問題なかったと思うが、私も気になるので調べさせて欲しい

しかるべきところに相談するというKさんに対して、「止めも勧めもしない」と言う私のスタンスに、Kさんは戸惑ったようでした。

Kさんからすると、今日の私との面談では、

「先日派遣先担当者を脅かしてやったから、慌てて派遣の営業がやってきた」と、派遣会社を通して、再度 派遣先やリーダーAさんに揺さぶりをかけてやろう」

くらいに思っていたのかもしれません。

続いてリーダーAさんからのパワハラの内容についてヒアリングをします。

  • パワハラの件について、どういった被害を受けているのか詳しく教えて欲しい。それをもとに派遣先と連携し、そのリーダーの派遣会社経由で改善を促したい

私からの質問に対して、Kさんの主張は次のようなものでした。

  • リーダーAさんは着任早々から私が気に入らないのか、他のオペレーターと比べて、明らかに自分への態度がぞんざいで冷たい
  • クレームでお客様から「上司に変われ」と言われても、なんだかんだ理屈をつけて拒否する
  • 他のオペレーターには叱責しないが、自分には細かいミスで叱責する
  • 話している途中で舌打ちしたり、話を終えた去り際に聞こえないような小さい声で「バカ、クズ」と言った侮辱をする

状況は理解したので、先方の言い分も聞いた上で早々に対応することを伝えました。

あわせて、改善は促しつつも、今のチームが居づらいようなら派遣先にチーム替えの打診をするかどうか確認します。

  • 改善を促すにしても、すでに人間関係がこじれているのであれば、チームを変えてもらうなどの派遣先への交渉は必要か?

するとKさんは興奮した様子で、

「なんで自分がチームを変わらなきゃいけないんですか!!ひどいパワハラをしているリーダーAをやめさせるのが筋じゃないんですか!?」

と激昂しています。

まぁまぁと、落ち着かせつつ、どちらの言い分が正しいかはまだわからないものの、Kさんの目的はリーダーAさんを辞めさせることなんだということがはっきりしました。

派遣先との打ち合わせ

Kさんとの面談を終え、派遣先担当者と打ち合わせをしました。

論点は次の3つになります。

  1. KさんがリーダーAさんの指揮命令に従わない件
  2. Kさんの主張するリーダーAさんからのパワハラの件
  3. 上記2つをもとに訴え出ると主張している件

派遣社員KさんがリーダーAさんの指揮命令に従わない件

Kさんは派遣社員同士の指揮命令関係は違法だと主張していますが、派遣法や他の労働法規を見てもそのような事実はありません。

となれば、リーダーAさんの指揮命令に従わない現状は、業務放棄であり、本人に注意喚起が必要です。

派遣先にもそのような前提をお話しし、次のようなことをお願いしました。

  • 近日に私がKさんと面談を行い、派遣社員同士の指揮命令は違法でなく、リーダーAさんの指揮命令に従うよう注意する
  • リーダーAさんにその状況を共有して頂き、雇用主である派遣会社が「リーダーAさんの指示に従うように」と注意をした後に、リーダーAさんが行った指揮命令にKさんがどのような対応をしたか、逐次記録を残して欲しい

派遣先には概ね納得して頂きましたが、一点だけ「業務指示に従えというと、またパワハラ云々で言い返してくるのではないか?」という質問を頂きました。

その質問には次のように答えました。

  • KさんがリーダーAさんの指示に従わない理由である「派遣社員が派遣社員に指揮命令をするのは違法」という論拠はなくなった
  • Kさんが指示に従わない理由は、リーダーAさんの指示がパワハラだという点のみ
  • 「業務指示=パワハラ」というような一般的な理解はない
  • リーダーAさんの指示をパワハラだとして従わなかった場合、その内容がパワハラにあたるのかどうかだけで問題解決ができる
  • またその内容がパワハラでないという結論になった場合、Kさんが業務指示に従わなかったという履歴がのこる

「派遣社員同士の指揮命令関係が違法である」ということと「上司である派遣社員からパワハラを受けている」という2点の絡め手であったKさんの主張に対する問題解決が、いまやパワハラの有無のみに絞られており、以前より問題解決がし易くなっていること伝えると安心したようでご納得を頂きました。

