【派遣会社で働く営業担当のための基礎知識】派遣社員が入館証を紛失した!!その対応策は?
就業中の派遣社員からの遅刻連絡
ある日の朝、派遣社員のLさんから電話がありました。
「派遣先の入館証を忘れたみたいで、自宅に取りに帰るので遅刻します。派遣先にも連絡してあります」
まじめに勤怠連絡をして頂ける、ありがたい派遣社員の方です。
お気をつけて、と言いつつ、日々の仕事に手をつけはじめました。
入館証紛失の連絡
その2時間後に再びLさんより電話がありました。
かなり慌てた様子で次のように話してくれます。
- 自宅に入館証を取りに戻ったが、1時間近く探しても見つからない。どうやらなくしてしまったようだ
- この電話の前に派遣先の担当者に電話をして、入館証を紛失したことを報告した
- 派遣先担当者からは、予備の入館証を貸与するので、再度出勤して業務について欲しいとの指示だったので、これから出勤する
Lさんは今の派遣先での勤務が長く、先方でのセキュリティの社内研修なども受けているからか、入館証をなくしたということの重大性を理解しており、だいぶ慌てた様子でした。
「私、クビになっちゃいますか?」と心配そうな声で話すので、「そんなことはないですよ」と安心させつつ、出勤前に次のことをしてほしいとお願いしました。
- 自宅でも職場でもよいが、最寄りの交番か警察署で遺失届を出して欲しい
- 遺失届受理番号という紙をもらえるので、その紙の記載内容を教えてほしい
- 警察署名
- 番号
- 届出日
- 紛失前に、確実に入館証を手にしていた時から現在まで、何日・何時に・どこで・だれと・何をしていたかを時系列に箇条書きで思い出せる限りで良いのでメールしてほしい
お願いをした後に、今後の流れについてお話をしました。
- この後、私から派遣先担当者に連絡して、入館証紛失のお詫びをする
- 入館証紛失は現場担当者だけで解決できず、かならず総務部にエスカレーションされる
- 総務部からは経緯報告書の提出を求められ、この時に遺失届の有無が確認されるため、先程お願いした
- 見つかるまで探すというスタンスであるため、そこはご協力を頂きたい
Lさんは話の内容を理解してくれ、電話を切りました。
派遣先は入館証の紛失をどう捉えるのか?
Lさんにお話をした内容は、あくまでLさんの派遣先で入館証をなくした場合のフローですが、最近の大手企業では、ほとんどの場合、入館証に次のような重要な機能が備わっています。
- 入退館にあわせて、入退室の機能、ICチップに出入りできる場所の権限が設定されているケースが多い
- PCの起動、カードをかざしたり、リーダーに入れることでPCを起動する、故に入館証を忘れるとPCが動かせず仕事にならない
そのため、入館証を紛失し、それが悪意の第三者に渡った時に、企業情報や個人情報など機密性の高い情報が漏洩するリスクがあるということになるわけです。
ですので大手企業の大半は、派遣社員に限らず、入館証の紛失を単なる「貸与物の紛失」ではなく、「セキュリティーインシデント」と捉えます。
入館証の紛失を派遣先は非常に重く受け止めているのに、派遣社員は軽く受け止めているケースも多く、そのギャップが「あの派遣社員は認識が甘い」といった指摘になり、新たなトラブルの種になってしまうケースもあるのです。
派遣先現場担当者への対応
Lさんに色々とお願いをし、段取りを整えた上で、Lさんの勤務する派遣先担当者に連絡をしました。
まずはLさんが入館証を紛失してしまったことをお詫びし、遺失届や経緯報告書の準備、なによりなんとしても入館証を探し出し、お返しすることを約束しました。
現場担当者からは次のような話がありました。
- わざとなくしたわけでもないので、あまりLさんを責めないであげてほしい
- 自分から総務部には連絡済みで、そちらに連絡が行くと思う
- 入館証が見つかるまでは予備の入館証で対応してもらう
- 紛失した入館証の権限は切ってあるので、悪意の第三者の手に渡ってもとりあえずは問題は起こらない
- ただし、総務部からはセキュリティインシデントとして指導が入るので、同じことのないようにLさんに注意してほしい
- 入館証は必ず回収して返却してほしい
現場担当者は入館証の権限を切ってくれたとのことで、私はだいぶ安心しました。
というのも、 Lさんが務める派遣先では、一度入館証の権限を切るとその入館証は使えず、新たな入館証の申請をしなければいけないのです。
現場担当者に結構な手間がかかるようで、セキュリティリスクがあることを知りながら、「どうせすぐ見つかるだろうから、数日様子をみよう」と手間を惜しむ担当者もいるのです。
その手間を惜しんだことで何か問題が発生した場合、その担当者も処分はあるんでしょうが、そもそも入館証を紛失したスタッフさんや所属する派遣会社にも責任が及びます。
そういった意味で、Lさんの現場担当者は至ってまともで助かりました。
総務部への対応
その後に先方の総務部より連絡がありました。要望は次の通りです。
- 入館証をなくすに至った経緯報告書を出してほしい
- 遺失届を出してほしい、出している場合は証明のため、番号を教えてほしい
- 何としても回収して返却してほしい
経緯報告書はLさんとやりとりの上で本日中に提出することと、遺失届の番号を伝え、できるだけ早く入館証を返却することを約束しました。
Lさんから再度の連絡
現場担当者や総務部とのやりとりを終えて一休みしていると、Lさんから電話が入りました。
「自宅近くの交番から電話があって、入館証が見つかりました!駅に届けられたみたいで、定期を出す時に、バックから入館証が落ちたみたいです」
良かった・・・
このまま見つからないと、見つかるまで何かしらの捜索をしていると報告をし続けなければいけないところでした。
入館賞が見つかったことを現場担当者、総務部に報告し、とりあえず一件落着となりました。
ただ、経緯報告書は作成しなければならず、「みつかったからいいじゃん」は通用しません。
大手企業と取引すると、こういった必要もない事務処理に付き合わされるのは閉口します・・・
まぁでも、見つかって良かったです。
私のホンネ
いつも不思議に、そして不満に思うのですが、派遣社員という外部人材に、なぜ紛失=セキュリティインシデントとなるようなリスクの高い入館証を持ち歩かせるんでしょうか?
入退館や入退室する場所の前に小型ロッカーを置いて、毎日出退勤時に持ち出し・返却すればいいように思いますし、指紋認証や静脈認証など手法も色々あるはずです。
しかも紛失した場合は自己責任・・・
入館証に重大なリスク要因を設定し、リスクを押し付けておいて、なくしたら自己責任・・・
結局は責任を枝葉に分散しているだけなんですよね。
これだけセキュリティの技術が多様にあるのですから、そろそろカードなんていう危なっかしいものに頼るのもやめてはどうかなと感じます。