派遣社員Kさんの主張するリーダーAさんからのパワハラの件

Kさんからヒアリングした、リーダーAさんの行ったパワハラだと主張する事柄を伝えました。

最初の反応として、「まぁよくもこんなデタラメを・・・」とのコメント。

リーダーAさんは温厚で常識的な男性で、依怙贔屓のような子供じみたことや、「バカ、クズ」などと聞こえがしに言うようなことは考えづらいとのこと。この内容をそのままAさんに聞いたら、むしろ怒ってしまうのではないかと懸念されています。

そこでパワハラの件は次のようなことをお願いしました。

  • リーダーAさんからKさんへの態度や態様については、受け手であるKさんの受け止め方次第であり、すでにリーダーAさん本人や周りのスタッフの方にパワハラの事実はないとご確認を頂いているので、これ以上の後追いはしない
  • Kさんの主張する、クレームがあってお客様から上司に代わって欲しいとの要求にリーダーAさんが応じてくれないと言う点については、応対記録と録音されている通話記録で後追いができ、ここ2週間程度で、リーダーAさんが、Kさんに代わってお客様対応をした記録をさがしてほしい
  • その結果、リーダーAさんがKさんをフォローした記録が複数あれば、Kさんの話の辻褄が合わなくなり、それをフックに再度パワハラと主張する事柄について面談で掘り下げてみる

訴え出ると主張している件

私がKさんに「訴え出ることは止めも勧めもしない」と伝えていることを報告しました。

派遣会社側で止めないのか?と少し驚かれましたが、経験上そこで止めると次のような状況になるとお伝えし、理解をしてもらいました。

  • 訴え出ることを止めるために、Kさんの交換条件を飲まなければいけないという状況になりやすい
  • 訴え出ることを止めたと言う事実が、のちにKさんが当社に対してカードを持たせることになり、今後のKさんと当社の交渉が極端に不利になる
  • 実際に訴え出た時に、その訴えた先に「派遣会社が訴え出ることを止めた、後ろ暗いことがあるからだ」と主張され、その後のやりとりが不利になってしまう

おそらく次回のKさんと私との面談後に、もしくはその後のリーダーAさんからの指揮命令後に、パワハラ被害を主として訴え出る可能性が高く、そうなった場合に備えて、事前に社内の関係部署に根回しをして頂くようにお願いしました。

また、Kさんが訴えでる先として想定される選択肢をお伝えします。

  • 派遣先のコンプライアンス相談窓口
  • 労基署
  • 自治体などの相談窓口
  • 弁護士や司法書士
  • 労働組合やユニオン

Kさんがどういった行動に出るのかわかりませんが、念には念を入れての対応が必要です。

派遣先への根回しを終えて、日を改めて、Kさんと面談を行うことにしました。

派遣社員Kさんとの2回目の面談

色々な準備をした上で、2回目のKさんとの面談に臨みました。

Kさんの主張や要望は次の通りです。

  • 派遣スタッフ同士の指揮命令関係は違法なので、派遣スタッフであるリーダーAさんの指揮命令に従う必要はない
  • リーダーAさんからパワハラを受けている
  • 両方の理由でしかるべきところに訴え出る
  • パワハラを行うリーダーAさんは辞めるべきだ

前回の面談では、派遣社員同士の指揮命令関係については持ち帰って調べる、パワハラはKさんのいう被害内容を踏まえて派遣先に確認する、訴え出るという点は「止めも勧めもしない」と返答しています。

一つ一つについてKさんと話し合っていくことにしました。

派遣社員同士の指揮命令関係の件

まずは私から話を始めました。

  • すでに自分でも調べているかもしれないが、派遣社員同士の指揮命令関係は派遣法や他の労働法規を確認しても規制はなく、当社としても問題ないと思っている
  • それを前提とすると、Kさんには、他社の派遣社員のリーダーAさんの指揮命令に従って貰わなければいけない

まだ話の途中だったのですが、早速Kさんが反論をしてきました。

「そんなのは嘘っぱちだ!」とか、「お前はパワハラ上司の言うことを聞けって言うのか!?」とか、「死ねって言われたら、死ななきゃいけないのか!?」

等々の罵詈雑言に近いものです。特に「死ねって言われたら、死ななきゃいけないのか!?」と言うセリフは小学生のウチの息子も言ってたなぁと思いつつ、冷静に受け答えました。

  • まず、私はKさんに「お前」呼ばわりさせる覚えはないので、今後の話し合いではやめてほしい
  • 心情的に納得いかないところはあるかもしれないが、今後リーダーAさんからの正当な指揮命令を拒むことは義務を果たしていないと捉えられ、雇用主である当社として、就業規則にのっとった訓戒などのしかるべき対応をせざる得なくなる
  • Kさんには当社と派遣先の派遣契約に基づいて就業してもらっており、派遣先としても、指揮命令関係が機能していない状況を見過ごせるはずがない
  • 派遣先は、これまでKさんがリーダーAさんの指示に従わなかった履歴も記録に残しているようだ
  • 派遣社員同士の指揮命令関係については、法的にも問題なく、そんな中で、これまでのKさんが指揮命令に従わなかった記録がとられ、これからも記録されていくとしたら圧倒的にKさんの分が悪い
  • Kさんの営業担当として、出来るだけKさんを守りたいと思うが、この状況では守りきれない
  • パワハラ云々の問題は別として、正当な指揮命令は従うべきだと思うし、KさんもリーダーAさんの指示内容を記録しながら様子を見ていくのがいいと思うがどうか?

相当不満そうでしたが、派遣社員同士の指揮命令関係が適法であることは、あがらいようがない事実ことを理解したようでした。

しかし、重ねて次のような反論がありました。

  • 指揮命令のことはわかった。しかし、雇用主である派遣元として、パワハラを行う上司の指揮命令に従えと言うのは正しいのか?
  • 派遣元には派遣先の広い意味での職場環境を改善する義務はないのか?

Kさんが派遣社員同士の指揮命令関係には理解をした前提で、反論をしてきたので、続いてKさんの主張するリーダーAさんからのパワハラに話題を移しました。

リーダーAさんからパワハラを受けているという主張の件

Kさんが派遣社員同士の指揮命令関係を適法であると認めざる得なくなったカウンタートークとしてか、指揮命令を行うリーダーAさんの資質に絡めて反論がありましたので、話をリーダーAさんによるKさんへのパワハラに移しました。

まずは私から話し始めます。

  • KさんのいうリーダーAさんのパワパラは次の4点だと理解しているが間違いないか?
  1. リーダーAさんは着任早々から私が気に入らないのか、他のオペレーターと比べて、明らかに自分への態度がぞんざいで冷たい
  2. クレームでお客様から「上司に変われ」と言われても、なんだかんだ理屈をつけて拒否する
  3. 他のオペレーターには叱責しないが、自分には細かいミスで叱責する
  4. 話している途中で舌打ちしたり、話を終えた去り際に聞こえないような小さい声で「バカ、クズ」と言った侮辱をする

Kさんは間違いないと答えます。

  • 派遣先担当者に、リーダーAさんとその他の派遣社員数名にも確認を取ってもらったが、いずれもそんな事実はないとのことだった
  • また、リーダーAさんがクレームのエスカレーション(引き継ぎ)を拒否するとの話であったが、これもKさんの応対記録から判断できるクレームと、リーダーAさんの応対記録、またKさんとリーダーAさんの通話記録(録音)を検証すると、リーダーAさんがKさんからのクレーム対応を拒否しているという事実は確認できなかった、何か誤解がないか?

オペレーターやリーダーが専用システムに入力するお客様との電話応対の応対記録と、その応対の通話の録音まで検証されていることにKさんは動揺したようでした。

Kさんは顔を真っ赤にして「そんなの捏造だ!嘘だ!」とまくし立てます。

感情的にまくし立てるKさんに、少し被せ気味に次のように話しました。

  • 私もKさんが正しいのか、リーダーAさんが正しいのか正直わからない
  • だが、Kさんの主張にリーダーAさんは憤慨していて、いわれのないパワハラの濡れ衣を着せられたということで、名誉毀損で訴えることも考えていると言っている
  • 少なくとも派遣先から情報で、リーダーAさんが、のらりくらりとKさんからのクレームのエスカレーションを拒否したという事実はなく、これを覆すにはKさんもなんからの証拠なり、記録なりを示さないといけないと思うし、結果Kさんの主張が事実でなかったり、勘違いであったなら謝罪をする必要があると考えている

Kさんは言葉に詰まりつつも、「お前は派遣先や他社の派遣社員の味方をするのか!?」「少しは俺を信じようというしせいがないのか!?」とまくしたてます。

私はKさんに次のように返しました。

  • さっきもお願いしたが、私はKさんに「お前」扱いされるいわれがない。話を進める前に、まずはその件を私に謝罪してもらえるか?信頼関係以前の礼儀の問題

Kさんは

「なんでお前に謝る必要があるんだ!?」

というので、私も負けじと

「では、私もKさんをお前呼ばわりで構わないんですね?そんな子供じみたやりとりはしたくないので、謝罪してもらえないなら、リーダーAさんから名誉毀損で訴えられるかもしれないという件は個人間のいさかいですから、私は関わりませんよ?」

と答えます。

5分くらいだったでしょうか、Kさんはずっと黙っています。

こういったときは沈黙に屈したほうが負けです。

よくこの手の場面を経験しているので私は慣れたものなのですが、Kさんは我慢できなかったようです。

Kさんが「謝ればいいのか・・・すみません」というので、話を続けました。

なんの理由にせよ、紛糾している相手に謝罪をしたという事実は大きく、謝った方は形勢が悪くなります。

詰め将棋のようなもので、もうそろそろ王手に近づいているなと感じ、クロージングを意識して話を進めました。

  • Kさんの主張がどこまで事実で、どこまで事実ではないのかわからないが、私は理由なくKさんの味方をするつもりはない
  • いまのところ、Kさんの分が悪いし、形勢を変えるだけの材料もない。私の考える落とし所は、リーダーAさんに派遣先を通じて謝罪すべき点は謝罪し、一旦お互いがお互いを訴えるといった異常な状況を解決するべきだと思う
  • その上で、私が派遣先にお願いをし、Kさんの所属チームを変えてもらうのが得策だと思うがどうか?

派遣社員同士の指揮命令は法的に問題ないのでリーダーAさんの指揮命令には否が応でも応じなければならない、パワハラの件は逆に先方から証拠を突きつけられ、しかも訴えるとまで言われては、Kさんもあまりに不利だと感じたのか、しぶしぶ私の提案に乗りました。

2回目の派遣先との打ち合わせ

Kさんとの面談を受け、面談でのやり取りを報告するとともに、Kさんに提案をしたチーム変更についてもお願いをしました。

派遣先からは次のような返答がありました。

  • リーダーAさんがKさんを名誉毀損で訴えると言った件は、根も葉もないことを言われて呆れ果て、半ば勢いで言っているだけなので、Kさんから謝罪があったことを伝えれば問題ないと思う
  • Kさんを別チームに移すことについては、一時的な対応としては賛成だが、今後も今回のような騒動を起こすのであれば就業継続は難しいと思っている
  • 明日からKさんを別チームに移す段取りをするので、Kさんには意識を変えて頑張るように言って欲しい

派遣先との商談を終え、とりあえず一旦騒動はおさまったと安堵しました。

しかし、KさんのリーダーAさんい対する執拗とも言えるこだわりはこれだけではすまなかったのです。

しばらく経ったある日、派遣先から連絡が・・・

KさんとリーダーAさんの一件がひと段落ついた数週間後、派遣先で在るB社の担当者から話があるのできて欲しいとの連絡がありました。

褒められるようなことは起こるはずがないなと思いつつ、足取り重くB社に向かいました。

B社で打ち合わせが始まると、担当者から次のような話がありました。

  •  B社の社内コンプライアンス窓口に匿名で内部告発があった
  • 訴えの内容は次の通り
  1. B社の○○にあるコールセンターでリーダーをしているAさんは多数の部下に対してパワーハラスメントを行なっている
  2. リーダーAさんは反社会勢力と繋がりがあるともっぱらの噂で、皆怖くて、されるがままになっている
  3. B社は反社会勢力と繋がりがあるような人物をこのまま働かせるのか?
  4. 早急に対応をしてくれなければメディアに告発する

派遣先担当者はうんざりした様子で、私に告発文書を見せてくれ、次のように言いました。

  • この告発はKさんだと思っている
  • センター内に掲示してあるコンプライアンス窓口のポスターには、「コンプライアンス窓口に相談をしたことで、不利な扱いを受けることはありません」「相談者が誰かは秘匿されます」と記載されており、相談者を特定したり、特定されたことをKさんに気取られるわけにはいかない
  • コンプライアンス窓口は本社機能であり、担当者がこの件に関係するセンターの社員、訴えを受けたリーダーAさん、リーダーAさんのメンバー全員にヒアリング面談をする
  • 派遣社員の管理担当である私は、当事者が派遣社員であることから膨大な報告モノの対応をしなければいけなくなる
  • 感情的には、すぐにでもKさんにお引き取り頂きたいが、「この件が発端で辞めさせられた」と言われれるのも困るので放っておくしかない

派遣先担当者の愚痴交じりの説明を受けて、私は申し訳ない思いでいっぱいでした。

確かに匿名の内部告発である以上、うかつにKさんにアプローチをすることもできません。

派遣先担当者やその他の社員の皆様、なによりリーダーAさんに申し訳ないと思いつつ、ひたすらお詫びをするしかありませんでした。

その上で、派遣先担当者と次のようなことを取り決めました。

  • あくまで本社のコンプライアンス窓口担当者の対応に任せ、派遣先担当者も私も、この件でKさんにはなにもアプローチしない
  • お互いにKさんからなんらかのアクションがあった場合は情報共有する

私も派遣先担当者も、今現在できることはあまりなく、本社コンプライアンス窓口の担当者からのアクション以降に事態が動き出すという認識になりました。

派遣先コンプライアンス窓口担当者からのヒアリング面談

派遣先担当者との打ち合わせから数日後、再び連絡があり、本日より数日に渡って、まずは社員へのヒアリング面談、その後にリーダーAさん、最後にメンバー全員との面談があるとのこと。

Kさんからなんらかの反応があると思われ、何かあったら教えて欲しいとの依頼でした。

派遣先担当者は、どうやら本当にこの件にかかりきりなようで、かなりピリピリした様子でした。

B社は大企業であり、こういった内部告発の仕組みも整っていて、立派な会社だなと感心しつつも、今回のように悪用をされるケースもあるわけで、考えようだなぁと思ってしまいます。

面談の数日後に派遣先担当者から再度の連絡

面談の数日後に派遣先担当者より打ち合わせがしたいとの連絡があり、打ち合わせとなりました。

関係社員やリーダーAさん、メンバー全員との面談が終わり、コンプライアンス窓口担当者から情報共有があったとのことです。

  • リーダーAさんは匿名での内部告発に対して、「それはKさんからの告発に違いない!!なんでこんな仕打ちを受けなければいけないんだ!?」とかなり激昂していた
  • Kさん以外のメンバーは、パワハラはなく、リーダーAさんが反社会勢力との繋がりがあるといった噂など聞いたこともなく、リーダーAさんに脅威を感じたことなどないとのヒアリング結果であった

リーダーAさんの怒りは計り知れませんし、内部告発がKさんによるものならば、本当に申し訳ない思いでいっぱいです。

最後にKさんとの面談内容ですが、Kさんは次のように話していたそうです。

  • 私はパワハラだと感じる仕打ちを受けたが、センターの社員と派遣会社にもみ消されたので無かったことになっている
  • リーダーAさんが、反社会勢力と繋がりがあるかは知らないが、日々かなり脅威を感じていて、またパワハラを受けるのではないかと心配している
  • 今回の面談は内部告発によるものだということだが、自分と同じくリーダーAさんから被害を受けている人がいることがわかって、自分の被害も認めてもらえるのではないかと期待している
  • 私と同じく被害がもみ消されるようなことにはなって欲しくないし、大企業でもあり、社会的責任もあるB社であれば、きちんとして対応をして欲しい

ここぞとばかりに言いたい放題のKさんに、正直かなり腹が立ちました。

しかし、そんな間も無く、次の派遣先担当者の発言に言葉を失ってしまいました。

  • リーダーAさんは、今回の件で嫌気が指したのか、ご自身の希望で即日退職する事になった
  • Kさんの思惑通りになったわけだが、我が社としてはKさんとの契約を今の契約期間で終了にしたい
  • 合わせてKさんの退職とともに御社との今後の取引を終わりにしたい
  • Kさんの人間性の問題で、御社が悪いわけではないのはわかっているが、コンプライアンス窓口に内部告発を行った経緯で、本社にも告発者であることが予想されるKさんの所属する派遣会社が御社であることが知れ渡ってしまい、取引が続けられない
  • 取引中止の理由は、今回の内部告発が理由というよりは、その前に行われたの虚偽の内容によるリーダーAさんへのパワパラ被害の訴えで、そういった派遣スタッフを派遣した派遣会社であるということだと理解して欲しい

派遣先担当者からの話に、まずリーダーAさんに対して申し訳ないという気持ちになりました。

Aさんからすれば、いわれのない告発で職を失うのは不本意だったと思います。

また、当社がB社との取引中止になることは、Kさんをアサインした責任がありますから当然のことです。

問題はKさんを現在の契約で終了にする事です。

派遣先からの要望はごもっともなのですが、前回の虚偽と疑われるパワハラ被害の訴えについては厳重注意としているものの、今回の内部告発についてKさんを注意する理由もフックもなく、現在の契約で終了と通告した時に「不当な雇い止めだ」と申し立ててくることが想定されます。

今後の対応を練らねば、と頭を抱えつつB社を後にしました。

派遣社員Kさんからの面談依頼の連絡

翌日の朝、Kさんから会って話がしたいとのメールがありました。

この局面でどんな話だろうかと訝しく思いましたが、断る理由もありませんのでB社に向かい、面談をする事になりました。

会議室に入ると、Bさんはニヤニヤしながら、次のように話し始めました。

  • 先日、リーダーAさんに対する内部告発があったようで、B社の本社の人と面談した
  • リーダーAさんからパワハラをされたり、そういった光景を目撃したことはないかと聞かれた
  • 何を答えたかの詳細は話さないが、B社の本社の方は、あなた(私のこと)と違い、真摯に話を聞いてくれたので、自分が考えていることを正直に伝えた
  • その後、リーダーAさんが突然退職し、結果から見ると、やはり私だけでなくパワハラの被害があり、責任を取らされたようだ

一方的に話すKさんに、私は「そうですか」と答えるだけで、特にコメントはしませんでした。

すると、Kさんは少し苛立ったように次のように言いました。

  • パワハラの犯人であったAさんも辞めさせられ、正義はなされたと思っているので、B社をやめようと思う
  • ついては今日限りで辞めたい

「二の句が継げない」というのはこういうことを言うのだなぁと妙に納得しつつ、この機を逃すと、また何をしでかすかわからないと感じ、派遣先の許可は後付けでもかまわないと自己判断し、なにも言わずに即日での退職を受理しました。

Kさんは会議室からの去り際に、「御社はB社との取引がなくなって、出入り禁止になるらしいじゃないですか?俺の話をちゃんと聞かないから、こんな事になるんだよ!!」と捨て台詞を吐きました。

殴りかかろうかと思うくらい腹が立ちましたが、何も言い返さない事にしました。

何を言い返したところで、何も産みませんし、相手をするだけ時間の無駄です。

今回は納得いかないことばかりでしたが、いい勉強になりました。

Kさんのような悪意の塊のような人間というのは確かに存在していて、自分が気に入らないと思う相手には捨て身になってでも足を引っ張ってやろうと異常な執念を燃やすのだということです。

リーダーAさんも、そうしたただならぬ気配に身の危険を感じたのかもしれません。

ただ、そんなKさんは果たして幸せなのだろうかと考えてしまいます。まぁ私の心配するようなことでもないのですが。

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